2018年6月8日金曜日

凝灰岩を用いた鳥居に懸る扁額

6月2日に開催された埼玉スリバチ学会の見沼東縁のFWで観察する機会を得た様々な物の中に、気になるものが幾つかあって今日(6/8)はそのごく一部の復習をしに歩いてみた。
浦和学院高校に近い丘陵地に「天満宮」があり、菅原道真が祀られているのだが、この神社の扁額が伊豆の凝灰岩製に思えてならなかった。

上の画像がその扁額の全体像。鳥居が低いのでギリギリ手が届いたので、スケールを置いて部分的に撮影したのが下の二枚。背伸びしたのでボケてしまった。

明らかに伊豆の石工さんの言う彫刻し易い「みどり」が使われている。但し、かなり粒子が細かいものが使われている。
同じ石材でも少し粗いものは燈籠等にも使われていて下図がその例。
残り二枚は、2月に草加宿の神社で氏子総代さんに観察させて頂いた拝殿内に保管されていた扁額の部分図。緑色が濃く、艶が在るので、風化した石材ばかり観察する事の多い私は、最初は別の石材かと思ったのだが下の画像で粒状の組織が有るのに気付いてやっと何時も見慣れた凝灰岩の「風化前の状態」である事に気付いた次第。


最近は、色の濃い扁額は出来るだけ望遠レンズを使ってでも詳細の撮影をするように心掛けている。最後の画像は最近、越谷市新川町の丸の内稲荷神社の扁額で少し風化で失われてはいるが細かな細工が施されていて興味深い。

以上

この狛犬を造った石工は誰?

今日は珍しく医者通いが午前中に病院を出る事が出来たので、先日の埼玉スリバチ学会FWの復習をする事にして、浦和学院高校付近の神社を四か所訪問した。改修されて古い石材は全く無かった厳島神社の代わりに、足立神社まで足を伸ばしてみた処、伊豆の緑色凝灰岩を用いた懐かしい顔つきの狛犬に巡り合った。








草加市の東福寺にある開かずの扉を持つ石塔に刻まれた狛犬の顔が連想される狛犬だ。残念ながら、台石の部分が三面風化しており、残る一面は拝殿との隙間が狭く、石工の名前や製作時期が刻まれているのか、いないのか?さえも確認出来ない。幸いに拝殿の軒下に置かれている為に、狛犬本体は比較的保存状態は良い。境内にもう一対の狛犬が置かれているがその一方は無残に割れており、これも緑色凝灰岩であることが判り、嘉永二年の刻銘が観察される、境内の他の石造物には天保十年の刻銘が見られるので、いずれにせよ1840年から1850年頃の作品で在ろうと思われるが、何処に住まいした石工なのだろうかと気になる事しきりである。石彫が素晴らしいと思う。
最後の画像が、草加市の東福寺に在る石造物に刻まれた獅子の顔である。

これは青木宗義の子孫である青木石材店の御当主も「これは良いよね!」と仰っていた。
特徴のある狛犬(獅子)の顔なので他にも沢山あるのではないかと思う。探してみたい。

2018年6月7日木曜日

ハワイの溶岩流が覆い尽くした面積は品川区相当

Kīlauea lower East Rift Zone lava flows and fissures, June 6, 12:00 p.m. HST

地図だけ見ていると広い範囲だとは思うものの、身近な場所では無いので大変な事だとは思うものの実感が湧かない。この地図には、これまでに溶岩が覆い尽くした面積が 22.7 sq km と書かれている。これを例えば東京都内の区部で考えると、2010年の統計では品川区が 22.72 平方キロなので丁度全てを覆い尽くされている事に成る。現在は計測方法の変更により 22.84 平方キロメートルと云う値が正しいらしい。

ある統計データの値を引用させて頂くと、広い方から第10位の品川区以下、北区、港区、新宿区、中野区、渋谷区、目黒区、墨田区、豊島区、千代田区、文京区、中央区、
荒川区、台東区は全て単独では勝ち目はない。第18位の墨田区は 13.01 平方キロだから半分にも満たない事に成る。
今日のハワイの溶岩流を紹介するビデオから幾つか画像をキャプチャーしたものを御案内させて頂きます。地図は下記に最新の地図があります。
https://volcanoes.usgs.gov/volcanoes/kilauea/multimedia_maps.html
動画・静止画は何時もの下記。
https://volcanoes.usgs.gov/volcanoes/kilauea/multimedia_chronology.html
引用した画像は“Summit overflight shows Halema‘uma‘u Crater growth”



