2017年5月25日木曜日

鬼怒川と旧阿久津河岸 (2) 五十里湖と災害

阿久津河岸から観音橋を越え更に鬼怒川を遡ると、現東武「新高穂駅」附近から流れが北に代わり鬼怒川の流路は渓谷の様相に変わる。

鬼怒川温泉を過ぎると更に渓谷は狭まり、龍王峡の「兎はね」では川幅も僅かに4mとなり、河岸には基底礫岩②らしきものが見えてくる。

 この先には、川治温泉の脱衣場の前をハイキング客が歩き、休息場の窓からは解放感に感動した女性客が湯船を出て自然の姿を晒してしまう広い庭もひろがっていた(流石に現在は変わったと思うが・・)。川治温泉のさらに上流の鬼怒川本流には川治ダム、黒部ダムや川俣ダム等が続き、一方の五十里ダムでは湯西川や男鹿川の支流に続く。
 五十里ダムの湖底に「海跡」と云う地名が有るのに気付いたのは10年程前の事だった(初めて行った時には海尻トンネルから海尻橋を渡って半島状の道路を走っていて現在の整備された道路は無かった)。

手掛かりが無いままに時は過ぎていたが、海跡付近から男鹿川の上流側を眺めるとダム湖は殆ど堆砂で埋まっており、夏場には緑に覆われる事もある。また下流側を観ると山側は図の如く岩峰がそそり立っが右岸側から低い岬が突き出している。





この付近を赤色地図で観ると海跡口の西側に崩壊地形が見えてくる。

江戸時代の天和三(1683)年九月一日、日光を震源とする M7.3 の日光大地震により、西側の葛老山(現標高:1,124m)が大崩落し天然ダムが築かれ河道を閉塞し、現在のダム湖よりも大きな天然の五十里湖を造り、五十里村を水没させてしまった。これにより会津西街道は水没し、氏家宿⇒矢板⇒板室⇒三斗小屋⇒松川宿等を通る会津中街道が開発された。そう云えば三斗小屋から旭岳から甲子温泉に抜ける際の避難小屋の手前だった。人々の話題から、五十里湖が山体崩壊で形成されたダムだという意識が消えたかもしれない(勿論、流路を開削する試みは行われていたが)40年後の享保八(1723)年八月の大雨で五十里湖の天然ダムは決壊(海抜け)し、濁流は下流の村々を襲い、二千数百名が犠牲になったと言われる。勿論、この阿久津河岸付近も大領に流出した土砂に覆われた事であろう。山中の風景にそぐわない「海跡」等、海や湖に関係する地名は他にも例が在る。

下図はこの大洪水で被害を受けた地区の地図の一部。さくら市ミュージアムの阿久津河岸に関する展示から抜粋引用させて頂いた。

続く

下総型板碑の特異例を求めて (3/3)

調査はこれからも息長く続ける予定だが、取敢えず「飯岡石」について少し紹介します。銚子半島から九十九里海岸までの間は屏風浦と云う断崖が続いている。

幾重にも様々な色合いの地層が堆積しているが、この中には当然の事ながら巨大噴火による火山灰層が含まれている。例えば下図は“KG1C”と云う広域テフラで、殆どが細粒の火山ガラスだ。

地層には、透水性の良いものと、不透水性の地層とが有り、中には石灰質の豊富な層も含まれない層も在る。本来なら石灰質が含まれないのに、透水性が良い為に地下水が通過する時に、この火山ガラスに石灰質が沈着して硬い地層を造ってしまったと考えて下さい。
崖は浸食され上に重なる地層は崩壊し崖は後退を続けるが、硬い部分はその地層の下が削られても耐力が持つ間は上の地層を指示し続け、有る大きさで結局崩壊し、硬い地層も海中を漂い、衝突を繰り返し円摩され、再び海流の下流側の飯岡の海岸に打ち上げられる。
此処で採取されたのが下に示す断面形状の板状の石材になる。










採取された石材は例えば飯岡の玉前神社の境内の石垣に使われたり、町場の石塀となって現在も残っている。
飯岡石については、館蔵標本の画像資料を公開しています。産状や顕微鏡画像等も含まれているので参照下さい。千葉県立中央博物館>デジタルミュージアム>房総ジオツアー>岩石標本>犬吠層群>の岩石>飯岡石
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/geotour/choshi/Litho/hyohon14.html
上記のサイトでは有孔虫が含まれた画像が紹介されているが、小型の貝化石なども含まれていて顕微鏡で観察すると面白い

下の画像は飯岡石の小片を実体顕微鏡で観察し、コリメート撮影したもの。これを見れば元は火山ガラスだという事が判る。

板碑としては二つの板碑が非常に良く似通った共通点を持つ事が判明した。あともう少し、同じ性状の石材を使った板碑をもう数例探し出す事と、出来れば飯岡の街中の飯岡石から、板碑に観たのと同じスコリアを検出する作業が残っている。何年かかる事やら・・・取敢えず、銚子方面の板碑を徹底的に探す事から始めよう!

