2021年4月10日土曜日

凝灰岩質石材の旅::No.112224-07:越谷市の伊豆石と黒板塀の礎石

 所在地:越谷市越谷本町8-2:非公開旅館(南側の道路沿い)

国土地理院地図座標:35.894365,139.785946

東武線蒲生駅から徒歩:約 750 m

有瀧家の黒板塀から次は河内屋旅館の黒板塀の礎石に「黒板塀」つながりで移動です。今回ご案内する越谷市の四番目になります。河内屋旅館さんは古くからの旅籠の様ですが、現在は瀟洒な普通の旅館になっています。この旅館の南側の路地に面した処に、黒板塀があります。その礎石が道路側から見えるのですが、伊豆の石灰質砂岩と石灰質の小さな礫を挟んだ「小室石」が使われています。

赤丸が黒板塀の位置です。この案内図からは外れていますが、この路地を斜め上(東北)側に行くと旧日光街道に出ますが、出る一つ手前の十字路で左に折れると、大谷石に似た
石材を使った石塀が見えます。似ている様でも、ミソが観察されないのと、大きな空洞や、大きな筋状の模様を見せる軽石が観察されます。大谷より南の鹿沼で採掘された鹿沼石です。石切場は後でその画像をご案内しますが西洋の城塞の様な白亜の砦の様にそびえたっています
路地の眺めはこんな感じです。これが目的地です。この黒板塀の礎石が伊豆から来た石材で二種類あります。
木下半助商店側から路地に入り、板塀の始まる最初の付近に、この様な斜めの模様が浮き出た石材が使われています。これは、何度も出て来た石灰質の生物遺骸が大量に積み重なった石灰質の砂岩です。礎石や基壇に用いられる事の多い石材です。
この一部を拡大するとこんな雰囲気です。乳白色の部分は小さな貝殻等の破片です。白いものは「石灰藻」と言うものが多いらしいのですが、海に生えている「藻」なのになぜか葉の裏に石灰質を貯えている種類の海藻です。
参考に「石灰藻」の画像をご覧頂きましょう。普通に、砂浜などで海藻が溜まっている場所を見ると、これが意外と沢山転がっています。錆びた鉄のものは私の岩石用ハンマーの一部です。赤丸で囲んだ部分は、地質観察会に参加された方々への説明用に、薄めた塩酸を滴下して炭酸ガスの泡が発生しているのを見て頂いたものです。
少し日光街道側に進むと顔付の異なる石材が見えます。少しニキビ面の跡が目立つ石材です。拡大して見ると次の二枚の画像の様な雰囲気です。
少し大きな火山岩の礫が入っていますが、小さな穴が沢山あります。穴は気泡ではなくここに有った砂が周りの石灰質が少し溶けた為に脱落してしまった跡です。
これも同じ石材の表面です。赤~小豆色をはじめとして様々な色合いの小さな砂~礫が入っていますが、その周りに浅い事が判る穴が開いています。前の画像でも説明したようにこれも砂や礫が脱落した跡です。似た様な石材は石灰質を帯びた石材に在りますが、この「小室石」の場合は、赤色を含む多色の礫が含まれているのが特徴です。
日光街道に近い石塀は多分この石山から採掘されたのではないかと想像しています。鹿沼市の深岩と云う場所です。石塀は行けば判りますので写真は省きましょう。さて、次回は千葉県野田市の黒板塀の有る場所をご紹介します。チョット一週間くらい間が空くかもしれません。

