2019年3月16日土曜日

高輪神社の二対の狛犬と高欄の龍

先日港区高輪の「高輪神社」境内で130枚もの撮影をしてきた中に、二対の狛犬と高欄の龍等の浮彫が在るのでご紹介する。この神社では凝灰岩は用途不詳の一片だけ観察。
神社境内のやや風化が進んだ安山岩の一対はやや太めのもので、安永六年巳丑(1709)二月の造立で、石工名は「佐吉」と「石屋佐吉」と彫られている。京橋の大工講中の奉納。



もう一対の狛犬はかなり凝った彫り物で、大正十五年九月、石工はおや、画像の下が切れている「梅田 三〇」、「仝 仙〇」と「仝 良」さてもう一度行かねば!





高欄の龍退治の浮彫は「熊山彫工」、虎退治の浮彫には「紅葉川住 石田屋和ト刻」とある。水滸伝にイメージを得たのかどちらも中国的な容姿である。





紅葉川は今の豊島区付近か、新宿区の紅葉山西迎寺付近は無いかと思われます。「府内」と云う枠を考慮すると新宿の石工の可能性が高いと思われます。造立は文政十一(1828)年だが、移転に拠る物か安政四年に一度修復されている。この「御府内石工拾三組総若者・・」(安政四年:1857) として刻まれた石工の名を拾いに行った次第。この石塀は関東大震災で破損し翌年に修復されている。





以上

GVP 火山活動情報の概要:3月6日 ⇒ 12日;21火山

New Activity / Unrest
Barren Island  | Andaman Islands (India)  | 260010 | Elevation 354 m
3月7日噴煙が高度 1.8 km 及び 1.2 km に達しました。

Bezymianny  | Central Kamchatka  | 300250 | 2882 m
3月1-12日の間熱異常が観測されており、強い火山ガスと水蒸気の噴気が連続して火口から上昇しています。高温岩塊の岩屑雪崩が溶岩ドームの頂上部から発生しているのが夜間に観察されます。航空カラーコードは「オレンジ」

Karymsky  | Eastern Kamchatka   | 300130 |  1513 m
3月1日と4-5日に噴煙が 3.5 km まで上昇した事が観測され、熱異常も観測されました。航空カラーコードは「オレンジ」

Mayon  | Luzon (Philippines)  | 273030 | Elevation 2462 m
3月6-11日の間水蒸気の噴気の放出と夜間の火口部に火映が観測されました。連日、少なくとも6回の火山性地震と2回の岩屑雪崩が観測されています。
7日0811時と8日0627時にに水蒸気爆発が発生し灰色の噴煙が火口上空の夫々 500, 300 m 上空に達しました。警戒レベルは“0-5”段階の“2”。

Piton de la Fournaise  | Reunion Island  | 233020 |  2632 m
6日の0700-0800時に行われた飛行で、主火口の 150 m 山頂側の北西側山腹で新しい割れ目火口が観察され、前日の0900-1900時の間に開口したと想定されました。観光客の話では小さな火砕丘が形成され、溶岩流は北に向かっていました。7日早朝に少なくとも6か所の火口が観察されましたが、悪天候で観測所の火山学者は確認出来ませんでした。(一部省略)5日と7日の火口から採取した試料は異なる組成を持つ事が報告されましたが詳細は明かされていません。溶岩流は標高差 1,000 m を流れ下っています。溶岩流の流出速度は一時は 50 m^3 に達していましたが現在は毎秒 25 m^3 です。それでもこの値は2017-2018年の噴火時よりは10倍の量に相当します。9-10日の激しい噴火活動の後、10日の0628時に活動は沈静化しました。(10日1930時の活動報告以降は更新が無い)

San Cristobal  | Nicaragua  | 344020 | Elevation 1745 m
小規模の爆発が4日に観測され、噴煙が 400 m 上昇しました。

Tengger Caldera  | Eastern Java (Indonesia)  | 263310 | Elevation 2329 m
カルデラ内のブロモ火砕丘で10日と11日早朝に噴火が発生し、600 m 上昇しました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”。

Ongoing Activity
Agung  | Bali (Indonesia)  | 264020 | Elevation 2997 m
4日0452時に短い噴火が発生し一部に降灰が観測されましたが濃霧の為噴煙は観測出来ませんでした。9日0047時の噴火は 3m50s継続。警戒レベルは“1-4”段階の“3”

桜島:Aira  | Kyushu (Japan)  | 282080 | 1117 m
4-11日の間、南岳火口では時折火映が観測され、噴煙は1.9 km 上昇しました。警戒レベルは“5”段階の“3”

Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 |  1229 m
5-9と11-12日に噴煙が 1.8-2.4 km 上昇しました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”