下総型板碑の特異例を求めて (2/3)

板碑と共に宝篋印塔や五輪塔などを探して銚子と旭市飯岡の周辺を走り回る内に、ある廃寺跡にたどり着いた。ここには宝篋印塔が有るという触れ込みで立ち寄ったのだが、たまたま境内に居られた方からは、宝篋印塔は此処じゃないよと、一応立ち寄る予定でいた別の場所をご教示頂いたのだが、念のために境内を確認するとなんと探していた白色の板碑が幾つも有るのです。

銚子市では確認出来なかった板碑の背面に回るとしっかりと生痕化石が観察されます。
しかも、未使用の飯岡石が大小未使用で境内に点在しています。
高さは83cm幅は60cmを測ります。左手は直線的で加工した雰囲気ですね。背面には何も刻まれていません。
しかも、未使用らしい黒雲母片岩までも置かれています。ちょうど半分が陰になって居たので上半分だけ写しましたが高さは100cmです。
また本堂の柱の土台石に同じ飯岡石の大きな石材が使われており直線的に加工された様子がうかがえます。

境内には銚子砂岩を材料にした六角石幢や家形石祠もあります。
飯岡石でも大きなものは海岸で波に円摩される前に掘り取って大きな状態で使っていた時代が有る事が判りました。これはチョットした発見です。

下総型板碑の特異例を求めて (1/3)

武蔵型板碑は緑色片岩の輝きが素人眼に見ても美しいものだが、下総型板碑は日光の下では黒雲母も輝くが今一つ武蔵型に比べると魅力に乏しい。しかも、下総型と云いながら、素材の産地はつくば市平沢附近となると、霞ヶ浦の舟運を介しての物流に興味が惹かれるがなんとなく「地元産じゃないし!」等と思ってしまう。
 5月の初めに素性不明の白い石材が使われた板碑が匝瑳市に有ると云う情報がもたらされて、その素材が群馬県の天神山付近の白い凝灰岩ではないかとする説が出て来た。応安二(1369)年と成れば、群馬との舟運を介した物流に心ときめくが、残念ながら群馬の凝灰岩は馬見岡の露頭を少し観察した事がるだけで殆ど手触りも、舌触りも全く未知の領分なので手が出ない。
先ずは匝瑳市の板碑の例。所々にスコリアと見られる斑紋が点在

斑紋の拡大図:これは「荷重痕」と呼ばれる一種の不等沈下の痕跡だと判明しました。

下図の筋状のものは変成鉱物の「紅柱石」では無く生痕化石と想定されますので訂正します(誤記:背面には紅柱石の結晶が観察されます)

そこで類例が他にも無いか、博物館の所蔵品の岩石に似たものが無いかと調べている内に出て来たのが、旭市飯岡の「飯岡石」説。確かに、雰囲気は似ているが、この石は海岸で円摩された状態で採取される事が常で板碑にするほど平らで大きなものは見た事が無い。(大きな石臼は現存する)
と云う事で、飯岡石を使った板碑を求めて走り回った際の画像をご紹介。
まず、香取市の下総型板碑を念の為に点検。これは全てつくばの黒雲母片岩でした。

背面には紅柱石の結晶が観察されます

段丘崖のヘリを登ったり下ったり。飯岡の海岸を見通せる見広城址からの眺め

龍福寺境内には手掘りトンネルも有るほど、この付近の地質はしっかりとしている
銚子市指定文化財の板碑は飯岡石製で、スコリアの斑紋まで一致。
(続く)

GVP 火山活動情報の概要:5月17日⇒7月23日;22火山

GVPの火山活動情報の概要を御案内します。

Activity for the week of 17 May-23 May 2017 
New Activity/Unrest 
Manam  | Papua New Guinea  | 251020 | Elevation 1807 m
衛星画像等のデータ解析から518-20日の間、火山灰を含む噴煙が高度2.1-2.7 km まで上昇し西ないし北西に広がった事が報告されました。
  
Nishinoshima 西之島 | Japan  | 284096 | Elevation 25 m
⇒海上保安庁海洋情報部発表の「西之島の噴火について(52日観測)」を参照下さい。
  
