2019年6月14日金曜日

風化火山地質を通した甲子トンネルの大型改修

 2008年に通算33年を経て開通した、白河と会津下郷間の国道289号トンネル:甲子トンネルが、風化玄武岩(あるいは凝灰岩 )由来と思われる水膨潤性粘土(スメクタイト)が原因と思われる盤膨れ(車両走行面の膨れ)が最大 33 cm に達し、大幅な改修作業に入って居る。小生も数回このルートは利用させて頂いているが、4月末に改修作業の事を知らずに走っている内に「通行止め」の立て看板を見て慌ててしまった。
 実際には休工日に当たっていたので通過出来たのだが、個々のトンネルは最初の画像にも有る様に、トンネル途中で断面が変わり急曲線でのカーブが有るなど通常のトンネルではありえない状態がある。2005年頃に、もう開通しているのだろうと思って走ったが開通していなかったので図に示された迂回路と同じコースを走らざるを得なくてえらく往生したことが在る。地すべり等で、既に完成していたトンネルや橋梁が使えなくなり大幅に路線を変更して再掘削した挙句が、僅か8~9年程度でこの大型改修に至っている。
 盤膨れは、蛇紋岩に由来するものが、千葉県では嶺岡トンネル、三浦半島では阿部倉トンネル等で工期を大幅に延長して完工しているが、火山性地質由来のスメクタイトによる地山の膨潤はやや珍しい。但し、他にも結構類例は有る様だ。
 路面下のインバートに大きな応力が掛り、コンクリートが必要強度を得る前に圧密で破壊した状態で固まったらしい。新たにコンクリートを打設しなおしても、同じように固結時所定強度が発現する前に破壊してしまう可能性を回避する為に、工場で成形し、強度が発現した「プレキャスト・インバート」を用いたとの事。日経コンストラクションの最新号(2019年6月10日)に記事が掲載されていた。
 このトンネルの完成当時の単価が、メートル当たり 260万円だったらしいが、このプレキャスト・インバートは工場生産で精度高く製造できることはあるが、なんと、コストは工事費込だろうがメートル単価が 840万円に及ぶらしい。プレキャスト材の高価格は品質との兼ね合いで高いとは言えないが、地質調査の際に膨張性地山の事は判らなかったと言う事が残念!

塔のへつりの遠景:白河石や芦野石を構成する白河火砕流の給源と言われる「塔のへつり」カルデラの一部は阿武隈川の浸食により美しい景観を呈している

火砕流堆積物ばかりだと思うとこの様に大きな柱状節理が、田の脇にごろりと転がっている。付近には供給源と思われる岩壁は無いので、山体崩壊の際にこの付近まで運ばれたものと思われる。甲子トンネル下郷側出口のやや低い場所。旧道沿い(2006年頃撮影)
やや前屈みの姿勢だが、私の身長は 174 cm だからかなり大きな柱状節理です。凝灰岩質の柱用節理は大きなサイズが多いので、これも凝灰岩質かもしれないが形が整っている。

今年の4月末に甲子トンネルを通過した時にはまだ周辺の山々には雪が残っていた。

公告されていた規制・改修区間は 約 5.5 km とかなり長い。

白河側から入ると直ぐにトンネルの断面が急に縮小され急曲線に入る。真っ直ぐの大断面が当初の掘削区間だが、供用出来なくなり急曲線で膨潤性地山を避けて新しい線形が設計されたものだろう。

当日は休工中だったが、「段差あり」の注意管板がでかい。

福島県に拠る改修公告に掲載された路面の隆起量(盤膨れ))を示す画像。寸法は明記されていないが 10~30 cm 程度に達していた様だ。

西松建設技報に掲載されていた当該区間の新潟側地質縦断図。赤マーキングの部分が変質帯を示す。西松建設技報に掲載された工事報告に拠れば、西松・熊谷JVの担当した、「289号9号トンネル」区間に対しては津川層下位の流紋岩質凝灰岩と上位の軽石質凝灰岩( 細粒凝灰岩・火山礫凝灰岩・凝灰角礫岩等 )が存在し、不規則に分布する熱水変質を受けた脆弱層が想定されていたようだ。

日経コンストラクションに掲載された現改修区間の断面図には、膨張性地山インバート(道路面の下側)を吹付コンクリートでは強度の発現が遅くコンクリートに亀裂が生じる可能性を避ける為、予め工場で製作され設計強度が期待出来る「プレキャスト材」のインバートを採用している。

福島県に拠る改修公告に掲載された「プレキャスト・インバート」を採用した施行状況を示す。「日経コンストラクション」( 2019年6月10日号 )に掲載された記事では、西松建設技報とは異なり「原因とみられるのは、地山の玄武岩に含まれる「スメクタイト」と呼ぶ膨潤性の粘土鉱物だ。地下水や水蒸気に触れると膨張」とある。

参考用にベントナイト製造の「㈱ホージュン」殿HPから、スメクタイトの説明の項を抜粋して引用させて頂いた。
以上

GVP 週間火山活動情報の概要:6月5日 ⇒ 11日;18火山

New Activity / Unrest
Colima  | Mexico  | 341040 | 3850 m
6月1日から7日に掛けて火口の北東側で小規模の噴火と間歇的な水蒸気と火山ガスの噴出が続きました。天候が悪くしばしば火口付近の目視観測が遮られました。