Ebeko  | Paramushir Island   | 290380 |  1103 m
1-2日と5日に噴煙が標高 2.5 km まで上昇し、一部で降灰が見られました。航空カラーコードは「オレンジ」

Karangetang  | Siau Island (Indonesia)  | 267020 | Elevation 1797 m
“Kawah Dua”火口から溶岩流がゆっくりと流れ出し、岩屑雪崩を生じています。7日には噴煙が標高 2.7 km に達し、警戒レベルは“1-4”段階の“3”

Kerinci  | Indonesia  | 261170 | Elevation 3800 m
7日1850時に山頂火口から噴煙が火口縁の上空 150 m に達した。また8日1209時には褐色の噴煙が 700 m 上昇。7-11日の間は火山性微動が観測されました。

Manam  | Papua New Guinea  | 251020 | Elevation 1807 m
5-6日に噴煙が高度 3 km に達し、強い熱異常が衛星画像で観測されました。

Merapi  | Central Java  | 263250 |  2910 m
1-12日の間、様々な濃度の噴煙が山頂から 1 km 程度上昇していました。5日には溶岩ドームの容積は 470,000 m^3 で、前の週と変化は認められません。火砕流は2,3, と7日に 50-1,900 m 流れ下りました。

Nevados de Chillan  | Chile  | 357070 | Elevation 3180 m
“Nicanor”火口での噴火が8日0845時に観測され、火口周辺に堆積していた土砂を噴出し、噴煙を火口縁の上空 2.7 km まで上昇させました。警戒レベルは「オレンジ」

Poas  | Costa Rica  | 345040 | Elevation 2708 m
目視観測はしばしば天候に阻まれていましたが、噴煙が火口縁の上空 500 m まで上昇していました。

Sabancaya  | Peru  | 354006 | Elevation 5960 m
連日平均15回の爆発が観測され、噴煙は火口縁の上空 2.8 km に達しています。亜硫酸ガスの放出量は日量で 3,360 トンに達します。

Sheveluch  | Central Kamchatka |  300270 |  3283 m
連日強い熱異常が観測されており、強い噴気が高度 3.5-4 km に達しています。9日の爆発では噴煙は 10-11.2 km に達し、クベルトは航空カラーコードを「レッド」に引き上げましたが10日に「オレンジ」に引き下げました。噴煙は連日 8 km の高度に達し北に 375 km まで広がっています。



諏訪之瀬島  | Ryukyu Islands (Japan)  | 282030 | 796 m
連日、御岳火口での火映が観測されています。小噴火が時折観測され、噴煙が火口縁の上空 600 m に達しています。警戒レベルは“5”段階の“2”

Turrialba  | Costa Rica  | 345070 |  3340 m
9-12日の間、少量の火山灰を含む噴煙が火口縁の上空 1 km に達しています。
以上

2019年3月10日日曜日

幸手市下宇和田:中川沿いの観音院と香取神社 (2/2)

幸手郷土資料館に一枚の村絵図が有ったのでご紹介する。昨日ご紹介した「観音院」と今日ご紹介する「香取宮」が川沿いに描かれている。この「惣新田」の正確な名の由来は把握していないが、河川流路の改変で得られた「新田」ではなかろうか? 更に、権現堂河岸に連なり舟運で栄えた地域らしく驚く程に社寺の数が多い。
この地域は、舟運の繁栄と共に在ったので、房総南部の今で云う南房総市や館山との結び付も強かった様で、過日ご紹介した「南房総(嶺岡産)蛇紋岩に刻まれた石造物(2/2)」でご紹介した「安房の三名工」の技術を継承し彫刻師が幸手に住んだ事が判っている。山下家諏訪神社の装飾彫刻を行った「後藤義光」は南房総市佐久間の出身である。
江戸時代初期の再興と言われる「観音堂」の礎石は「玉石」であったが、香取神社の基礎部分は既にコンクリートで固められていたので旧情は不詳。

村絵図:幸手市郷土資料館蔵。昨日ご紹介した「観音院」と今日ご紹介する「香取宮」が川沿いに描かれている。

権現堂川の記憶:幸手市郷土資料館蔵。大正時代の川舟(貨物船)が描かれている。

幸手市史民族編:第五章 交通と交易。権現堂河岸の石塚回漕店扱いの船貨を詳細に記録した大正八(1919)年の水揚帳の記載貨物を整理して記載したもの。「石」の記載と共に「石材」,「房州砂」,「砂」,「伊ヨ石」,白土(館山や茂原地域の白土:ガラス質火山灰層を「磨き砂」用として採掘したものと思われる:引用者注),石粉などの記載有。
  
