2015年8月21日金曜日

神社に使われる石灰質凝灰岩 (1) 春日部市粕壁 神明社の境界石

調査の為にある地域を歩く時は出来るだけ路地一本でも同じ道は歩かない様に注意して出来るだけ広い地域を舐めるように歩く事にしている。春日部は何度か歩いて居たのだが。まさかこんなに駅に近く、小さな郷社が駅の近くに残り、しかも歴史的な石材までが現存しているとは思わなかったので、現場を観て驚いた。
最近、静岡県分会材調査報告書 第66集 「伊豆半島の石丁場遺跡」と言う、静岡県教育委員会が発行した報告書を閲覧する機会が在った。これは、伊豆半島産の硬石と軟石の両方の資料なのだが、第三章 分布調査の成果、第二節 凝灰岩系石材の調査 (4)伊豆半島南海岸の状況,下田地域にこの様な記載が有る。「(下田地域は)南伊豆地域の凝灰岩系石材の主要生産地の一つで、沿岸部や河川周辺と、町や集落の周辺、それに接する山中でも採掘された。一方で集落から離れた標高三百メートル近い丘陵頂上部付近にも営まれた例もあり分布状況は単純でない。また、小規模な遺構も多く、数の把握が難しい。 ①白浜 下田市白浜の長田,原田,板戸に所在するが規模は大きくない。白浜神社(伊古奈比め命神社)のある三釜海岸で採石された石材は黄褐色の軽石凝灰岩で、神社の基礎石に利用された。(83頁、以下略)」
石灰質凝灰岩の分布と、神社での用例を基に調査して来た事が産地での調査文献と旨く合致してくれた次第です。神社の成立年代はこの程度の資料しかないので(失礼!)論文には出来ない。
神社はビルに囲まれた一角にあります。やや明るい石材は、後世に追加された花崗岩。
風化に耐えて意外とよく残っています。
拝殿の裏手にも

本殿を囲む板塀の礎石にも用いられています。
貝化石の例です。種類は判りませんが右側に1mm単位のスケールを置いています。