2019年5月18日土曜日

これはこれは!!こんな山の中ででまくら状溶岩ではありませんか!

 常陸太田市から大子町に抜ける比較的新しい道路を快適に走っていると、谷側に妙な岩石露頭らしきものが目を掠めた。慌てて車を止めてもらってその露頭に取り付くと、大部分が「火山角礫岩」と言われるものだが、見事に層をなしており、これが海底を流れた溶岩流の一部である事が見て取れた。黒く、肉眼では全く斑晶が見えない実に硬い溶岩なのです。詳しく見ていくと大小の違いはあるが、周辺に急冷による放射状の冷却節理を持つ岩塊が有り、つい先日、房総半島の江見漁港の石垣で観た様な蜂の巣状のクラックが観察される岩塊も有り、更には立派な枕状溶岩そのものと云える岩塊が観察された。
 この付近の長福山・男体山・白木山から袋田の滝を通り生瀬富士等は“N1_vas_al”の記号でシームレス地質に表記される「デイサイト・流紋岩溶岩・火砕岩」の分布地域。此処に着く前に二ヶ所で角礫凝灰岩の露頭を観察して来たのだが、下調べもせずに近くまで来た序に、道路地図にも掲載されていない、古い地図では通行止めになっていた道路脇で
新鮮な水中溶岩の露頭を観察する事が出来るとは思いもかけない事だった。
 遥かな昔に、まだ、カーナビ等が無い頃の話で、袋田の滝で火山角礫岩の観察をした後、近道をした心算が何時の間にか杉花粉の濃密な雲の中に紛れ込んで酷い目にあいつつも、むりやり車を進めていたら竜神大吊橋に出て危機を脱出した事があったので、今は舗装されているが、多分同じ道路なのだろう。たまたまの春を楽しもうと走ってきた偶然の出会いに感謝である。

山側はコンクリートの吹付で、谷側の本当に小さな露頭。

水冷破砕岩、火山角礫岩がしっかり固まっている。GPS の“GARMIN” の長手方向は 10 cm 。その下も綺麗な形状の枕状溶岩。

外側に急冷による細い放射状の節理がしっかりと観察出来る。

岩塊の外側には蜂の巣状の冷却節理が形成されている。

放射状節理が美しい!

火山角礫岩の中のほど良い大きさの放射状節理を持つ岩塊。

大まかな位置は、竜神川の最上流部。川に掛る道路の付近のフラッグは男体山への登山口付近で、狭い河床に火山角礫岩の露頭が在る。橋の傍とトイレのある駐車場の裏手から河床に下りる事が出来る。この部分の画像は後日。
白木山の文字の上側のフラッグは、溶岩流の露頭。これについても明日以降に画像をご紹介する。一番上の424m峰近くのフラッグがこの露頭位置。

露頭近くの詳細図。車両の交通量は非常に少ないので、端に寄せて駐車すれば他の車の邪魔にはならないと思う。センターラインの無い道路だが快適に舗装されている。
続く

GVP 週間火山活動情報の概要:5月8日 ⇒ 14日;18火山

  New Activity / Unrest
  阿蘇山  | Kyushu (Japan)  | 282110 | 1592 m
9-10日の夜間に火映が観測され、9日に小噴火が有り噴煙が火口縁の上空 900 m まで上昇しました。12日には4回の小噴火が発生し噴煙は最高高度 1.4 km まで上昇し、13日には噴火により噴煙が 200 m上昇しました。亜硫酸ガスの排出量は日量で、10日には 3,600 トン、13日には1,700 トンでした。警戒レベルは“1-5”段階の“2”。

  Sangay  | Ecuador  | 352090 | 5286 m
10日に二回の、火山の南側と西側の山腹直下 3.5-9 km を震源とする爆発に由来すると思われる“M2”の地震が発生し、衛星画像で僅かに熱異常が観測され少量の噴出物が確認されました。
  Sinabung  | Indonesia  | 261080 | 2460 m
11日に噴火が観測されましたが、天候が悪く目視確認は出来ませんでしたが、火口の火映は観測されました。12日の地震観測から想定された噴火では霧の為目視観測は出来ませんでした。警戒レベルは“1-4”段階の“4”
  Ongoing Activity
  Agung  | Bali (Indonesia)  | 264020 |  2997 m
12日に地震観測から噴火が確認され、南西に 8 km 離れた火山観測所まで噴火音が聞こえました。濃い霧の為に噴煙の到達高度は不明。投稿された画像から白熱岩塊が山腹に堆積しています。警戒レベルは“1-4”段階の“3”
  桜島:Aira  | Kyushu (Japan)  | 282080 | 1117 m
南岳火口では7-13日の間火映が観測されました。7日と13日の爆発では噴煙は火口縁の上空、夫々 1.6 km と 2.9 km まで上昇しました。警戒レベルは“1-5”段階の“3”。

  Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 |  1229 m
8-14日の間噴煙が高度 2.1 km まで上昇し、警戒レベルは“1-4”段階の“2”
  Ebeko  | Paramushir Island   | 290380 |  1103 m
4日、5-7日に爆発を観測し、噴煙は高度 3.5 km まで上昇。6日には熱異常を観測。航空カラーコードは「オレンジ」
  Fuego  | Guatemala  | 342090 | 3763 m
9-10日と12⁻14日の間連日毎時13~24回の爆発が観測され、噴煙が火口縁から最高 1.1 km まで上昇しました。白熱岩塊が 200-300 m の高さまで放出され、生じた岩屑雪崩は時折長距離を下り植生領域に達しました。降灰は風下の 12 km SW, 9 km SW, 8 km SW, 8 km ENE,and 8 km WSW に達しました.溶岩流は西側山腹を 500-600 m 流れ下りました。11日には、水蒸気を放出しつつラハールが流れ下り、様々なサイズの岩塊や樹木を流しました。
  Ibu  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 | 1325 m
8日噴煙が高度 2.4 km に達し、9日は噴煙が火口縁の上空 600 m に達しました。爆発を示す地震や岩屑雪崩を示す地震が観測されました。10日には噴煙が高度 1.8 km に達しました。
14日夕刻の噴火では噴煙が 800 m 上昇しました。警戒レベルは″1-4”段階の“2”
   Karymsky  | Eastern Kamchatka | 300130 | 1513 m
6-8日に熱異常が観測されました。また、6-7日には少量の火山灰を含む噴煙が観測されました。航空カラーコードは「オレンジ」
  Kerinci  | Indonesia  | 261170 | 3800 m
10日夕刻に茶褐色の噴煙が 700 m 上昇しました。地震活動は火山性微動と火山ガスの噴出を示すものが中心です。警戒レベルは″1-4”段階の“2”
  Klyuchevskoy  | Central Kamchatka   | 300260 | 4754 m
弱い熱異常が6日と8-9日に観測されています。航空カラーコードは「オレンジ」
  Krakatau  | Indonesia  | 262000 | 813 m
地震観測により10日は二回、翌日は一回、12日は二回、14日は1回の噴火を観測しましたが目視は出来ませんでした。0日午後の噴火では噴煙が山頂より 150 m 高く上昇しました。警戒レベルは″1-4”段階の“2”
  Manam  | Papua New Guinea  | 251020 | 1807 m
10日に噴煙が高度 5.5 km に達し、亜硫酸ガスの噴出と熱異常が観測されました。翌日に噴煙が 2.4 km まで上昇しました。
  Nevados de Chillan  | Chile  | 357070 | 3180 m
12日夜、“Nicanor Crater”で爆発が有り、長時間継続する地震も観測されました。爆発により溶岩ドームの一部が破壊され白熱岩塊が北側山腹に飛散しました。警戒レベルは「オレンジ」
  Rincon de la Vieja  | Costa Rica  | 345020 | 1916 m
11日早朝に噴火が発生し白い噴煙が火口縁の上空 600 m まで上昇しました。
  Sheveluch  | Central Kamchatka |  300270 |  3283 m
3-10日の間熱異常が観測されました。火山ガスと水蒸気のに火山灰を含む噴煙が 50 km 南東と南西に広がりました。航空カラーコードは「オレンジ」

  諏訪之瀬島| Ryukyu Islands (Japan)  | 282030 | 796 m
3-10日の間御岳火口で火映が観測されました。ごく小規模の噴火が5日に発生し、噴煙は火口縁の上空 50 m まで上昇。警戒レベルは″5”段階の“2”

