2019年11月2日土曜日

伊豆の凝灰岩が墓石に使われ始めた時期;無縁仏の調査から

最近、大量の墓石を積み上げた無縁仏の墓地に接する事が重なり、見える範囲で、凝灰岩質石材に限定しながら造立年代を調べて見た。40数基の調査結果でしかないがその造立年代を年次順に整理したものをグラフ化し、以前凝灰岩質石材(墓石を含まない)のデータが800件に達した時に建立・造立年代を岩種別にグラフ化したものを比較してみた。
但し、安山岩や花崗岩のデータは積極的に収集したものでは無く、凝灰岩が存在した場所に一緒にあったものだけを収録しているので、石材一般の傾向を示すとは言えない。立ち上がりが、一般的石材より墓石の方がかなり早いのに驚いた。

伊豆の凝灰岩質石材としては増加傾向が始まるのは1820年頃から、これに対して房総半島産出のものは年代をその石材に刻む事が少ない石材なので当然数は少ないが、1850年を過ぎてから増加傾向が始まっている。
別に記している通り、安山岩や花崗岩のデータは積極的に収集したものでは無く、凝灰岩が存在した場所に一緒にあったものだけを収録しているので、石材一般とは言えない。

伊豆の凝灰岩を用いた無縁仏の墓石はこれに対して増加傾向が顕著になるのは1780年代と40年以上早い。

無縁仏とした中には、この様に門前に並べられた石仏も含まれている。

六地蔵として写真記録を整理していたものも、見直すと次の頁に示す様に墓石であった。

同じ年の五月と十二月に姉妹が亡くなっている。意外と子供の墓石が多いのにも驚く。
古い時代の無縁仏を保存しておられる寺院は非常に少ないので、この調査がどこまで広げられるか判らないがもう少し調べて見たい。

2019年10月29日火曜日

岩舟石観察会下見:10月27日

観察会に向けての周辺の調査を続けて来たが、それも今日で終わり。今日は、文献に残る神社の鳥居や、岩舟石を用いた石蔵等の補足調査。何れも、観察会では皆さんを御案内できないが、観察会資料にはしっかりご紹介の予定。明日からは久喜市方面を歩く予定!

御姿から考えて「大黒天」と見当を付けたが伊豆の凝灰岩製である。

神社の門前に石碑が三基。右端は地元の岩舟石の細粒部分。真ん中は、伊豆の凝灰岩。左は、この辺の石材にしては色白だなと思って接写してみると・・・・次の画像

花崗岩。この付近で花崗岩の「自然石風」は珍しい。岩舟石には時折、花崗岩の大塊が含まれる事が有るらしいが、これもそんな一つだろうか?

岩舟石を用いた石蔵。現存する岩舟石を用いた石蔵は三棟。消火器庫が一棟。事務所兼資料館が一棟。列車への積み込み施設の一部などだ。

岩舟山を東側から眺めた図

飴の様な色合いのチャート。

今回の博物館観察会に向けた調査範囲。春先に調査した岩舟山中心部はトレース線が消えているが、この付近が当日の実際の観察地です。

無縁仏の中の凝灰岩石材:造立年代の手掛り

墓地の中をウロチョロして古い凝灰岩質石材を探すのは、殆ど得るものが無いと考えて長年避けて来た。たまに「無縁仏」の中に凝灰岩質石材の墓石を探し出しても、密集して安置されているので、細かく石材の岩質を観る事も、刻まれた年号を記録する事も出来ないでいた。最近、幸手市、五霞町、栃木市岩船町、久喜市菖蒲町等を続けて歩いていると、意外と伊豆の凝灰岩質石材が数多く使われており、中には年号を確認出来るものが多い事に気付いたので、都市部や立派な墓地を持つお寺さんは初手から保存例さえ無い事が多いので無理だが、郊外の寺院や墓地の「無縁仏」のみを、最近調査対象に組み入れさせて頂いている。

石仏、石塔。石祠、礎石等多様に利用された粒状組織を持つ伊豆南部の凝灰岩質石材。この石材が実に多くの場所で使われている。風化してザラザラに見えるが彫刻や刻字には適した素材だ。

菖蒲の町外れの旧寺院墓地の無縁仏:これが四面ほぼ同型に積みあがっている

墓石の記載例:年号は干支が刻み込まれているので確定し易い。一人のみから五名まで様々。年号は1669年~1792年と123年間に及ぶものも有る。



年号が下部にあるので、日陰で写し込めない場合は次の画像の様に日陰と日照の有る部分の両方を写す。この例では天保二(1831)年を建立時期とした。

石材を見分けるのに重要な要素の一つ。堆積時のラミナが明瞭に観察出来る。粗粒部がラミナを示す例

これは細粒系だが、微細砂サイズで風化面にはラミナが出易いが、前の画像とはラミナの出方が異なる。

比較的多い、砂質の石材。全体が砂質のものと、粗粒部と混ざっている事が多い。破面では前画像と判別できない事が多いが、風化すると判り易い。

最初の画像と同種の、石材としては一番多い粗粒と細粒が適度に混じりあっているもの。
6枚目の画像とも同種類。この種には小豆色の火山岩の粒が含まれている事が多いので判り易い。

昨日の調査コース。たまにフラッグを立て忘れるが、トレースからも座標を拾えるので支障無い。

ある無縁仏でデータを採取した六例のデータファイルの一部。現存する墓石の 1/10 にもならないが、建立時期が判る墓石のデータは貴重だ。量的には安山岩が大勢を占める。大きな西暦文字表記が建立時期と判断したもの。文字サイズや配置からは、同時併記か追記したものかを考える。これは凝灰岩質石材のみのデータ。