2020年8月1日土曜日

岩石と地層の表情:090;下田市内:敷根の刷毛目の石丁場

初めてこの模様の石塀に出会ったのは、足利市の「足利学校」直ぐ傍の「旧今井医院」の石塀でした。最近やっと判った事ですがその地に「今井内科診療所」が設立されたのは昭和二十三(1948)年の事でした。恐らくその時に石塀も建てられたものと思われます。伊豆伊からの凝灰岩の最後の栄光の時代だったのでは無いかと思われます。足利で石塀を見た時期は記憶に在りませんが、改めてデジカメで撮影したのが2007年、石切場で出会ったのがその6年後になります。
石切場に入って直ぐにそそり立つ石柱の表面の模様です。いや~!本当にこんな堆積模様を形成した山が有ったのだな~!と言う感動を覚えたものです。
大きさを判って頂けないので、私のハンマーを置きました。
この場所をご案内頂いた方と、私の先生を塗り潰してしまいましたがスケール代わりに使わせて頂きました。広いですね!
採掘場の何処を見ても同じ模様が走っています。不思議な感覚でした。
最初の画像の石の柱はこんなに背が高いのです。



細く長く続く部分を少しだけ切り取ってみました。ごく細粒の白色凝灰岩が美しい模様を造り出しています。房総半島では白い凝灰質も比較的粒状のものが多いので
似たような模様は描かれますが、ここまで細かなものは殆ど見掛ける事がありません。
この石切場でも石切の目が綺麗に並んでいます。この部分はツルハシはみなさん使われないのですね。

2020年7月30日木曜日

岩石と地層の表情:089;下田市内:幼稚園丁場

市内の中心部に石丁場跡が在るのを忘れていました。一応、直接的な露頭は消滅しているのですが、まだまだ見所の有る石切場で有るのは間違いないので伊豆急下田駅からも近い「幼稚園丁場」にも触れておきましょう。石切りを行っていた頃は恐らく「海善寺の上の丁場」等と呼んでいたと思うのですが、実は小丘の上の石切場跡の平場が丁度良い広さだったので(多分)現在は下田市立幼稚園」が立地しているので、そのように予備均しています。交通の便は至極良い処です。
ここで産出する石材は、実は石碑や、建築物の基礎の部分に使われる事が多いのですが、淡褐色ですが色白なの、基壇の隅や階段の初段等にも使われています。千葉県では段丘崖の参道用の階段石が多く、埼玉県では神社の基壇等に良く観察されるものと同じ石材です。
地図は下田市の比較的中心部、伊豆急下田駅のやや南側を示しています。緑色は主要道路。赤で囲んだのが「幼稚園丁場跡」。黄色は広い寺領をお持ちだった「海善寺」さんの本堂と庫裏。水色は隣接する「下田八幡神社」です。左手の緑の線の道路が切れているのは、幼稚園丁番の下をトンネルで抜けているからです。海に近い場所ですが意外と広い平野が無い街なのです。
古文書から抜粋させて頂いた絵図です。文政十一(1828)年頃の絵図で、石切りが盛んになるにつれて、海善寺さんと下田八幡神社さんの夫々の所領の境が微妙な問題をはらみと言った・・・の絵図です。
丘の上にある幼稚園の一番良い場所は、実は幼稚園が立地した関係で、津波の際に避難する通路を確保する為に、地震で石切跡の崖が崩壊して避難路が使えなくなるのを防ぐ為に
しっかりモルタルを吹き付けて固めています。子供たちを守る為なので仕方ありません。端っこの方が少し吹付を免れ提案すね。この手前側に幼稚園が在ります。
幼稚園が立地している広場の片隅にはこの様に石切の跡が残っています。崖と幼稚園の敷地の間には狭い空間があるので、近付く事は出来るのですが、子供たちの好奇心を掻き立てると大変なので、園児が居る時間帯にこの周囲に近付くのは辞めて下さい。
下田八幡神社から此処に昇る道路脇にも露頭が在ります。
堆積時の海流による斜層理(ラミナ)が観察されます。この緩い斜めの縞模様がこの石材の特長の一つで、石材を側面から観察する事が出来ると確認し易いのです。
岩石そのものは、石灰質が豊富で良く締まっています。石灰質の微小な化石(石灰藻やフジツボその他の生物遺骸)層とやや凝灰質の層が非常に薄い丁度「互層」をなしているイメージです。
崖のひび割れで弱い部分が風化しているので、その構造が良く判ります。
接写レンズで拡大すると白い小さな石灰質の破片が沢山見えます。薄く調整した塩酸を一滴垂らすと猛烈な勢いで炭酸ガスの泡が出ます。
海流に拠る斜層理の部分を拡大しています。前にご案内した白浜付近ではこの斜層理が観察出来無いものがありますが、伊豆産出のこの種の石材には、ほぼ観察されます。下田周辺が多いですね。
下田八幡神社参道に建立された灯篭の棹の部分を拡大しました。角度が非常に緩いものばかりですが美しいですね。
これも下田八幡宮境内の灯篭の棹の一つです。表面を「岩粉」で塗り固めているのではないかと思われますが、風化して何処かが剥離しない限り見分けがつかないのが難点です。時々、神社の亀腹に同じような仕上がりのものを見掛けます。