“UAS hovering over active lava channel helps in estimating flow velocity”



以上

GVP 火山活動情報の概要:5月30日⇒6月5日;13火山

New Activity/Unrest
Fuego | Guatemala | 34090 | Elevation 3763 m:情報量が多いのでかなり要約しています。
報道に拠れば、700℃に達する火砕流は少なくとも 8 km を流れ下り、火山灰や火山礫は 25 km 離れた場所や東に 70 km 離れた首都にも降り積もった。衛星データの解析から、SO2 ガス濃度は1974年の噴火以来の最大値を示し、放出量は1974年の規模よりも二桁多いだろうと思われる。噴火開始後16.5時間が経過後噴火は収まり、最後の火砕流は1845時に記録され、翌日の0725時に地震活動は平常値に戻ったが、噴火は毎時5-7回程度発生し、噴煙が火口から 900 m 上昇した。5日に再び活動が活発化し爆発が毎時 8-10 回の頻度となり、噴煙は 5km 程度上昇。1928時には火砕流が流れ下った。6月6日0630時の報告に拠れば、12,089名が避難し、内 3,319銘が13ヶ所のシェルターに収容された。橋梁一ヶ所と二ヶ所の電力網が損傷し、75名の死亡が確認され192名が未だに行方不明となっている。この火山のGVPサイトは下記(今回の報告も記載されています)
http://volcano.si.edu/volcano.cfm?vn=342090

Kerinci | Indonesia | 261170 | Elevation 3800 m
6月5日少量の火山灰が噴出され、高度 4.3 km に達した。

Kilauea | Hawaiian Islands (USA) | 332010 | Elevation 1222 m
火口壁の崩壊は続いています。SO2ガスの噴出量は減ってはいるが、風下側の大気汚染には十分なインパクトを与える量は維持している。“F 8”からの溶岩噴泉は当所は 80 m に達しペレーの毛髪やその他の火山ガラスが溶岩噴泉から生じている。溶岩流の流量は5月29-30日には毎時 550mに達したが、31日には 90 m に減少した。6月4-5日には溶岩噴泉はやや勢いを減じ最大 55 m になり、6月5日0630時には完全に“ Kapoho”湾を埋め尽くし従来よりも 1.1 km 先に新しい海岸線を構築した。
⇒詳細はHVO/USGSのサイト“Multimedia links for Hawaiian Volcanoes”を参照下さい。
https://volcanoes.usgs.gov/observatories/hvo/hvo_multimedia.html



Merapi | Central Java (Indonesia) | 263250 | Elevation 2910 m
6月1日0820時に噴火が発生し火口縁の上空 6 km まで噴煙が達した。この日遅く、2024時には一分半継続する噴火が発生し噴煙は火口縁の上空 3 km まで上昇。2100時には同様に 1 km 上昇した。警戒レベルは“1-4”段階の“2”

Ongoing Activity
Aira 桜島 | Kyushu (Japan) | 282080 | Elevation 1117 m
この一週間に南岳火口で12回の噴火が発生。

Dukono | Halmahera (Indonesia) | 268010 | Elevation 1229 m
この間噴煙は高度 1.4-2.1 km まで上昇した。

Klyuchevskoy | Central Kamchatka (Russia) | 300260 | Elevation 4754 m
5月25と28日に熱異常が観測された。

Piton de la Fournaise | Reunion Island (France) | 233020 | Elevation 2632 m
5月29日の観測では主火砕丘はおよそ 22-25 m の高さで、直径 5m。小規模な崩落が発生している。火口から火山ガスの噴出は継続しているが、4月27日に始まった噴火は6月1日の報告では収束したいと公表しました。

Sabancaya | Peru | 354006 | Elevation 5960 m
活動状況は前の週と同様で、連日平均28回の噴火が発生している。火山灰を含む火山ガスの噴煙は火口縁の上空 4.3 km まで上昇しており、亜硫酸ガスの噴出量は日量で 5,571トン。

San Miguel | El Salvador | 343100 | Elevation 2130 m
5月22日に始まった低周波と高周波地震が急激に増え、RSAM値は平常値の50-150だが、 142-176 の間を示している。5月30日には小型の噴煙を観測した。

