2017年7月8日土曜日

木下貝層の石材利用 (2)  旧山根山不動尊跡

現在は本堂の消失によりその見る影もないが、旧山根不動は江戸時代から「北向き不動尊」として人々の進行を得ていた様だ。堂宇は明治29年に再建されたが平成21年に不審火により焼失している。この不動尊の基壇に木下貝層の固結部切石が使われている。
画像は基壇の正面。階段両脇の部分は残念ながら大谷石で置き換えられている。手前の一対の狛犬は貝層固結部切石の上に鎮座している。

基壇の左手は補修されていて観察出来ないが右手は下図の状態が観察される。

切石の表面は、下図に示す通り、貝化石の間に隙間を保ちながら砂が挟まった状態で固結

狛犬の基壇部分は

また、境内には同じ石材を用いた燈籠も置かれている



燈籠には(ものによるが)かなりみっしりと中身が詰まったものも

  続く

白い凝灰岩を用いた五輪塔 (14)

もう一度、千葉県内に在る白色凝灰岩を用いた五輪塔の観察に行きたいと思いながら、実現出来ない。と云うのも、今現物と向き合っても、細粒の凝灰岩の中の火山ガラスをどの様に確認出来るか?方法が固まっていないので「返り討ち」にあってすごすごと帰って来るしかないからだ。
顕微鏡を使う事の出来る試料の観察では、適正な倍率を探し出せば観察する事が出来る様になったし、インクを凝灰岩に浸透させて乾燥後に撮影すると、インクの浸透領域とガラスの領域がハッキリ画像上の違いとして捉えられる事も判ってきた。
例えば、下の画像の横幅は1.5mm。インクの浸透処理をしない場合とは画質が結構変わる。でも、これはフィールドでの観察時には使えない。



フィールドでデジカメを被写体に出来るだけ近付けて撮影したいのだが、相手は研磨した試料では無いので凹凸が有り、曲面が有りで広い範囲を全てよい状態で写す事は出来ない。デジカメはレンズ前数mmまで近づけられても、照明が旨く行かないので適度の隙間を置いて、出来るだけ白色光を使って写し込むしかないが、試料の火山ガラスの堆積面に平行な破断面でなんとか細粒の火山ガラス片の堆積状態を撮影が出来る様になって来た。
二枚の画像の横幅は5.5 mm。なんとかガラスの破片が観察出来る。



堆積面に直角な破面でもガラスの断片の形状を撮影出来なければ現地に行くか価値は無い。さて、どうしたものやら?

2017年7月3日月曜日

木下貝層の石材利用 (1) ウニの内面の方解石

木下層と云う地層は房総半島の北部に広く分布しており、私の住んでいる柏にも広がっている事が、産総研の5万分の1地質図に書かれている。勿論、私もその木下層の住人である。この木下層には、大量の貝化石が分布していて、特に印西市の木下を中心に石灰化で固結した貝化石層が広く分布している。中には美しい方解石の結晶を見せるものも在る。
木下層の石材の話しに入る前に、一回だけ方解石の結晶画像を御案内します。

たまたま、調査の為にチョット邪魔になった固結体をほんの少し横に移動しようとしたところ、ポロリとこの塊が本体から外れて落っこちてしまった。しまったと思いながら元の位置に嵌めこもうとしたら、この不思議な形状が見えたので埃を拭って良く見ると

薄板状の結晶が二列。ブロック状の結晶がその両サイドに並んでいるのが見えて来た。
この結晶の配列は、化粧が晶出したウニの内面構造に影響されているかもしれないと考えて、後日、別の露頭で同じ仲間のウニの固結していない化石に出会えたので撮影したのが下の画像。

更に拡大すると

なるほど、このウニの内部構造にしっかり方解石の結晶の成長が制御されているのか!
と実に面白い観察をする事が出来た。
木下層内の貝層の細かな観察は今回のみ。次回からは石材としての利用状況と幾つかの露頭をご紹介する。但し、余り交通便利な場所では無い。