2021年1月8日金曜日

鋸山の元名石:南側の石切場跡

 鋸山北面の、金谷付近からの山の風景は、かなり広くの方々に知られているが、南側は北側と異なり特別に目立つような姿が無いのでどうやら印象に薄い様だ。金谷側では直近に、今の三浦半島とのフェリーターミナル付近が良港で石材の積み出しに最適であったのと対称に、恐らくは南側が先に石材産業としては成長したにも拘わらず当初は、比較的東側の地区で採掘を始めた事と、明鐘付近に積み出しに適当な場所が無かった為に軽便鉄道を敷設したにも関わらず輸送コストに負けて、今ではその殆どが雑木林に隠れている。2020年の夏の初めに、鋸山の東京湾側で長く石切を行っていた方の後裔の方にお会いして当時の文書綴りを拝見し、お話を伺う機会が有った。今日は、南側の石切場跡の画像を少しご紹介する。

鋸山の南側斜面を勝山辺りの海岸から眺めた画像です。特に目立つランドマークが無いのですが、稜線の中央よりやや左手に白いものが見えるのが、金谷側のロープウエイの山頂駅です。
撮影時期は不明ですが、採掘を行っていた時期の石切場の画像です。垂直に切り立った壁面と黒い口を開けている大きな横穴が採掘場です。白い小さな矢印を入れています。
鋸山の稜線をチェックするとこの画像の部分が雰囲気が似ています。白い斜めの線は、鋸山有料道路のガードレースなので、この有料道路に入れば(歩行禁止)なんとか石切場跡を観察できるかもしれません。
鋸山有料道路の U字カーブの崖縁にある空き地から石切場方向を望遠レンズでチェックすると、二枚目の石切場の所有者から拝見させて頂いた昔の石切場の画像に矢印を置いたのと同じ斜めの形状が確認出来ました。前の画像の有料道路の白い線の端にも同じ形状が見えていました。
良い目印が見付かったので、これを画像の範囲に入れたまま尾根付近まで写るように、望遠のズームを調整して写した画像です。同じ鋸山南面でも、東側が既に木々に隠されてしまったのにも関わらず、西側は幸いにもこの旧崖が幸いして植生が繁茂せず
その姿を留めているのが判りました。
カメラを、目印を捉えたまま、右手に振ると、尾根側よりもフレッシュは壁面が見えます。尾根側は江戸時代の、この新しい部分は明治の後半の石切跡の様です。
望遠ズームを調整して壁面を観察すると、所々に、手掘りの跡が見えます。堆積模様も少し黒黴が生じている部分もありますが、綺麗ですね。
前の画像にも写っているのですが、壁面に気になるものが写っていました。赤でマーキングしていますが、少なくとも 4 筋のクライミングロープが固定されている様です。
目立ったハーケン跡はありませんが、三浦半島の鷹取山ではロッククライミングのトレーニング場となっている部分があり、壁面が凸凹になっています。石切場を保存する立場から言えば、壁面で観察されるラミナや、手掘りの際の段差は石材の大きさや石材を組んだ時のサイズや模様を照合するうえで貴重な試料なのです。鷹取山の二の舞にならない事を切に願っています。