2018年5月26日土曜日

大理石(石灰岩)の仁王像:越谷市七左町 観照院で

23日に鐘楼基壇の石材を観察させて頂いた越谷市七左町の観照院を再訪し、今回は少し心に余裕が在って、山門前の一対の仁王像の石材を考えてみた。

灰色がかった乳白色の色合いは難しいが、筋目の模様が強く表れているので、大理石と判断した。

大理石(石灰岩)は加工し易いが時に割目が出易い傾向が在るのだが、この様な大物を僧衣の襞を表現するような場合には適した石材と言えるかもしれない。

産地は何処だろうと考えてみたが、全く判断材料が探し出せなかった。

尚、一対の仁王像のもう一方は桜の葉に邪魔されてピンボケになってしまったので割愛。今日は良く歩いたが、この観照院の鐘楼基壇も再訪の甲斐が在る再訪となったし、新方方面の観察でも伊豆の石材を数か所で観察出来たので、疲れはしたが良い一日であった。

2018年5月25日金曜日

越谷市七左町:観照院鐘楼基壇等

観照院には元々「青面金剛像」が目当てで出掛けたのだが、此れだけのものが有れば他にも何かあるだろうと多少の期待も持っていた。余り美しい状態では無かったので、基壇の上はカットしたが、鐘楼の基壇に比較的小サイズの切石が積まれていた。埃で汚れているが火山岩の角礫を伴う淡緑色の凝灰岩で伊豆の修善寺から上流の猫越川の河床に露頭が在る凝灰岩の仲間と思われた。






願主の名を刻んだ標石を見付けたが肝心な年号が良く読めなかったが(最近は視力も落ちてきた強い薬の影響かもしれない)「永八亥三月」の銘が読めたので、帰宅後調べると「安永八(1779)年」が亥年に当たる。

この時代であれば資料的価値が高いなと思ったが切石の寸法を測らなかったのが惜しまれる。この画像が件の「青面金剛像」です。

地元の地理に疎いので、30分に一本の越谷から少し外れの場所に行くバスで出掛けたが、帰りに新越谷からのバスが頻繁に直ぐ傍を走っているのを知ってがっかり!これならもっと早く来るべきだった。明日は新方地区を歩く予定だったが、早い時間に此処に立ち寄って寸法を計ってから回る事にした。

越谷市旧越巻(現新川町)の凝灰岩仏塔等

稲荷神社の由来によれば、現在の新川町は綾瀬川の左岸に位置し「越巻」と呼ばれて居たらしい。比較的近くに、「丸の内稲荷と満蔵院」と「稲荷神社と観照院」の二組の神社と寺院の組み合わせが在る。両者共に慶長十七年と元和元年と云う1600年代初頭の数年の差で創建され現在は無人となった満蔵院が別当の稲荷であったらしい。今は無人となった満蔵院に、素人で恥ずかしいがこれも「一石六地蔵」と呼ばれる範疇のものだろうか?
大きく割れながらも尚原形を保った明治十三年辰(1880)製建立の凝灰岩製の石仏が在った。



向って右手は完全に剥落している



石屋さんで「みどり」と呼ばれた伊豆の凝灰岩に彫られた寛政六申(1794)年の年号が刻まれた墓石も観察する事が出来た。凝灰岩製の墓石はごく限られた範囲に分布しているだけで、今回の様に年号がはっきりと読み取れる例は少ないので良い観察例を積み重ねる事が出来た。

帰りに立ち寄った草加で、何時もは通らない道を歩いたら、駅から近い場所に房州石の石蔵を見付けた。建物の陰で殆ど見えないが、丁度望遠レンズを持っていたのでギリギリ、壁面を撮影させて頂いた。

その直後に青木宗義の子孫である石材店さんの御当主にばったりお会いして、この日に観察した(青木宗義異聞に記した)石燈籠の事を暫く立ち話をしたが、天候は余り芳しくなかったが、良い一日だったので、序に帰りに昔の馴染の居酒屋に立ち寄ってしまった。

2018年5月24日木曜日

GVP 火山活動情報の概要:5月16日⇒22日;16火山

これはスミソニアン博物館によるGVP火山活動情報を抄訳したものです。FB/Mail共に同文で発信する都合上、今回もハワイ情報が大変に多いのでこの部分は端折って御案内させて頂きます。