2020年7月28日火曜日

岩石と地層の表情:088;下田市内:白浜神社周りの石切場

美しい海浜で有名な「白浜海岸」の北端にある白浜神社周辺の石切遺構観察場所です。駐車出来る場所が少ないのが難点ですが、海水浴シーズンで無ければ神社の南側の有料駐車場に止める事が出来るでしょう。比較的小型の石切場ですが、ここの石材と思しきものが千葉市内にも運ばれて神社の基壇等に使われています。石灰質の生物遺骸(化石)を多く含む石灰質の凝灰岩(白浜石灰岩)です。駐車場の一角にある漁協の石蔵や、神社の石垣の大部分は白浜石灰岩ですし、海岸に出ると砂浜の下に石切遺構があり、鳥居の建つ岩礁の周囲も石切跡が在ります。
神社の石垣の一部。白浜石灰岩と言えばもう少し石灰質が多く、美しいラミナが目立つものが大部分だが、この付近は静かな海に堆積した水平の地層でやや石灰分に欠けるのが残念だが、含まれる岩塊などが見事に一致する石材が千葉市内の歴史ある神社の基壇に使われている。
海側の露頭はこの範囲に集中する。砂浜が荒波で洗われると岩石露頭が現れ、石切りの跡も確認出来る。鳥居の有る岩礁にも石切の跡が見える。左手の小丘(神社境内に続く)の周囲にも石切遺構が観察される。
岩礁に寄ってみると階段でもない段差が沢山見えるがこれは石切の跡。潮位が下がれば岩礁に渡れるが、のんびりしていると潮位が上がって来るので帰れなくなるから要注意。
小丘の突端付近。海浜からの細い通路は崩落し始めていたのでここまで行けるかどうか判らない。平らな面は石切場跡
波打ち際の石切跡。潮位や砂浜の状態では見えない事も有る。周囲にツルハシで 3 ~4 cm 程の細い溝を掘り底面に楔状の「矢」を打ち込んで剥がし取る方法です。
小さな石灰藻の化石に混じってウニの断面が見えます。
山側ではラミナは観察されませんが、海側の露頭では所々にラミナが観察されています
プリンスホテル正面辺りの民家裏の露頭では水平な堆積層が観察されます。この付近では地層が細かに分断されているようだ。
道路脇の小さな広場とその奥の石切跡。勿論、この小さな広場も石切の跡です。

2020年7月26日日曜日

岩石と地層の表情:087;下田市内の「中」石切場

下田市内には無数と言いたくなるほど沢山の凝灰岩の石切場が存在していたようです。但し、石切場は結構危険が伴うので所在は伏せます。この石切場は市内にある石切場の中でもアクセスが良いし、直ぐ傍に車を止められるのが良いのですが、入り口に少々難が有って「先鋒」を承った小生は何度か危険を感じながら入口の難関を通過しようとし怖くて遂に諦めて戻ろうとしたら、なんとそこにいい塩梅の通路が見付かったという場所です。
伊豆の石切場は房総と異なり地下空間が多く常に危険が一杯です。山岳経験のある方と同行し、照明器具もしっかりしたものが必須です。
この石切場では真っ白な細粒の凝灰岩が取れます。画像の横幅は 12 cm です。
石切場は「行けば判るよ」と言われて車を止める処迄は行ったのですが、その後の入り口が判らず行ったり来たりしていたのですが、これが入り口です。房総半島の石切場と伊豆半島の石切場はかなり状態が異なります。勿論、地層に沿って採掘する以上、房総半島でも地下での掘削は存在しますが、地下の石切場の多さに驚きました。それに石切場に入る際の支度が我々と全く違うのです!!
藪に入ると直ぐにこんな幅 1 m 程の切割りが現れました。正面は上から崩落して来た土砂の斜面で、足はめり込むしずるずると足元が崩れるので中々斜面を登れないのです。
斜面を登ると直ぐに危険な「蟻の戸の渡し」的な幅の狭い通路が有るのですが、とても怖くてこれを通過する事が出来ないので、諦め掛けたその時に、やっと安全な通路を見付けて石切場の本当の入り口に辿り着きました。
地下の石切場を回って居る内に高い位置から地上に出る事が出来ました(そのまま迂回して車を止めた場所には戻れませんでしたが)。どうやら地上に露頭が在りそこから掘り始めたらしく、普通は採掘しない地表近く割れ目の多い部分にまで採掘のツルハシ跡が残っています。
ここは山自体にクラックが多いらしく、坑内は様々に掘る方向を変えてクラックを避けている様でした。それがこの様にやや広い壁面でも良く見て取れます画面中央付近はクラックと云うより断層の様な大きなものでした。
地上への出口(本当は地上から段々と掘り下って行った)付近です。
坑内にはこの様に崩落した後もそのまま残っています。背後の壁面が崩落個所です
全く、まっすぐな壁と言うものが此処には殆ど存在しません
緑で縁取った場所は通常の石切と異なり、壁から奥に掘り進む時に行う採掘法で「垣根掘り」と言います。身体を横に寝そべった態勢でツルハシを水平に振るう必要があるので苦労する掘り方ですがどうしても必要な作業です。
天井のツルハシの目を見て頂ければそれが良く判ると思います