2019年4月6日土曜日

凝灰岩「飯岡石」の中の火山ガラスの観察 (2/2)

白色の凝灰岩の識別に散々苦労しているので、この飯岡石も何とかして火山ガラスの観察をしてみたいと考えていた。薄片観察では千葉県立中央博物館のサイトにも有る様に、有孔虫ばかりが見えて、火山ガラスはほぼ判らない。(勿論、有孔虫の隙間にガラスらしいものは見えてはいるが)そこで、飯岡石を 4 mm 程度にスライスした試料を沢山作り、これに石灰質のチェック用に普段から常備している希釈した塩酸を使用して「エッチング」をしてみる事にした。どの程度の塩酸量が良いのか、素人の私には全く見当も付かないので、研磨した切断面の4ヶ所に少量をたらし、一つは、1回だけ滴下、二番目の場所は液がほぼ蒸発したらもう一度滴下して計二回、三番目は三回と、最大四回まで滴下して石灰質がどの程度剥がれるのか試してみた。結局、1回でも時間を掛けると石灰質は充分に剥がれ落ちてくれる事が判った。もう一つ、石英質の海綿骨針は、周りが溶けてなくなるので当然の事ながら洗浄したら行方不明になってしまった。千葉県立中央博物館の飯岡石の頁は下記
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/geotour/choshi/Litho/hyohon14.html

四か所中最初の一ヶ所を除き、二回目の希塩酸滴下後の発泡状態

最後の四か所目の発泡状態。

飴色の様な左手は希塩酸が作用していない部分。薄いお皿の様な形状に凹んでいる。海綿骨針らしいものが突き出しているのが観察される。

火山ガラスらしいものが見えた。小さな光の点はガラスだと思うが、この倍率では見え難い

目が慣れないと判り難いが石灰質が希塩酸に反応して溶けだし火山ガラスが残された状況。白い中にガラスらしい形状のものも観察される。右上は斑晶。

やや大きめの火山ガラス片を確認。被写界深度が本当に小さくて殆どピントが合わない。

薄いのやら小さなガラスになんとか焦点を合わせる事が出来た例。中央の飴色は輝石らしい。

検鏡していると、所々に焦点が合わないボケた部分が出来るので、焦点距離を調節して少し浮かした面に焦点を合わせると、基質から立ち上がったガラスが見える。写真を撮るのは至難の業。サンプルが光を通さないので、反射光しか使えない。尚、画面の幅は 0.9 mm です。

2019年4月5日金曜日

美しい結晶片岩だと思ったら、強せん断を受けた蛇紋岩らしい岩片

先日、幸手市内でのフィールドワーク中に、何時もの様に、例えその目的地に凝灰岩質石材を使ったものが見付からなくても、必ず敷地内を歩いて、境内に点在する岩塊の中に凝灰岩の破片が無いかチェックしていたら、隣接した寺院で庭石に使う為に運んで来たらしい美しい緑色の透明感の有る結晶片岩の様な大きな岩塊を見付けた。余りに美しいので欠片でも欲しいなと思い探したのだが、残念な事に全く同じものの小片は見付からない。
少し、色が異なるが小さな断片を見付けたので持ち帰り、今日博物館で観察用に小さく切断した。数が多いのは、仲間達にも見てもらう為である。てっきり、結晶片岩と思ったのだが、顕微鏡で見ると少しばかり組織が違う。6 mm 程度の厚さの中で、半分はせん断を受けて結晶片岩の様に層状を示すのだが、残り半分は不思議な鉄錆色の模様が走っている。どうやら、秩父辺りの蛇紋岩が激しいせん断を受けて結晶片岩の様な外観を示しているらしいと結論付けたのだが、さて、真相はどうなのだろう?岩石の名前を目視観察だけで推察するのは本当に難しい事ですね。
時間が無くて端面の研磨が出来なかったので精密切断機のカッティングマークが斜めに走っているのは御容赦下さい。

現地で特に美しかった大きな石の片隅を太陽光の下でその一部分を接写してみた

破断面の接写拡大

今日、切断し超音波洗浄したあとの試料。右の方に断面が出ているが、緑色の美しい部分が一筋見えている。他の部分はやや色が黒い。尚、時間の都合で精密切断だけで切断面の研磨は行わなかった。以下の拡大画像の中でカッティングマークが斜めに走っているのは御容赦下さい。今日は別の目的で博物館に行ったのです。