Etna  | Sicily (Italy)  | 211060 | 3295 m
NSEC火口の南東側、標高 2,850 m 付近の割れ目火口での火山活動は、その頻度と強さが6月3-4日に勢いを減じま5日には爆発は収束しました。割れ目火口付近では溶岩流の動きは5日には活発でしたが翌日には静まり冷却され始めました。6日にはNEC火口で突発的な火山灰の噴出がみられましたが急速に拡散しました。報告に拠れば、NSEC火口の北東側の隅がが 7 m 崩落しており、5月30日の火山灰の噴出時のものと思われる。更に、最近の噴火の前から火砕丘の南東側の高温部は、6月6日の噴火の際に、噴気孔からの堆積物で広く覆われています。

Great Sitkin  | Andreanof Islands (USA)  | 311120  | 1740 m
6月7日の1318時に、地震観測データは小規模の水蒸気爆発を起したと報告されました。航空カラーコードは「イエロー」

Piton de la Fournaise  | Reunion Island (France)  | 233020 | 2632 m
11日0603時に始まった群発地震は急速な地殻の変状を伴いました。0635時に火山性微動が始まり、噴火が始まったものと想定されますが、天候が悪く目視観測では確認出来ず、ウエブカメラの画像で確認出来ました。0930時に現地調査に赴いた火山学者は、“Dolomieu”火口の南南東側山腹で少なくとも 5カ所の割れ目火口を確認しました。天候が悪く観測所からの目視観測は阻まれていました。比較的低い標高の三か所の割れ目火口からは、高さ 30 m に達する溶岩噴泉と溶岩の流れだしが確認されました。上部の二ヶ所の割れ目火口は活動を停止しました。1530時現在、最も標高の低い割れ目火口は活動を続けています。

Sinabung  | Indonesia  | 261080  | 2460 m
6月9日1628時に噴火が発生し、濃密な黒色~茶褐色の火山灰の噴煙を山頂上空 7 km まで上昇し。火砕流が南東側に 3.5 km, 南側に 3 km 流下しました。鳴動音が観測所でも聞こえました。噴煙は10日まで、山頂火口の 500 m 上空まで上昇を続けました。警戒レベルは“1-4”段階の“3”。南東側 5 km 以内と北東側 4 km 以内と更に半径 3 km 以内は立入禁止。

Ongoing Activity
Agung  | Bali (Indonesia)  | 264020 |  2997 m
6月10日1212時に爆発が発生し灰色の火山灰を含む噴煙が 1 km 上昇しました。警戒レベルは“1-4”段階の“3”。半径 4 km 以内は立入禁止。

桜島  | Kyushu (Japan)  | 282080 | 1117 m
3-10日の間、ごく小規模の噴火と時折、火映が南岳火口で観測されました。警戒レベルは“5”段階の“3”。

Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 |  1229 m
5-11日の間火山灰を含む噴煙が高度 2.1 km に達し様々な方角に拡散しました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”で、半径 2 km 以内は立入禁止。

Ebeko  | Paramushir Island   | 290380 |  1103 m
3日に火山灰を含む噴煙が高度 3 km まで上昇しました。航空カラーコードは「オレンジ」

Kerinci  | Indonesia  | 261170 | 3800 m
7日0604時に、灰色を帯びた噴煙が山頂火口の上空 800 m まで上昇した事が観測されました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”、半径 3 km 以内は立入禁止。

Klyuchevskoy  | Central Kamchatka   | 300260 | 4754 m
12日に火山灰を含む噴煙が高度 5 km に達しまし、航空カラーコードを「オレンジ」に引き上げました。火山灰を含む噴煙は、高度 5 km でその日遅くまで続き、西北西に 68 km まで広がりました。

Krakatau  | Indonesia  | 262000 | 813 m
地震観測網は10日0850時に噴火を記録しましたが、天候が悪く目視では確認出来ませんでした。警戒レベルは“1-4”段階の“2”、半径 2 km 以内は立入禁止。

Manam  | Papua New Guinea  | 251020 | 1807 m
7-8日に火山灰を含む噴煙が高度 4.3 km に達しました。

Merapi  | Central Java (Indonesia)  | 263250 | 2910 m
3-10日の間、溶岩ドームの想定容積 458,000 m^3 の変化はありません。新たに押し出された溶岩は南東側の山腹に落下し、岩屑雪崩を引き起こし9日には 1 km 余り落下しました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”、半径 3 km 以内は立入禁止。

Rincon de la Vieja  | Costa Rica  |  |  1916 m
11日0343時に噴火が発生し、10分間継続しました。天候が悪く噴出物を確認する事は出来ませんでした。

Sabancaya  | Peru  |  | 5960 m
3-9日の間、連日平均 12回の噴火が観測されました。火山灰を含む噴煙は火口の上空 2.9 km まで上昇しました。7日の爆発では、火山灰を含む噴煙が 30 km 南から南西に広がりました。火口から半径 12 km 以内は立ち入り禁止。

Sheveluch  | Central Kamchatka |  300270 |  3283 m
1-7日の間、溶岩ドームで熱異常が観測されました。航空カラーコードは「オレンジ」


Stromboli  | Aeolian Islands (Italy)  | 211040 | 924 m
6月3、6-9日にストロンボリ式噴火が続き、複数の火口から脱ガスが起こりました。北側の“N1”と“N2”火口では毎時1-4回の頻度で噴石を 80 m 余りの高さに噴出し火山灰の含まれた噴煙が伴いました。南側の“S1”と“S2”火口では、毎時 3-8 回の頻度で、噴石を 80-150 m の高さまで吹き上げ、“C”火口からは火山ガスの噴煙が立ち昇りました。

以上

阿蘇山_190611_14110000_ASOKSRvsm

Nevado del Ruiz_190607_062315

Sierra Negra_190607_063618