New Activity/Unrest
Kilauea  | Hawaiian Islands (USA)  | 332010 | Elevation 1222 m
⇒下記に、画像、地図、ビデオ等がありますので参照下さい。
https://volcanoes.usgs.gov/observatories/hvo/hvo_multimedia.html
“HAzard Alert Notification System (HANS) Notice”の最新情報を抜粋してご紹介します。
割れ目噴火口の中央部がERZ内で最も活動的であり、特に活動的なのは割れ目番号の22,19,6,5,と23です。〝F9”では溶岩流の流出はありませんが、微かな輝きが見られ、メタンガスの燃焼が夜間に観測されます。オーシャンエントリーも活発で時折小爆発を起しています。溶岩流の高さは11mと報告されています。オーシャンエントリーは計器では観測されていますが、観測者は夜間でないと目視出来ません。火山ガスの発生も非常に活動的です。下記に最新の活動地図があります。(ここには少し圧縮した画像を添付しています)
https://volcanoes.usgs.gov/volcanoes/kilauea/multimedia_maps.html



Langila  | New Britain (Papua New Guinea)  | 252010 | Elevation 1330 m
火山灰を含む噴煙が高度 2.1-2.4 km まで上昇しました。

Merapi  | Central Java (Indonesia)  | 263250 | Elevation 2910 m
5月21日0125時に水蒸気爆発が発生し19分間継続しました。爆発により生じた火山灰を含む噴煙は火口上空 700 m まで上昇しました。また、0938時には6分間継続する水蒸気爆発が発生し、生じた火山場灰を含む噴煙は火口上空 1.5 km まで上昇しました。これらの爆発による降灰は風下側の 15 km の範囲から報告されました。3回目の爆発は1750時に発生し3分間継続し噴火後に1回の火山性地震が観測されています。噴火に先立ち、地震が増加した為に、警戒レベルは“1-4”段階の〝2”に引き上げていました。

Piton de la Fournaise  | Reunion Island (France)  | 233020 | Elevation 2632 m
4月27日に始まった割れ目火口からの噴火は5月22日まで継続しました。流れ出した溶岩は主として溶岩チューブを通り、生じたスパッターはせいぜい20-30 m 程度までの噴出でした。地殻の隆起傾向は費い続き観測されています。火山性微動は15日から増加し始めましたが、18日からは落ち着きを取り戻しています。19日から活動は劇的に減少し最も高い位置に在る火口は静まりましたが、主火砕丘はスパッターを噴出し続けています。

Ongoing Activity
Agung  | Bali (Indonesia)  | 264020 | Elevation 2997 m
5月19日1719時に噴火により火山灰を含む噴煙が火口上空 1 km まで上昇しました。警戒レベルは“1-4”段階の“3”です。

Aira 桜島 | Kyushu (Japan)  | 282080 | Elevation 1117 m
この期間に、南岳火口で13回の噴火と20回の爆発的噴火が発生しました。

Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 | Elevation 1229 m
5月16-22日の間、火山灰を含む噴煙を高度 1.8-2.1 km まで上昇させました。

Ebeko  | Paramushir Island (Russia)  | 290380 | Elevation 1103 m
5月12-14日に爆発により火山灰を含む噴煙を高度 2.8 km まで噴出しました。

Fuego  | Guatemala  | 342090 | Elevation 3763 m
5月17日1400時に始まったラハールは西側の山腹を下り、その幅は 25 m で、深さ 1 m の規模で直径 1.5 m の岩塊や樹木を流しました。19-21日の間は毎時 5 - 8 回の爆発的噴火を繰り返し火山灰を含む噴煙は 1 km 余り上昇しました。白熱岩塊は火口縁の上空 200-300 m 上空まで噴出され、これにより生じた岩屑雪崩は植生地域まで届きました。溶岩流は 700-800 m 流れ下っています。

Karymsky  | Eastern Kamchatka (Russia)  | 300130 | Elevation 1513 m
5月13-15日に熱異常が観測されており14日には火山灰を含む噴煙が南西に 150 km まで広がりました。航空カラーコードは「オレンジ」