Poas  | Costa Rica  | 345040 | Elevation 2708 m
火山性微動のレベルは517-21日の間は「低」~「中」規模レベルでしたが22-23日の間は高いレベルでした。強度の小さな長周期地震が519日に観測され、更に幾つかの低周波地震と火山性地震が521-22日に観測されています。噴煙は主に火山ガスと水蒸気からなっていますが、時折、岩塊を含み火口から上空1kmまで噴出します。
  
Sheveluch  | Central Kamchatka (Russia)  | 300270 | Elevation 3283 m
クベルトの報告に拠れば、513-14日に発生した一連の爆発では火山灰を含む噴煙は高度4.5-5 km まで上昇し、南西から南東に広がりました。16日に発生した強力な爆発で発生した火山灰を含む噴煙は高度11kmまで上昇し、東北東に150 km まで広がりました。火砕流は南側山腹を下りました。18日には二回の爆発を観測しました。16日から19日の間の火山灰を含む噴煙は東北東に400 km まで広がりました。航空カラーコードは、513-19日の間は、16日の強い爆発が生じ、カラーコードをレッドに引き上げた数時間の間を除き、オレンジを維持しています。
Ongoing Activity

Aira:桜島  | Kyushu (Japan)  | 282080 | Elevation 1117 m
⇒気象庁の519日発表の週間火山概況、或いは「噴火に関する火山観測報」を参照下さい。
  
Bagana  | Bougainville (Papua New Guinea)  | 255020 | Elevation 1855 m
衛星画像等のデータ解析から520-22日の間、火山灰を含む噴煙が高度2.4 km まで上昇し西に広がった事が報告されました。
  
Bezymianny  | Central Kamchatka (Russia)  | 300250 | Elevation 2882 m
クベルトに拠れば、512-19日の間火山ガスと水蒸気の噴気活動と、衛星画像で連日熱異常が観測されたことが報告されました。航空カラーコードはオレンジです。
  
Bogoslof  | Fox Islands (USA)  | 311300 | Elevation 150 m
5162232時に噴火が始まり73分間継続して終わりました。微量の火山灰が“Nikolski on Umnak Island”村に降りました。この日遅く、その後の活動が観測されないので航空カラーコードはオレンジに引き下げられました。衛星画像でこの噴火により島の北側の形状が変化した事が確認されました。火口湖は北側の海岸線で550 m の幅で裂け、北東側は新しい火山灰で300 m 広がりました。⇒まだ新しい画像は公表されていません。
  
Cleveland  | Chuginadak Island (USA)  | 311240 | Elevation 1730 m
516日の1938時に、短時間の噴火が地震波形と空振の両方で観測されました。地震波形は11分間継続しました。衛星画像では火山灰を含む噴煙が高度 4.6 km まで上昇し南西におよそ5時間ほど広がるのが観測されました。4月から5月に掛けて山頂火口に形成された溶岩ドームは完全に破壊されました。航空カラーコードはオレンジを維持しています。
  
Colima  | Mexico  | 341040 | Elevation 3850 m
19日に、前の週には25回の高周波地震、15回の長周期地震、2.2時間継続した火山性微動、12回の地滑りと3回の弱い噴火が派生した事が報告されました。15-16日の亜硫酸ガスの噴出量は検出限界の日量8.6t/d 以下でした。
  
Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 | Elevation 1229 m
衛星画像等のデータ解析から518-23日の間、火山灰を含む噴煙は高度 2.1-2.4 km に達し様々な方角に広がった事が報告されました。
  
Ebeko  | Paramushir Island (Russia)  | 290380 | Elevation 1103 m
クベルトに拠れば、515日に噴火が発生した事が東に7 km 離れたパラムシル島の“Severo-Kurilsk”の住民により観測されました。火山灰を含む噴煙は高度 2 km に達しましたが、航空カラーコードはオレンジを維持しています。

Ibu  | Halmahera (Indonesia)  | 268030 | Elevation 1325 m
衛星画像の解析から519-20日と23日に、火山灰を含む噴煙が高度 1.5-1.8 km に達し、様々な方角に広がった事が報告されました。

Kambalny  | Southern Kamchatka (Russia)  | 300010 | Elevation 2116 m
519日のクベルトの報告に拠れば、噴火は終わり火山ガスと水蒸気の活動だけが先月観測され、324日に始まった爆発的活動は410日に終了したので、航空カラーコードもグリーンに引き下げられました。
  
