2020年10月10日土曜日

大谷石の中の礫(2)文京区関口

 地形に興味を持たれる方々ならば文京区の「胸突坂」はご存知と思うのだが、この坂を登った先の右手に大谷石の石塀が長々と続いている。出来れば「緑色」の線で示したこの坂の右手の薄くしい石材を紹介したいのだが、本題は大谷石なのでパス。坂下の関口庵の石塀とは風化の状態が全く異なるので、最初にザッと関口庵の石塀を見て頂いて坂を登って頂くと判り易いと思います。ここは、大谷石としてはやや珍しい、この「波」の様な風化の原因を探るために撮影したものです。

付近の地図。赤い線が二か所に引かれているが、真ん中の緑色隣の部分が特に観察し易かった気がします。但し、此処では一時間十分の滞在時間中に90枚の撮影をしたので夫々の画像がを何処で写したかは全く見当が付かないので悪しからず!
石塀を見るとこの様に小さな「波」の様な割れ目の様な窪みが沢山出来ています。スケールは 15 cm。どうやらこれは堆積方向に直角な断面で見ている様で、スケールの右上の石材は恐らく直角方向なのでしょう。
石材の表面を接写レンズで思いっきり近づいて拡大撮影をしたものです。深い溝の様なのが前の画像の波の様な窪みです。白丸の中は流紋岩か石英の粒子では無いかと思います。
中に、この様に岩片の様なものが溝が詰まっているものが有りました。どうやら軽石が圧密されて黒曜石のレンズ状になっているもののようです。細かな割れ目があります。隙間になっているのは、圧密度が足りずに隙間だらけの火山ガラスの状態で風化に弱く粘土化して抜けてしまったものらしいと判りました。
溝の広がる面(堆積方向と平行))で石材を採掘して仕上げたらしいものを見付けました。大谷石の「ミソ」にはならない程度に圧密され熱水等の影響が少なくて粘土かしないで済んだ部分の様です。
前の画像の左手を拡大して見ました。中央部だけがガラス化して玄武岩~安山岩の様な状態になっています。周囲は圧密が足らずに隙間が残って白く見えるのでしょう。
これは、ガラス化から粘土化している部分です。これがもう少し進むと茶褐色~黒い「ミソ」になってしまうようです。
炭化した木の化石かと思ったのですが、圧密レンズの割れたもののようです。前の画像のものと割れ方までそっくりです。
比較的岩片が多い部分です。撮影時に気付かなかったので左側の赤い色の部分はなんだか判りません。一応、2 mm 以上の礫が結構あります。
前の画像の一部を拡大して見ました。ルーペを持って居るとこの程度の観察は出来ると思います。ルーペは10倍のものが適当で、余り倍率の高いものは不要です。

2020年10月9日金曜日

大谷石の中の礫:最初に

 目まぐるしく変化する“FB”の世界で、最初のきっかけは忘れてしまったけれど、大谷石の中に含まれる「礫」の話になった。参考として産総研から発行されている「地質ニュース」に掲載された「土浦・八坂神社の礎石」(2004)をご案内した。八坂神社の礎石に使われた石材の産地の候補として上げられた露頭を観察したのだが、2004年当時は未だフイルムカメラ(OM-1)を使っていた時代でフイルム画像をデジタイズしないままに過ぎてしまったので、当時の画像が無い。

数回に分けて、軽石やセラドン石は除いて、流紋岩や玄武岩(~安山岩)の砂礫サイズの岩片が大谷石として使われている石材の中に含まれているのをご紹介します。

「八坂神社」記事は下記から御覧いただける

https://www.gsj.jp/data/chishitsunews/04_08_07.pdf

地図は宇都宮市北部のゴルフ場と山田川に挟まれた狭い削平された土地の法面。相当地層は“Os”凝灰質砂岩・シルト岩だが、削平した跡なので株の“Ot”流紋岩火山礫凝灰岩・凝灰岩及び凝灰角礫岩なのだが、風化していて感激する様な地層では無く、これじゃ石材として使えないよと感想を持ったのみで、サンプリングもしないまま、したがってその後で顕微鏡でも見ていない。
地質図「宇都宮」の28頁から抜粋させて頂いた大谷層基底部の柱状図。この柱状図は農業公園の西側に在る「半蔵山」付近だが、大谷層最下部付近の「流紋岩円礫を含む」地層だったらしい。地質図は下記
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_07103_2010_D.pdf

大谷石に触れる前に、開削の大谷石採掘場の画像をご紹介しておきましょう。これは高橋商店さんの石切場で、唯一の開削現場。2010年に「千葉県立中央博物館」の県外岩石観察会に参加させて頂いた際の画像。

前の画像の右手には更にこの様に真っ平らな当時の採掘面が広がっています。

採掘場で落ちていた大谷石の岩片に黒いものが見えたので、咄嗟に10円硬貨をのっけて雨の中で撮影したのでクリアな画像では無いけれど明らかに岩片。
コースター状に切断されたサンプルを頂いて帰り、良く乾燥して表面を撮影した中の一枚。拡大して見ると流紋岩らしい岩片が見えた。表面を磨いていないので慣れないと判らないかもしれないが周りに斜長石の斑晶らしいものがパラパラと観察される。
柱状図のコースに出て来た「半蔵山」で大谷層の基底付近の大きな安山岩礫。スケールを置かなかったので草葉のサイズから想像して頂ければ幸い。これも博物館の岩石観察会の際のもの。
千代田線の松戸~北小金井間の段丘上に在る住宅街当たりの確か擁壁に使われた大谷石が見事に風化していたので撮影したもの。軽石が変質して見せる青色が美しいが、砂粒程度の小さな岩片が散乱しているのが判る。かなり前の画像なので位置情報が記録されていない。
やや、岩片が大きい場所で小さな金尺を置いて写してみました。砂礫サイズのものがかなり混じっているのが判ります。