Kirishimayama  | Kyushu (Japan)  | 282090 | Elevation 1700 m
⇒気象庁のサイトを参照下さい。




Klyuchevskoy  | Central Kamchatka (Russia)  | 300260 | Elevation 4754 m
5月13-14日に熱異常を観測しています。15日の0315時に強い爆発的噴火が発生し、火山灰を含む噴煙は高度 10.5 km に達しました。火山灰を含む噴煙はおよそ8時間後に拡散するまでクリチェフスコイ火山と周辺の火山を覆い隠していました。夜間には火口付近の白熱現象と高温岩塊の岩屑雪崩が観測されています。航空カラーコードは「オレンジ」に引き上げられました。

Sabancaya  | Peru  | 354006 | Elevation 5960 m
噴火は前の週と変わらず激しく続いています。5月14-20日の間は、連日平均30回の噴火を繰り返していました。火山ガスと火山灰を含む噴煙は火口縁から 1.9 km 上空へ達しました。亜硫酸ガスの噴出量は日量で最大 3,147トンでした。


Sheveluch  | Central Kamchatka (Russia)  | 300270 | Elevation 3283 m
弱い熱異常が4月28日と5月11-16日に観測されました。航空カラーコードは「オレンジ」

Sinabung  | Indonesia  | 261080 | Elevation 2460 m
5月16-21日の間、灰白色の噴煙が火口上空 700 m 上空に達し拡散しました。5月20日0900時の噴火では火山灰を含む噴煙が 700 m 上昇しました。警戒レベルは“1-4”段階の“4”

Turrialba  | Costa Rica  | 345070 | Elevation 3340 m
5月21日0900時に発生した噴火では天候が悪く噴煙到達高度は確認出来ませんでした。
以上
*昼間の地味なストロンボリ火山の噴火画像をご紹介します。

以上

草加石工:青木宗義 異聞

たまに武蔵野線からの騒音が聞こえる越谷市七左町の観照院と隣り合わせの稲荷神社(地図表記では天満宮,鳥居には稲荷神社)と観照院墓地の間の通路の脇に燈籠のどうやら用済みらしい石燈籠の部材が置かれており、私が取り敢えず注目したのはその下の淡褐色の石材で、伊豆は須崎~下田付近に産出する石灰質生物遺骸を大量に含む凝灰岩なのだが、チェックを終えてフト!上に載った石材を見ると厳めしい獅子の姿が在る。

最近、草加宿の石工「青木宗義」の二代目について調べ、草加の地図に記載されていない小さな神社の氏子総代さんに12頁の簡単な報告書をお出ししたばかりなので つい、作者の銘を探すと、隣の台座には願主のお名前と共に石工の名が「草加宿石工 関八州石工頭子孫 神流齋 青木庄左エ門宗義」と刻まれている。



草加宿に定住後の初代青木宗義が神流齋を名乗り始めたのだが、これまでの調査では「神流齊」は初代だけが使っていた事が確認されており二代目以降が用いた例は確認されていない。「二代目青木庄左エ門」の記載は確認されている様だが、絵画に秀でた技術を持ち「画号」として「神流齊」を用いた筈なのに、これを二代目以降が使ったとは不思議でならない。もう一つ、他の署名は「関八州石工司子孫」なのだが、今回は「関八州石工頭子孫」とあり、明らかに初代では無いと思われる。尚、建立の年号は台石には刻まれていなかった。草加と越谷は、一応今月中に整理したいと思っているのだが、この調子では、時々未見の社寺を覗きに行かなければならない様だ。

2018年5月23日水曜日

富浦海岸地質観察会 (6) 大房岬で採掘された凝灰岩(3/3)

逢島から法華崎に向かう途中の道路が国道側と海水浴場側の二手に分かれる辺りの右手に、やや大型の石材を使った、防波堤の様ながっしりした石積みが在る。ここの石材は赤錆色が濃いのだが、幾つか生痕化石が観察出来る場所だ。石組の一部。