Kilauea  | Hawaiian Islands (USA)  | 332010 | Elevation 1222 m
⇒特段の変化無く溶岩湖の活動と61G溶岩流のオーシャンエントリーは続いています。
  
Klyuchevskoy  | Central Kamchatka (Russia)  | 300260 | Elevation 4754 m
衛星画像屋ビデオ画像から、517日に発生した爆発的噴火では発生した火山灰を含む噴煙は高度 6 km に上昇し、北と北東に180 km まで広がりました。弱い熱異常が連日観測されています。航空カラーコードはオレンジを維持しています。
  
Langila  | New Britain (Papua New Guinea)  | 252010 | Elevation 1330 m
衛星画像等のデータ解析から、519日に火山灰を含む噴煙が高度 4.6 km まで上昇し、西南西におよそ170 km まで広がり拡散しました。19-20日の間は火山灰を含む噴煙は高度 1.8 km まで上昇し北から北北西の方角に広がり、23日には、高度2.1 km 3 km まで上昇し北西から南西に広がりました。
  
Piton de la Fournaise  | Reunion Island (France)  |  | Elevation 2632 m
517日の1340時に地震活動がマグマの移動に伴うと思われる急激な地盤変異を伴いながら始まりました。地震活動と地盤変異は“lEnclos Fouqué”カルデラの北東部に集中していました。51811時の航空機からの観測では表面的な活動は観測されませんでしたので、溶岩の噴出を伴わない地割れが生じたものと判断されました。
518日の04時に地震活動は活発化し、深さ2 km 以下の浅い地震の数と、それ以上に深い震源の火山性地震はその後3日間で急速に収まり、18日には40回の浅い震源と22回のより深い震源、19日には18回の浅い震源と22回のより深い震源、20日には7回の浅い震源と9回のより深い震源、21日には8回の浅い震源と1階のより深い震源の地震が観測されました。二酸化炭素ガスの濃度は高い値で、522日の現地調査測量を行った結果と17日の測量結果を突き合わせると変位量は35 cm を超えない範囲でした。23日にはこれらの地震と地盤変異に整合する新しい二ヶ所の噴気地帯が発生した事が報告されました。
⇒下記にカルデラ内の震源地図などがあります。多分フランス語ですが、スクロールして火砕丘からの噴火の画像をクリックすると幻想的な噴火の画像を楽しむことが出来ます。2017131日の噴火画像の様です。似た様が画像がたまにありますがそのままクリックすれば数十枚の画像を見る事が出来るようです。
131日の画像だけを楽しみたい方は下記へ直接どうぞ!ひょっとして前にもご紹介していたらゴメンナサイ!
  
Sabancaya  | Peru  | 354006 | Elevation 5967 m
515-21日の間、火山の活動はそれ以前の活動状態と変わらず活発で連日平均39回の爆発が発生しています。長周期とハイブリッド地震の発生数とその強度は低い値です。火山ガスと水蒸気の噴煙は火口上空 4.2 km 上昇し北東他にに 40 km まで広がっています。“MIROVA”システムは6回の熱異常を捉えています。
  
San Miguel  | El Salvador  | 343100 | Elevation 2130 m
過去24時間を辻手RSAM値はバックグランドが50単位ですが、69から80の間で変動しています。亜硫酸ガスの噴出量も低下し、風の影響で読み取り値が変化しています。
  
Sinabung  | Indonesia  | 261080 | Elevation 2460 m
衛星画像等のデータ解析から517-20日と24日に火山灰を含む噴煙が高度 4.3-8.8 km に達し様々な方角に広がった事が報告されました。また、20日には強い爆発的噴火が発生し火山灰を含む噴煙は4 km 上昇し南東に広がりました。2,038家族(7,214名)が8か所のシェルターに避難し、更に2,863名が難民キャンプで生活しています。警戒レベルは最高値で火山から南南東では半径7km、東南東では半径6km、北北東では半径4km以内が立ち入り禁止です。
  
Turrialba  | Costa Rica  | 345070 | Elevation 3340 m
517-23日の間、「低」~「中規模」の火山性微動が記録されています。18-19日には少数ながら火山性地震や長周期地震が観測され、21-22日には低周波地震と火山性地震が観測されています。17-23日には火山灰の噴出も観測され火口から1km上空まで上昇し、17-18日には南南東に15kmの“El Tapojo and Juan Viñas”で降灰が、19-20日には“Capellades”で降灰と硫黄臭が報告されています。

国内火山の気象庁火山カメラで見る国内火山の噴煙例
霧島連山硫黄山

諏訪之瀬島



俱多楽火山

大雪山

以上