実体顕微鏡で表面を観察してみたもの。これを見てヤバイ!と思ってしまった。秩父の親鼻橋だったか、あの辺の蛇紋岩露頭の、滑石とダナイトの接触面に似ている

厚み全体の画像

これも厚み全体の拡大図。半分で構造が異なっている事が茶褐色の模様が途切れている事でお判り頂けるかと・・・

緑の美しい部分とその直下の層は、結晶片岩のものと少し似ていると思うが「白い部分」が極端に少ないようだ。

茶褐色の亀裂の充填物の様な部分が途中で途切れてしまう様子を拡大して三田。精密切断機のカッティングマークが斜めに走っているのは御容赦下さい。

弱溶結凝灰岩「芦野石」の採掘跡

時々、平野でのフィールドワーク(と云う程のものでも無いが)から逃れる様に、周辺山地を歩きたくなる。よせば良いのに、北風が冷たいとの天気予報にもめげずに、北の方を目指して早朝に出発。結局、途中の極小地域用の凝灰岩(大田原市佐良土の亀山石)の石切り場は諦めて、久し振りに芦野石の石切り場で、立ち入っても問題無さそうな採掘を終えて久しい場所を数か所歩く事にした。
国道 294 号線で、白河との県境よりは少し南の「白河火砕流堆積物:V1p」分布地区に、適当な場所を見付けたので入ってみた。かなり規模の大きな採掘跡で、カッターの切削痕の残る場所と、バックホーがパワーショベルの爪の痕らしい傷が縦に走る壁面が道路からかなり奥まで続いていた。足元が、バラスで平らに均されていたので、ズリの中からこの採掘場のサンプルは採れなかったが、中々に美しい丁場跡だったので、数枚の画像を御案内します。場所は、道路沿いに「馬頭観音」石碑が建つ場所。

チェーンソウで採掘された壁面

チェーンソウで採掘された高さは約 40 cm

斜めに走る非溶結部。非連続なのでガス抜けパイプかと思ったが、後で観察しようと思ったのにすっかり忘れてしまった。また行くさ!

奥行きはかなり広い。溶結部層が少なくとも三段に分かれてその上が非溶結層だが、妙に白い部分が有ったが、残念ながら時間も無く上には上がれなかった。

チェーンソウでの採掘部と重機の削り跡の境界部

重機の爪痕

上に重なる真っ白な層は、火山ガラスだろうか?気になったが、寒くて時間も無かったので退去

道路沿いの石碑から採掘場の方角を眺めた図。画面の右端ぎりぎりに、大きな石碑の台座の高さにも届かない小さな馬頭観音像が見える。大きな「馬頭観世音」碑の建立は「安政六未(1859)年九月吉日」

2019年4月1日月曜日

凝灰岩「飯岡石」の観察

先日、銚子市と旭市を歩いた際に採取した「飯岡石」の破片サンプルを、博物館の精密切断機で観察用に切り分け、#1,500の研磨材を使って表面を顕微鏡で観察し易い粗さに調整したものを「実体顕微鏡」で観察してみたのでご紹介します。尚、実体顕微鏡では、含まれる火山ガラスは観察出来なかったので、何れ近い内にもう少し高倍率の顕微鏡を使用して観察してみようと思っています。
この石材は基本的には「凝灰岩」だが、産出層準は銚子から旭市に掛けて分布する海成層の「屏風ヶ浦」層に属すので、堆積した火山灰層の中には有孔虫や微小な貝殻や時には海綿骨針等が含まれて石灰質が固結度を高めているらしい。
石灰質と言われる飯岡石に、確認用に希釈した塩酸を一滴落としてやると、最初は気泡が出て来ませんが、数秒たつと小さな泡が出始め段々とその一滴が白く見え始めます。全体から非常に小さな気泡が出ている雰囲気です。
生痕化石、軽石、大形の有孔虫、海綿骨針等を観察してみました。
尚、地質試料の中の「海綿骨針」については例えば、産総研の GSJ 地質ニュースの下記などを参照下さい。結構細長いものの様です。
産総研の地質ニュース,第5巻,8月号,233-234頁。「千葉市の沖積層内湾堆積物から発見された海綿動物化石」 小松原純子 ・宮地良典・伊勢優史
https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol5.no8.pdf

最初の画像は、採取したサンプルの状況。これは前回紹介済。勿論、小さい方の断片。大きなものを持ち帰っても無駄⇒邪魔になるので、観察に必用な最小限度のサンプルを採取する。

切断状況。スケールは最近使用し始めた一本二千円の木製スケール。目盛は「印字」では無くレーザーで細い溝を掘っている。

ごく薄く希釈して安全性を確保した塩酸をサンプル表面に滴下すると、最初は泡が出ないが、時間の経過と共にゆっくりと微細な気泡の発泡量が増えて来て全体に広がる。

その泡の状態を実体顕微鏡で観察したもの。試料とレンズの距離が離れているので、希塩酸の消泡時の飛沫が飛んでもしっかりと安全。

生痕化石。これで大まかな直径(横方向)は4.5 mm 程度。但し、生痕化石は画面に直角では無い事が試料の両面を目視すると判るので、本来は 3.5 mm 程度の円型なのでしょう。

軽石も当然の如く含まれています。背景に在る円弧状のものが、火山ガラスかどうかは着色して反射光で観察してみようと思っています。以前、博物館で作成した薄片では見事に有孔虫が濃集していました。

大形有孔虫の断面。画面の横幅は約 2 mm 程度です。

海綿骨針らしい透明な中空の物質。特徴的な根もとの「矢じり」型の部分は見付かりません。塩酸を滴下してもこの中空部には変化が無いので、恐らく間違い無く「海綿骨針」でしょう。画面の横幅は約 2 mm 程度です。