堆積層に直交する石材面の例。スコリアのサイズがやや大きく量も多いようだ。

堆積面に平行な生痕化石が観察される石材表面を二例。



参考用に、対岸の三浦半島の「佐島石」が石蔵に用いられている例で、壁面に生痕化石が現われている例。ここは見事に薄い堆積層が幾重にも重なっているのが観察出来る。

同様に参考用画像だが、房総半島の外房側。勝浦市の南側に広がる守谷海岸に残る採石跡で観察される生痕化石の例。

これにて千葉県立中央博物館の地質の日記念地学観察会の報告は終わります。

2018年5月22日火曜日

富浦海岸地質観察会 (5) 大房岬で採掘された凝灰岩(2/3)

駅周辺の建物はかなり建て替えが進んでおり、古い建物は余り存在していないが、部分的に補修しながらも古い石材を使い続けておられる場所も有る。
国道沿いの石垣は車が巻き起こす土埃で汚れているが、堆積層がハッキリと観察できるものが有る。



別の場所の石塀で、門柱の部分と笠石が置き換えられているが未だ未だ当分このままで使って頂けそうな雰囲気だ。泥質(火山灰も多い事が鉄錆色から判るが)の部分が卓越しているが、スコリアも適度に含まれていて面白い。

堆積層を横から見たものだが、スコリアは厚い層を造らずに適度に分散して見える。

スコリアが含まれる面が見事に平らに現われているものも有り、

これを接写すると結構面白い発泡したスコリアが観察される。
接写した画像の横幅は 3 cm



今週は都合でFWは余り出来ないのが残念。
しかし、このブログは開始当時データ容量の上限が“300MB”しかなかったので、結構簡単に容量オーバーで使えなくなると思ったが、既に1866回投稿している。実際にはGVPの火山活動情報の古いものを削除しているからこれをそのままだったら2,000回を越えていただろうに、太っ腹な事である。

2018年5月21日月曜日

富浦海岸地質観察会 (4) 大房岬で採掘された凝灰岩(1/3)

大正初期に地質調査所から発行された「千葉県産建築石材試験報文」によれば、此処で産出した石材は、鋸山に産出した房州石の中一部の石材に似ていた様ですが、実は堆積構造が全く異なります。
観察会の日に、街中の石材を観察しましたが、大部分の石材は鉄分が酸化して赤茶けた色になって居ましたが、一ヶ所だけ錆色を示さない石材が家屋の一部に使われていました。
家屋の腰回りに使われている状況。

スコリアが目立つ部分と泥質に見える部分とが混在している。

スコリアが目立つ部分の拡大。

スコリアが目立つ部分と泥質主体の部分が成層している状態。

泥質の部分には石灰質の生物遺骸と思われる部分も含まれています。錆色が見えるのは打ち込まれた釘です。

斜めの堆積構造が目立つ房州石では、このような生痕化石を観察する機会はほぼありませんが、それ以外の房総半島産の凝灰岩質石材は大体において平行な堆積なので生痕化石が模様が観察されます。三浦半島の「佐島石」も生痕化石が目立つ石材です。

富浦海岸地質観察会(3) 不得手な化石類

今回の観察会では化石の採取も出来ました。伊豆の石灰質の凝灰岩の説明をする時に、貝殻が解けてそれが再度結晶化して石材の強度を高めると云った説明を良くしますが、石灰質のノジュールの形成には、特に、貝殻などが融け出す必要も無く、貝の有機物が腐敗する際に、生物体を造る有機物中の炭素から炭酸水素イオンが造られ、それと海水中のカルシウムイオンが反応して炭酸カルシウムが形成されると云う新たな考えが名古屋大学の研究グループから提唱されていて、極めて短時間にノジュールが形成されるのだそうです。
炭酸塩ノジュール等の観察風景

種は不明ですがサンゴらしい。

海岸で拾える沼サンゴ。漁師の方が居られなくて仕事の邪魔にならないと思われる時は漁港の船溜まり(漁船を引き上げる処)を覗いてみるのも・・・



化石とは言えなさそうだが、伊豆の石灰質凝灰岩や房総半島の高宕石に含まれる石灰藻。

貝殻を焼いて漆喰の原料とした事から「ハイガイ」と呼ばれる貝化石も海岸で拾えますが、地上にはこれを含む地層は見当たりません。赤貝の殻を少し厚くした雰囲気。

ズーフィコスと呼ばれる生痕化石。黒いのはスコリアが含まれている為です。
白い火山灰の層に棲息すると同じ形の白い生痕化石が形成されます。生痕化石は他にも多数観察されます