Sheveluch | Central Kamchatka (Russia) | 300270 | Elevation 3283 m
5月31日に弱い熱異常が観測された。

Suwanosejima 諏訪之瀬島 | Ryukyu Islands (Japan) | 282030 | Elevation 796 m
6月2日に衛星画像で噴火が確認された。

Yasur | Vanuatu | 257100 | Elevation 361 m
6月5-6日に間歇的に高度 1.5 km に達するような弱い噴煙が観測されたが衛星画像では火山灰は確認されていない。
以上
ご紹介するライブカメラ画像等は以下の通りです。
尚、GVPの火山活動情報は出来るだけ公表後の早い時間帯にお届けするようにして参りましたが、次週から暫くの間、不定期の勤務に就く事となりましたので、 1~2日程度遅れての御案内になる可能性が在ります。
“霧島山系硫黄山”,

“薩摩硫黄島”,

“十勝岳”

2018年6月6日水曜日

さいたま市見沼区片柳:見沼東縁FW

さいたま市見沼区片柳:見沼東縁
先日開催された「埼玉スリバチ学会」のFWに参加させて頂き、片柳からスタートして見沼東縁の地形と歴史的建築物を観察させて頂いた。西側は既に歩いていたが此方は初めてだった。何時もなら、直ぐに同じコースを復習の為に歩くのだが、少々多忙な日々を過ごしている為に行けないでいる。
土曜日の画像をチェックしていて思った事は、伊豆軟石(凝灰岩)を利用した石造物の分布の濃さだ。
最初の画像は土曜日の午前8時半頃、越谷市内の小さな神社の境内で撮影した石祠の一部拡大図。グリーンの粒状の基質の間に、茶色と小さな黒い岩片が分布している。茶色の岩片は細かな気泡が観察される。黒い砂の様な岩片も気泡が在る。

二枚目は、FWの最初のポイントである。「見沼クラシック館」の安政四(1857)年竣工の旧坂東家の建物。

建物の縁側の束石の拡大図。粒度は異なるが同じ様な茶色の岩石が含まれている。



次に向かった「三崎稲荷大明神」の境内ではこの様に燈籠が無残な姿になって居た。これは。軸(棹)と火袋に緑色凝灰岩を使ったからに他ならない。勿論、雨を防げばもっと長期間に亘って美しい姿を残せた事は間違いないのが残念。



最後の画像は僅かに残った棹の部分の接写。実は三か所の石材はどれも同じ種類の石材でした。

この処、行動費を稼ぐ為に炎天下でトンネルの現場に持ち込む機械装置の整備点検のアルバイトでくたくたになってしまった。毎月、FWの交通費だけでも「2万円超」は年金生活者には結構大きな負担なので、楽しいFWを続ける為に、幸いにもオファーを頂いたので不定期ながら再就職をする事になりました。少し、FWに裂く時間は減るけれど、チョイト難しそうな仕事にもう少し挑戦してみようと思う今日この頃です。

下田市恵比須島の風景 (3/3)

恵比須島は、此処だけ単独に歩いても興味深い場所ですが、爪木崎からの遊歩道も途中に細間島と云うこれも石材を採掘した跡が綺麗に残っている場所も有り、少々風変わりな凝灰岩の観察露頭も有り、私は柿崎付近に次いで大好きな場所でもあります。
荒々しい崖を造る火山噴火の痕跡。



遊歩道の奥の右側に前に御案内したっ巨大な岩塊があります

砂岩のラミナ等です。





砂層がぐちゃぐちゃに折れ曲がっています

下の画像はこの恵比須島では無く、須崎半島から下田の街中に戻る途中の弁天島で観察される地層です。この地層はこの付近一帯のかなり広い地区に分布していますが、此処が一番楽にアクセスできる場所なので御案内していきたいと思います。

この地層は凝灰質ですが、浅い海のフジツボの欠片とか、紅藻類等の石灰藻の破片などが豊富に含まれていて、かなりしっかりと硬い地層を構成していますが、この地層から採掘される石材は、伊豆の凝灰岩質石材を考える時には実に重要な役割を担っています。
私は、これまでに335ヶ所で伊豆の凝灰岩を観察して来ましたが、この中でも比較的判り易い画像を撮影出来たと思う320箇所について、7種類に石材の特徴を整理し、どの様な用途に使われているかと云う一覧表を造ってみました。同じ場所で複数の石材を使った例も有り、517例が集計されましたがその中の164例はこの弁天島で露頭を観察出来る種類の石材です。しかも、建物の基礎部分に使われている事が多く、普段は我々が観察する事の出来ないものも多いので実際はもっと多いのだろうと考えています。
面白い事に、房総半島では段丘崖の上に建立された神社への参道階段に観察例が多く、埼玉県東部では、建物や石碑類の礎石に観察例が多いのです。埼玉東部ではこの素材の礎石が地上に現われている例も数多く観察されています。

