2011年7月7日木曜日

房州石・古墳 (T-2) 補遺:地質図を見てみませんか? (2)

 ネットで地質図をご覧になる方の為に、この附近の地質年代について、地質図に用いられている地質記号とその年代について簡単に触れておきます。地質図幅を購入すると、その図幅の何処かに(通常は左側に)地質年代や層序・層の名称・地質図上の記号と用いている色・構成している地層の主要成分などが書かれています。ネットの地質図でもシームレスを使うと表示されるので、此方でも地層名称は表示されると思うのですが、普段使わないのでやり方が判りません。
 磯根崎から鋸山間で、海岸或いは海岸に近い場所に出てくる記号は大体下記となります。上の行ほど新しい地層を意味しています。
第四紀:中期更新世:下総層群:地蔵堂層:Jz ;礫・砂及び泥
第四紀:中期更新世:上総層群:笠森層:佐貫泥岩部層:Ksk;泥岩
第四紀:中期更新世:上総層群:笠森層:長浜砂礫部層:Ksn;砂及び礫
第四紀:中期更新世:上総層群:国本層:Kuc;砂質泥岩及び泥質砂岩(凝灰岩を挟む)
第四紀:前期更新世:上総層群:梅ヶ瀬層:Umc;砂質泥岩及び泥質砂岩(凝灰岩を挟む)
第四紀:前期更新世:上総層群:黄和田層:Kd;泥岩・砂質泥岩及び泥質砂岩(凝灰岩を挟む)
新第三紀:鮮新世:上総層群:十宮層:To;砂質泥岩・泥質砂岩及び凝灰岩
新第三紀:鮮新世:上総層群:黒滝層:Kt;砂岩及び礫岩
新第三紀:鮮新世:安房層群:安野層主部:An;泥勝ち砂岩泥岩互層・泥岩及び砂質泥岩(凝灰岩を挟む)
新第三紀:後期中新世:安房層群:清澄層:Kym;泥勝ち砂岩泥岩互層・泥岩及び砂質泥岩(凝灰岩を挟む)
新第三紀:後期中新世:安房層群:天津層主部:Am;泥岩及び砂質泥岩(凝灰岩及び乱堆積層を挟む)
新第三紀:中期中新世:安房層群:千畑礫岩部層:Ams;砂質泥岩・砂岩及び礫岩
此処までが富津図幅地域です。地質調査は1990年から1993年の間に行われ2005年に発行されています。
此処から下は那古:なご地質図幅地域です。地質調査は1973年から1977年の間に行われ、1990年に発行されています。
実はここで厄介な事が起こります。地質図の連続性が失われます。
二つの地域の地質図の刊行には15年の差が有りますので、当然の様に地質学の進歩・変化が有ります。或いはアクセスの良否が、地質図の詳細さに差を生じる原因にもなります。残念な事に、産総研では前任者の研究成果を無視出来ないからなのでしょうか? 新しい隣接地域の図幅が完成した時に隣接する旧図幅を新しい知見で修正する事はしないようです。新しい露頭がひとつ現れると知見が全く変わってしまう事が在る世界なのですが、余談は中止!
新第三紀:中新世:三浦層群:稲子沢層:In;凝灰質砂岩泥岩互層
⇒最新の知見では、富津図幅地域の安房層群天津層に相当するのでしょうか?
新第三紀:中新世:三浦層群:稲子沢層:Sh;礫岩(千畑礫岩)
⇒同様に、安房層群千畑礫岩部層に相当するのでしょう。

地質図の中に“Am80”,“Ok”等と言う細い赤い線が入っていますが、これは凝灰岩鍵層と言い、広域に出現するので、地層の堆積年代を調査するのに非常に便利な層です。但し、その鍵層の性質を良く読み取るのは大変です。富津図幅の解説書の9-10頁にはその地層と鍵層の総括図と放射年代が纏められています。また、千葉県立中央博物館にはこの鍵層の文献・資料が整っています。

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