以上

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Nevado dl Ruiz_19056_081605

Yasur volcano_190517_000008

2019年5月16日木曜日

昔話:第二海堡で使われた凝灰岩質石材

 永い間、一般人の上陸が禁止されていた「第二海堡」に、個人レベルではまだ無理のようだが「ツアー」に参加すれば上陸出来るようになったらしい。
 かなり昔の話だから勝手に「時効」にしてお話するのだが、声が掛って第二海堡で使われている凝灰岩質石材の産地を調査する為に、私は勿論随伴者としてだが、非公式にだがお役所の船で上陸した事が在る。
 第一海堡に関しては鋸山では無く富津市売津地区(上総湊の南側に石切り場が存在した)から大量に凝灰岩が納入され地域が大変に潤った事が判っている。第一海堡では石材が 73,264 m^3 使われ、その費用が 172,947 円支払われたのに対して、第二海堡では石材量は 6.6 倍に増えたのに、支払われた金額は 1.7 倍にしか膨らんでいない。石材費用が単位体積当たり 1/4 に減らされている。そして第一海堡に石材を納めた地域にも、鋸山にも、第二海堡に石材を納入したと云う具体的な記録も記憶も無い(軍事機密の壁も有ったと思われるが)富津岬の砲台には、房州石と伊豆の凝灰岩が使われており、観音崎の砲台には伊豆の石灰質凝灰岩が大量に用いられている。
 結論は出せなかったが、三浦半島の広い地域と、内房の鋸山以南に産出して比較的名も無い「地石」として使われていたものと似ている事が判った。現在の米軍基地内泊勝力地区を中心に陸軍管理地から採掘したものらしい。泊勝力地区では、明治23年に石材採掘の為として松の木が 600本の伐採申請記録が残っている。また、相豆沿岸でみだりに人民が石材を取っているので厳重に取り締って欲しいと云う願書も軍の記録に在る。
 米軍基地内の地質調査は出来なかったが、江藤哲人氏が神奈川県自然史資料 3 の53-58頁に「横須賀米軍司令部地域の地質」と題した報文を発表しており、本文中で「浦郷凝灰岩質砂礫岩層とした本地域の火砕岩は、模式地等他地域のものに比べて、固結状態が堅固である違いがある。それゆえ、本地域の浦郷凝灰質砂礫岩に関しては堆積学上興味深い問題が含まれている」と記されている。興味深い。当時、三浦半島の凝灰岩を見直す為に数十回三浦半島に通い、海岸線を歩いた。代表的な、凝灰岩質石材の顔をご紹介しましょう。

最初に安山岩質石材。これは野帳が探し出せないので外形寸法がうろ覚えだが長手方向は 100 cm 以上だった。

波打ち際に置かれた安山岩石材は塩害風化を受けていた。側面はもっと酷かったが旨く写せなかった。

海側に置かれた凝灰岩質石材は保護用にモルタル被覆が施されていた。この部分はスコリア質が主体

泥岩偽礫が混じった石材が多い。岩石ハンマーは勿論私の個人用





全面スコリアか、泥岩偽礫が大きなものは、勿論、房総半島にも無い訳では無い





私が現地に行った頃は、砲台の傍はまだ砂利道だった。

2019年5月13日月曜日

鴨川市江見海岸の地質観察会:“Stop 1-2”

凝灰質砂岩ノジュールの「核」は細粒の緑色凝灰岩だった!
Stop 1 とStop 2 の両方で観察されるのですが、砂岩層の中に脈状や団塊状のやや黒い色をした部分が有り、特に団塊(球状)のものの中には、嶺岡山地で採集される細粒の泥岩だる「へそ石」に似た形状を示すものが有ります。でも、外観は似ていても、全く似て非なるものでして、この付近で観察される球状の団塊は周囲の砂と同じ砂岩団塊です。しかも、不思議な事に、内部には細粒の緑色凝灰岩が核となってはいっています。
「核」と云っても、小さな粒では無く、細粒の緑色凝灰岩の偽礫の周りを 3 cm 前後の硬い砂岩が取り囲んでいると云う雰囲気で、しかも炭酸塩コンクルーションでもありません。割目に希塩酸を掛けてもごくたまにほんの少し発泡を観察する事も無いでは有りませんが、ごく微量です。

砂岩の中に観察されるノジュールの例。この様なノジュールは石灰質のものが良く観られるのですが、この場合は希塩酸を滴下しても殆ど発泡しません。硬く締まったノジュールでは発泡するまでにかなり時間がかかる例も無きにしも非ずなのですが、緑色凝灰岩の成分の何がこの様に周囲を固めてしまうのか判って居ない様です。また、内包されている緑色凝灰岩偽礫は「円礫」の部類に属するものが多いようです。

参考用に割ってみました。中には細粒の緑色凝灰岩の偽礫が入っています。中央に卵形のものが一個と、左側に小さな礫状に細粒の緑色凝灰岩が数個観察されます。

周辺を見回してみると、波打ち際の変形段階の中にも乾裂の様に割れ目の入った緑色凝灰岩の偽礫が入っています。緑色凝灰岩は手で簡単に割れる程度の硬さなので、炭酸塩ノジュールでも珪質ノジュールでもありません。核の部分が固結していないのに、どの様な原理で周辺の凝灰質砂岩が固まるのか?興味深い話です。