2018年6月4日月曜日

下田市恵比須島の風景 (2) 石切り場の風景

「石切り場」と云うと、房総半島の鋸山の垂直な壁を思い浮かべて下さる方々は多いと思いますが、この恵比須島(恵比寿ではありません)の石切り場は期待を裏切ります。
画像①:は伊豆諸島も眺められる「ブラタモリ」でも見る事が出来た美しい風景ですが、この中にも実は石切り場の風景が隠れています。

画像②:遠くに神子元島が見えますが、前の画像より少し手前を広く写してみました。この画像ならお判り頂けますよね?

画像③:もう少し崖よりを見ると波打ち際よりは石切りによって水溜りになってしまった、直線で仕切られたものが見えます。この頃、この場所では、崖を垂直に切り下す様な
採掘対象の砂岩は存在しなかった、あるいは、その部分は切り尽くしたので、だんだん汀まで四角く切り込んでこれを起して採掘する方法でした。

潮の満ち干によって採掘出来る場所が変わったのですね。④は少し見る位置を変えたものです。やや高い部分にも石切りの跡が残っています。⑤:近付くとこんな雰囲気です。
奈良の法隆寺の金堂や五重の塔の「基壇」には、二上山で採掘された凝灰岩が使われていますが、その採掘跡も水中では有りませんがこの様に周りを記って剥ぎ取りを行っています。房総半島の鋸山でも、山麓の小規模の採掘跡にも、同様な石切り場や時には「土丹」の採掘跡が在ります。

画像⑥:は恐らくタモリさんが(一応、同郷だし、同年齢なので、やはり「さん」を付けます)ご覧になって喜んでおられた場所の近くの露頭です。

画像⑦は砂岩の風化した表面を切り取った画像です。

画像⑧は同じ縮尺になる様に、砂岩の比較的風化が進んでいない場所を切り取ったものです。

と云っても実は二つの画像は同じ石材の直ぐ傍の画像です。
⑨の画像を見て頂いてハンマーの直ぐ上をトリミングしたのが画像⑦.表面が剥がれた部分をトリミングしたのが、図⑧です。

風化に拠り、基質の部分が少し剥がれて、砂礫が表面に浮き出したものと、砂礫がほんの少し顔を出しただけだと、こんなに雰囲気が変わるので、
都市部における石材の観察には、想像力が豊かである事が要求されます。

下田市恵比須島の風景 (1)

ブラタモリの下田編でタモリが訪れた「恵比須島」は海底火山噴火の堆積物が成層した砂岩層と、礫がしっかりと噛み合って処によりオーバーハングしている高い崖を造る部分が複雑に組み合わさった不思議な地層を観察出来る場所です。
幾つかその画像を御案内します。最初の三枚は火山礫を含む砂層が“Z”形に折れ曲がっている例。これは大小沢山有ります。成層後に様々な力を受けて変形したのでしょう。
最初はやや大きめの“Z”

小型ながら挟まれた砂層が微妙に美しい“Z”

小型の“Z”. 画像の下はハンマーです。

礫層と砂層の混じりあった部分。静かな海と噴火が繰り返していたのでしょう。下田付近は、海流が複雑で他にも興味深いラミナを示す石灰質凝灰質砂岩もあります。

面白い割れた礫。この姿勢のまま岩壁にくっ付いています。足場が悪くて接近してスケールを置けませんでしたが、結構な大きさです。

巨大な岩塊が礫層の中に含まれています。左側に私のハンマーを置いています。伊豆半島西側の動画島にはもっと大きな礫が有りますね。

島の入口に積んであった切石。神子元島灯台の内壁に見えていた石材と良く似ていると思いご紹介します。神子元島の灯台の石材は幾つか産地の候補がありましたが、内部のカラー画像が手に入らず、未確認でした。これは風化で表面が凸凹ですが、これが一番よく似た石材だと思われます。外側の塗料が雨水を浸透させないので長期間維持されています。

続く