2016年2月6日土曜日

石射太郎山の石切場と石材:高宕石 (3/3)

展示用に頂いてきた高宕石を丁寧に洗浄して(私がやったのでは無いが)乾燥したら、良い顔つきが現れて来たので御紹介。石材のサイズは幅24cm,長さ64cm,厚み15cm。重量は60kg程度かな?


部分的に拡大して観ると、

その一部をまた横幅70mmで切り出してみると

これはまた別の部分の拡大


高宕石のご紹介はここまで、次回はこの地域で高宕石と勢力を争った(?)七里川石。
これは現在の七里川温泉の南で採掘されていた石材で、仏塔や祠に加工されていたらしい。

2016年2月2日火曜日

石射太郎山の石切場と石材 (2)

石切場は、ガレ場より標高の高い部分に尾根の両側に数多く分布しているが、不用心に歩くと突然がけっぷちに出会って落下の危険が有るので、「探検」気分で歩かれるのはお勧めしない。崖の高さはレーザーで測定してみると殆ど10m以上の高さが有る。落下すると下には石材の破損したものが散乱しているので大怪我をするのは間違いない。更に、今の時期はそれでもマムシの危険は少ないだろうが、凝灰岩系の石切場は湿っていて蛙が居るので、これを狙ってマムシなどが居る事が多い。

ここの岩石には、貝砂が多く含まれている事(貝化石として採集するほど大きなものは殆ど無い)、場所によっては貝殻が溶けてそのパターンが残っている事も多い。また光沢のある泥岩の偽礫が含まれている事、硬い部分は石灰質で希塩酸に反応して炭酸ガスの泡が出る事、層理がはっきりしない(遠くから見ると判るが、壁面で走向・傾斜を測定するのは結構面倒だ)その他・・・・
礫は中央の様に妙に光沢が有る。硬い礫は海岸の打ち寄せる波で磨かれて光沢が出る事が有るが、これは光沢が在り過ぎる。硬いのかと思うと、左の様に簡単に割れてしまう。泥岩偽礫。

貝化石の溶食による「抜け殻」

帰途に、この石材を使用した石垣を観察。やはり貝殻が目立ち、無層理に見えるのが面白い。

採集して来た小岩片の表面。貝殻の抜け殻が見える。砂を囲んでいる白いものは石灰分が多い。
スケールは1mm刻み。木製のスケールは妙に光らないのが嬉しい。

こちらは薄くて名刺サイズの「クラックスケール」を写し込んだもの。刻みは0.5mm。安価で手軽。上の画像のもう少し上の部分を撮影、この貝殻は良く判らない。カメラを三脚で建ててスケールは手持ち。スケールが薄いので被写界深度が撮れなくてもそれなりにスケールを写し込めるのが便利。

この画像の中央部に面白いものが有る、但し、小生は化石に興味と知識が無いので正体は不明。


上の画像は4912x3264ピクセルで撮影したものを、1280x851ピクセルに縮小した画像。画像データは約18分の一に。下の画像は元画像の中心部を横1280ピクセルでトリミングしたもの。ある程度のデジカメが有ればこの程度の「顕微鏡」的機能は十分に果たせる。

持ち帰った岩片の全体像。薄くて硬い。これは裏側。

2016年2月1日月曜日

石射太郎山の石切場と石材 (1)

鋸山や売津等と同じ黒滝層(竹岡層)の石材なので一応「房州石」で括る事に問題は無いだろうが、この石材は非常に硬いのに、搬出が難しく千葉県から外に出る事は無かったようだ。
石射太郎山には、石切場が我々が観察しただけでも十か所を越える。
ここでは石切場の様子と石材の観察画像を御紹介したい。

登山道を登り始めると直ぐにこのガレ場に差し掛かる。これはどうやら石切場から排出されたズリらしい。この上から石切場が始まる。石切場は表層の風化部を避けて上から下に切り下し、採掘場所が地表から外れると狭い搬出路を削りだすので、奥から見るとこのように見える。

壁面の状況

切削痕を拡大すると

この丁場は、搬出路が急傾斜で険しいので、人の背で搬出した為に、半製品まで加工して重量を軽減したと思われる。これは祠の屋根の部分の半製品。