画面の右上に斜めの断面を観察されます。画面の横幅は約 2 mm 程度です。

GVP 火山活動情報の概要:3月20日 ⇒ 26日

New Activity / Unrest
Bezymianny  | Central Kamchatka  | 300250 | 2882 m
3月15日に溶岩ドームの西側の急成長に伴う強い噴気活動とドームの白熱現象を伴う強力な爆発が発生しましたが、航空カラーコードは3月21日に「イエロー」に引き下げられました。

Tengger Caldera  | Eastern Java  | 263310 | 2329 m
この間、様々な濃度と白から黒までの様々な色の噴煙が火口縁の上空 1.2 km まで上昇し、噴煙は様々な方角に広がりました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”。

Villarrica  | Chile  | 357120 | 2847 m
3月20日の報告に拠れば、溶岩噴泉は火口縁の上空 50 m まで上がっています。地震活動は低調ですが、24日にはストロンボリ式噴火の際に噴石を火口縁の上空 25 m まで噴出しています。

Ongoing Activity
Agung  | Bali (Indonesia)  | 264020 |  2997 m
2日の0018時の噴火は1分47秒間継続した事が地震観測から判明しています。警戒レベルは“1-4”段階の“3”。

桜島:Aira  | Kyushu (Japan)  | 282080 | 1117 m
18-22日の間に、二回の噴火と一回の爆発が南岳火口で観測されました。噴煙は火口縁の上空 1.7 km まで上昇。22-25日の間に小さな噴火が発生し、24日には夜間に火映が観測されています。警戒レベルは“5”段階の“3”

Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 |  1229 m
20-22日と24日に噴煙が高度 2.1-2.4 km に達し様々な方角に広がりました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”。

Ebeko  | Paramushir Island   | 290380 |  1103 m
15,16-19,及び21日の爆発では噴煙が高度 4.5 km に達し降灰が観測されました。航空カラーコードは「オレンジ」

Fuego  | Guatemala  | 342090 |  3763 m
数日前から火山活動が活発化し、現在は毎時15-20回の爆発が発生し、噴煙は山頂の上空 1.3 km に達し、降灰は風下の地域で観測されています。爆発は火口周辺からの岩屑雪崩を惹き起こし、西側、南南西、南西、南、南東の峡谷に流れ下っています。21日の夜から翌早朝には、溶岩噴泉が 350 m  上昇しました。23-26日には爆発は毎時15-25回の頻度で継続し噴煙は 1.2 km 上昇し、周辺地域を揺らし、白熱岩塊は 200-300 m の高さに放出され、岩屑雪崩を惹き起こし、しばしば植生領域に達しました。降灰は 8 km SW, 8 km SW, 12 km SE 等から報告されました。

Ibu  | Halmahera (Indonesia)  | 268030 | 1325 m
少量の火山灰を含む噴煙が高度 2.4 km に達し、午後には火山灰を含む噴煙が 2.1 km に、更に23日には 2.4 km に達しました。警戒レベルは“1-4”段階の“2”

Karymsky  | Eastern Kamchatka | 300130 | 1513 m
17日に火映が衛星画像で観測されましたが、天候に阻まれて目視観測は行われませんでした。航空カラーコードは「オレンジ」

Kilauea  | Hawaiian Islands (USA)  | 332010 | 1222 m
ここ数か月間特段の活動が観測されていないので、航空カラーコードを「グリーン」に引き下げました。

Krakatau  | Indonesia  | 262000 | 813 m
18日ひ6回の爆発が観測され、濃密な白煙が山頂から 500 m 上昇しました。18-24日は天候に阻まれた事も有りそれ以外の噴煙は観測されませんでした。24日早朝に二回の爆発が観測されました。警戒レベルは“1-4”段階の“3”

Manam  | Papua New Guinea  | 251020 | 1807 m
噴煙が連日、高度 4.6 km に達していました。

Merapi  | Central Java  | 263250 |  2910 m
山頂火口の溶岩ドームの成長は継続しています。21日にはその容積は 472,000 m^3 に達したと推定さ、形状変化は観測されていませんが、押し出された溶岩は南東側山腹を落下しています。ブロックアンドアッシュフローは18-19日と23日には、1,500 m を流れ下っています。

Rincon de la Vieja  | Costa Rica  | 345020 | 1916 m
19日に小噴火が発生しました。

Sheveluch  | Central Kamchatka |  300270 |  3283 m
溶岩ドームの熱異常は継続しています。火山灰を含む強い噴気が高度 3.5-4 km まで上昇しています。航空カラーコードは「オレンジ」



諏訪之瀬島  | Ryukyu Islands (Japan)  | 282030 | 796 m
夜間の火映は15-22日の間も継続しています。小噴火が時折観測され、噴煙は火口縁の上空 600 m に達しています。





Turrialba  | Costa Rica  | 345070 |  3340 m
20-22日に噴気が継続し、時折、噴気孔の上空 300 m に達しました。23-26日には、水蒸気中心で僅かにマグマ起源物質が混じる噴気が観測されました。
以上