大きな団塊は球状だけでは無く、また、複数の偽礫が集まったものもあり、かなり変化に富みますがやはり内部はクラックが入った緑色凝灰岩の外側を 3 cm 程度の砂岩層が取り囲んでいる雰囲気です。「乾裂」は、外側の砂岩層が割られた(割れた)後の二次的なものなのでしょう。

中には、団塊の外側の凝灰質砂岩の部分まで同心円状に硬さの差を生じる様な影響範囲が広がっている様子も見えます。

付近の黒い部分を観察するとその中には細粒の緑色凝灰岩の小さな偽礫が沢山含まれているように見えます。

周辺の凝灰質砂岩を観察すると、この中には緑色凝灰岩の偽礫は含まれていない様です。表面に転がっているものはこの地層が構成された時代のものとは限りませんが、小さな蛇紋岩やチャート礫も観察出来ます。緑色凝灰岩の偽礫は軟らかいので砂浜では直ぐに消えてしまうでしょうし、ある程度の大きさなものは周りを固結させて団塊をけいせいしてしまうのでしょう。

砂泥互層ではありません。付加体地質の典型的な折り返し地層です。これも間に挟まった緑色凝灰岩により周辺の凝灰質砂岩が硬く締まったので観察し易くなっている様です。

同じ様な地層が沢山観察されます。参加者の足元がスケール代わりです。・・・続く

2019年5月12日日曜日

鴨川市江見海岸の地質観察会:“Stop 1”

千葉県立中央博物館の地質観察会の“Stop 1”で観察した地質をご紹介します。
この付近は、比較的新しい付加体地質を観察する事が出来る場所です。“Stop 1,2”で観察するのは保田層群の中の、「1/5万 鴨川地域の地質」の表記に従えば「高鶴層」であり、別の呼び方をすれば「前島層」になります。
海岸には緑色凝灰岩の岩体が数か所露出しています。この緑色凝灰岩は成層していますが「珪化」している為に、波浪による浸食に負けずに海岸の砂浜から突出しています。面白い事に、二つの大きな岩体の中で大きな岩体を観察していると「珪質」だけでは説明できない風化状態を示していたので念の為に確認すると更に石灰質でもありました。大きな方の岩体には、チャートの黒色岩塊が取り込まれています。緑色凝灰岩は房総半島ではかなり珍しい部類に入ります。この場所以外では同じ保田層群の嶺岡山地の「白滝層」や「平久里層」で観察される様です。凝灰岩質石材を調査している私には大変興味深いのですが、「珪化」しているのでは石材にはなりませんし、露頭が小さすぎます。

参加者に配布される観察資料は、地学科主任研究員の高橋直樹先生の力作で30頁余り

海岸の砂浜に露出している珪質の緑色凝灰岩。右奥の方にもう一つの大きな岩体が見えます。この他にも海側に幾つかありますが、引潮の時でないと近寄れません。層になっているのが判りますね。

別の側面から観た同じ岩体です。凝灰質は細粒です。

大きい方の岩体の中に含まれる黒い岩塊はチャートです。

大きい方の岩体には小さな裂罅が発達し、石灰質の脈が入っています。

石灰質の確認の為、常備の希釈塩酸を滴下すると見事に発泡します。

砂浜に漂着していた「石灰藻」。植物なのに石灰質をまとっています。希塩酸を掛けると実に細かな泡が出来ます。

これも別の種類の「石灰藻」です。同様に見事に細かな泡が発泡します。私が何時も凝灰岩質石材で確認するのをご覧に庵っていると思いますが、凝灰岩の石灰質はこんな石灰藻が素材かも知れません。

江見海岸の西側に、嶺岡山地に水源が在る「洲貝川」が流れ込んでいるので、海流(沿岸流)の効果で、砂浜にはいろんな円礫が転がっています。一生懸命円礫を探しています。

私が持ち帰った珪質緑色凝灰岩です。

私が持ち帰った珪質緑色凝灰岩です。前の画像のものと異なり、凝灰質が粒状になっています。他にも斜方輝石の劈開面がきらりと光る蛇紋岩も良く転がっています。

石灰質頁岩です。卵形の素敵な形状です。右手に丸く薄い色の部分が有るのは、希塩酸で発泡を確認した跡です。・・・続く