2017年4月6日木曜日

銚子砂岩の風景(3) 古記録に残る「畳磯」とは

これは、友人たちに「銚子石」の魅力を御案内する為にFBに投稿したものを、そのまま転載したものです。従って、これまでに銚子砂岩に関して投稿したものと重複する部分があります。画像はクリックして拡大してご覧ください。

 『元禄四年辛未(1691)年六月、今宮村石切共飯沼村地内、畳磯と申所え参、砥石切申に付、飯沼村名主・組頭罷出、諸道具迄押え取上げ、砥山の御請負其節設楽勘左衛門様ご支配に付、飯沼村の者共江戸へ登、勘左衛門様にて今宮村の石切共と対決仕、先規の通被仰付候。従て御地頭様御家老鵜殿助左衛門殿飯沼村の者共御つれ勘左衛門様え御出、双方御聞届け被成候。同年右今宮村と石論の節、設楽勘左衛門様高上村・飯沼村境、浜境共御覧可被成と被仰も難斗由にて高上村へ其段申、両村取替証文本紙名主新兵衛持写、手前に有之候。(「玄蕃先代集」)』
 本来の自分たちの村から外れた場所で、砥石の材料となる砂岩の採掘権を争った喧嘩騒ぎの舞台となったと思われるのが“Yahoo Map”を利用させて頂いた地図の左手の場所。

その干潮時の全景。

明治~昭和の在る時期には観光地にもなり絵葉書にも残るが、現在は大潮の干潮時くらいしか歩いていけない場所になっている。但し、長靴が無いと自由が効かない。小さく見えるが近寄ると結構大きくよじ登るのに苦労する。



たまに釣師が居られて梯子を掛けている事が有るので、一声掛けて利用させて頂くと良い。
 干潮時には割に整った形状の砂岩も観察されるので、石切り跡で間違いないと思われるが、実はここの砂岩は面白い特徴が有って、上に登るとある意味その期待を裏切られる。

声を掛けてご了承を頂き、スケールになって頂いた釣師の面々を入れた畳磯の表面。

以下の画像で判るように花崗岩の様に方状の節理が発達している。前の直角の形状を示す平たい石も、採掘されたものか、自然の節理なのか判ったもんじゃないが、これが「畳磯」の名の由来。岩石ハンマーのスケール有。



 勿論、方形の節理が強いのだが、全てが方形かと云うと中にはこのような不思議な造形を示すものもあって面白い。高神小学校跡地の石垣にこんな形の間知石が使われている。

 尚、この付近の砂浜では、後述予定の長崎鼻や黒生の海岸と異なり、かなり緻密で気泡の少ない古銅輝石安山岩が採取出来る!

光の関係か本来は黒色から灰色のものが多いのだが紫色に見える。
最初の地図の右側の溶岩「千人塚層」については、陸上を流れたものなので溶岩流の下部には赤色酸化したクリンカが存在する事が後述の高橋雅紀氏の報文に記載有。
銚子附近の地質をもう少しキチント知りたい方は、下記等を参照下さい。
千葉県立中央博物館のデジタルミュージアムの下記「房総ジオツアー>銚子・屏風ヶ浦・九十九里浜 地質地形をめぐる」
http://www.chiba-muse.or.jp/…/spe…/geotour/choshi/index.html
GSJ地質ニュース,2016年9月号,東西日本の地質学的境界【第三話】銚子の帰属,高橋雅紀,
https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol5.no9_279-286.pdf
続く

2017年4月3日月曜日

銚子砂岩の風景(2) 砂岩の顔

これは、友人たちに「銚子石」の魅力を御案内する為にFBに投稿したものを、そのまま転載したものです。従って、これまでに銚子砂岩に関して投稿したものと重複する部分があります。画像はクリックして拡大してご覧ください。

 犬吠崎の石切り場周辺の風景を見て頂いたが、一目惚れしそうな銚子石の顔をご紹介する。何れも超の付く美人揃いだ!
 銚子石の中でも、この犬吠崎の砂岩は特に肌理が細かい。浅海性の堆積物との事で基本的に砂泥互層なのだが、採掘されたのは比較的砂岩の層が厚い部分。

砂岩は房州石等の凝灰岩と異なり、基本的には安山岩などの採掘と同様に「矢」を使うので、この様に「矢穴」の加工から採掘が始まる。

矢穴の跡が残る切断面。大佐倉の旧浜宿河岸の元廻船問屋を営んで居られた旧家の石垣にもこの形状が有り直ぐに気付く事が出来た。(正面から撮影したら凹凸が少なくて矢穴が良く見えないのでもう一度出直す予定)

 浅い海での堆積と云う事から、砂泥互層の部分には「漣痕」が残る事が多く、干潮時の燈台下では容易に観察可能だが足場が悪いので注意が必要。

漣痕と共に、底生生物の生痕化石も観察される事が有る。

比較的大きな岩塊表面では、斜交層理を観察出来出来る事も多い。

また下図はスケールの置かれた上下でラミナの方向が変化している様に見えるが、断面の方向が異なる為でしょう。このような堆積構造は、少し風化したものが見易い。

 断層も幾重にも在るが、時にはこの様に興味深い判断面も観察される。かなり硬い部分だと思われる。

硬いと云えば、崖の表面にこの様に飛び出した部分を観察する事が有るが、これはおそらく石灰化等でやや硬くなったノジュールでしょう。偶にこの中に化石が含まれている事がある。このケースでは恐らく水の通り道の周辺が石灰化しているものでしょう。

タフォニーと呼ばれる風化が描き出す顔。透かし彫りの欄間の様で面白い。 

次回は「畳磯」