香取神社の狛犬は、栃木県北部の芦野石(白河火砕流堆積物の弱溶結部)と思われる。年代は不詳だが草加の青木石材店殿の扱いである。



一対の灯篭は伊豆の上賀茂付近で採掘されていた細工物に適した緑色凝灰岩と思われる。造立は明治三十三年十一月。棹の背面に「採石」の刻銘が読めるが、確か幸手にはこの文字を含む高名な書家が居られたのでは無かったか?正しい姓名(号)を思い出せない。表の「御神燈」の文字が光る。石工は幸手町の齋藤冶部兵ヱとある。

明治三十三年から119年を経過しているのに火袋の部分も健在である。この石材に特徴的堆積模様が粒度の違いで現われている。

幸手市下宇和田:中川沿いの観音院と香取神社 (1/2)

千葉県の最北端、野田市の関宿から東武動物公園行のバスで数分のバス停を降り、中川沿いに南に下ると、昨年10月に元看護学校の校舎を転用して「新装開館」した「幸手市郷土資料館」のもう少し南に、観音院と香取神社が並んでいる。このままでは何れ貴重な石造文化財が朽ちてしまうだろうことが残念だが、一部に伊豆の凝灰岩製の五輪塔(?)や御神灯が現存する。

観音院前の大きな文字庚申塔。

門の右手には青面金剛像が立ち並ぶ

文字庚申塔には「寛政四壬子年(1792)冬十月吉日」等の年号が刻まれている

青面金剛像には「明和四丁亥(1767)十月吉日」等の年号が刻まれている

六地蔵は三面に二体ずつが彫られている

「地蔵尊」の額は前面が地衣類の着生で岩相が全く確認出来ない。「慶応四辰(1868)四月」の銘が有るので材質を確認したいが、わが師は、石切り場でも壁面を叩いたり、表面を削るのを全く許さない方なので、私も教えを守って諦める。

殆どが安山岩を用いた物なので諦めていたら、五輪塔と宝篋印塔の中間の様な石塔が伊豆の軟石で造られていた。

素材は細工物に適した所謂「みどり」と言われる斑状の凝灰質組織を持って、稀に小豆色の火山小礫を含む凝灰岩。この材質は、お隣の「香取神社」では御神灯に使われている。
続く

自画自賛・自己流・自己満足


凝灰岩質石材の観察を記録に残し始めて恐らく8年位の年月が経過して、この年度末に博物館に提出する「市民研究員成果報告書」にはその一部を報告したのだが、観察事例件数が丁度“888”件になった。頁数にして、5,255 頁。一件辺りの頁数は大体6頁。画像はA4に一~二枚程度なので大体一件辺り9画像程度だろうから全体で8,000枚程度だと思う。年度末に、全てのファイル(PDF)をDVDにコピーして大体10名程度の関係者や親しい方々に受け取って頂いている。
化学的な分析等一切やっていないので、資料集の表紙にも書いたが、「化学的な分析機器も無く、またもし黒曜石の産地同定に役立つ程度の成分分析装置があったとしても、相手が貴重な文化財では端っこをぶち欠いて分析用サンプルを採る事は出来ない。更に殆どの凝灰岩は全く不均質な存在なので、分析手法確立されて居らず、産地同定の為の理論的な裏付けも無く、当然データの積み重ねも無い現実で、目視観察をメインに凝灰岩質石材の消費地域内分布や産地同定を試みようとするのは「無駄」の権化のようなものだとは思いつつも、ではそれが確立されるまで放置して何もしないのも馬鹿馬鹿しいと思うのです。
 石材産地の研究者の方々が消費地での使われ方や、現状がどうなっているのかを知りたい様に、私達も江戸時代から明治・大正そして昭和の中頃まで、建築・土木・石塔や仏像等に使われてきた石材は一体何処から来たのか知りたいと考えています。
 老い先短いだろう人生の中で八年間ほど、江戸(東京)を中心とした消費地と、伊豆半島・三浦半島・房総半島他の石材産地と思しき各地を歩き回り凝灰岩質石材を撮影してみました。晴れた太陽の直射で色が飛んでしまったり、雨に濡れて黒く見えるのに乾燥すると別物の様な色を示したり、千変万化する「色」に弄ばれつつも観察の数を重ねると、いくらか、石の顔がすこしずつ見えて来たように思い、取敢えず大まかにグループ分けしてみました。中には、どちらにしようか迷った挙句、エイヤット!取敢えずこっち!なんて乱暴なケースも無いではありませんが、大まかにこんなものだろうと云う分類をして、皆様にも同じものを観て頂けるように、所在をしっかり記載した観察記録画像集を作ってみました。」と云うレベルの作業。
 この一年間に、愛用の木製スケールを3本も紛失したので、かなりボケが斑に入ってきた雰囲気なので、あと何年続けられるか判らないが、なんとなく、一段落した雰囲気。
さて、明日は「確定申告」に取り掛かろう!