凝灰岩質石材の旅::No.112224-06:越谷市の伊豆石と赤玉石

 所在地:越谷市中町 8-2:非公開個人宅

国土地理院地図座標:35.892283,139.786423

東武線蒲生駅から徒歩:約 500 m

越谷市郷土研究会のお膝元を訪ねて三回目は、一番駅(東武スカイツリーライン:越谷駅)に近い観察ポイントです。丁度、Y字型の分岐点の両側に低い石垣が積まれており左手は道路沿いに花壇が地域の方々の手で整備されています。この花壇の周囲に置かれた切り石が、伊豆の下田付近から運ばれて来た「伊豆軟石」です。「木下半助商店」さんや「塗師 小泉家」さんで観察された「石灰質砂岩」と少し硬い「含礫緑色凝灰岩」と言う石材が使われています。中には一棟のマンションが建っていますが元々は「有瀧家」の敷地の様です。有瀧家からは有名な植物学者が出ていますので、以前は専用の植物園も有ったと聞きます。右手に延びる黒板塀に沿って歩くと旧日光街道との交差点の手前に有瀧家のご自宅があります。右手の道路沿いに赤い点を置いているのは、外からは見えないけれど、この黒板塀の礎石の部分には伊豆の石材が使われているからです。

旧日光街道との交差点付近に緑色で塗っているのは、この付近に数個の「赤玉石」が庭石として置かれているからです。残念ながらつるつるに磨かれています。

赤い丸が次の画像の分岐の部分です。緑の丸葉この付近の石材の見所。旧日光街道との角に緑を塗ったのは、ここもチョットご覧頂こうかと思った場所。
赤線は、伊豆の石灰質の砂岩と、角礫を含む緑色凝灰岩の低い石垣の有る処。赤の点線は、見えないけれど、この部分にも細粒の緑色凝灰岩が隠れている処。表面のモルタルが剥がれると見えるかも知れませんが、剥がしちゃいけませんぜ!
東武の駅からほんの 500 m 程度の位置にこのY字の交差点があります。石垣に使われているのは大部分が伊豆から運ばれて来た石材です。
左手の少し奥の方の 越谷市史て天然記念物「有瀧家のタブノキ」の説明版が建って居る辺りです。花壇の縁石にはやや太い白い筋が観察されます。この石材が木下半助商店さんや
小泉家の左手に使われていた石灰質の小さな化石の集まった「石灰質砂岩」の石材です。石材の表面は少し黴が生えていて黒ずんでいるかもしれません。
 良く探すと石材の表面が薄く剥がれて、やや明るい色の内部が見えている部分があるかもしれません。ルーペが有ったらこの様な綺麗な部分を観察してみると真っ白~乳白色の部分が
見えて来る筈です。風化した表面では小さな貝殻の破片の様なものが斜め方向に並んで居るかも知れません。
右手の角の辺りの石垣を見ると(左手より右手の方が少し表面の状態が良いと思います)この様な景色が見えます。汚れてはいますが、淡い緑色が見える筈です。右手に建てているのは 17 cm の木製の定規です。
薄汚れている石材の中で、緑色が観察し易いものを探してみて下さい。この図のように小さな(大きなものもありますが)角ばった石ころ(礫と言います)が内部に取り込まれているので、ルーペで観察する事がお勧めです。
2015年7月末にこの黒板塀の処を通りかかると、板塀が変形していて礎石が散乱していました。どうやら車が突っ込んだ事故が有ったようです。私じゃありませんよ!
塀が壊れた部分を覗き込むとこんな惨状でした。赤線で囲んだものは細粒の水色~白く見える緑色凝灰岩。緑で囲んだ部分は、Y字路の花壇の部分に使われていた礫混じりの緑色凝灰岩の石垣でした。スミマセンね!こんな時まで観察しちゃって・・・・
有瀧家の角のお庭に置いてある佐渡の赤玉石です。勿論、伊豆半島にもこのような緻密な岩石は有り、「赤玉石」と云うのは佐渡の中の特定の産地から採掘されたものを呼ぶ
ブランドの様なものですが、・・・

2021年4月8日木曜日

凝灰岩質石材の旅::No.112224-05A:越谷市の伊豆石と房州石

 国土地理院地図座標:35.893605,139.786440

東武線蒲生駅から徒歩:約 700 m

図らずも前の投稿から一週間以上が過ぎてしまった。悔しい話だけど、老いは目に見えぬものの徐々に若い頃と同じようにはエネルギーを持ち続ける事が難しい状態になっていく事を実感してしまった一週間が過ぎてしまった。

少々、忙しい数日を過してしまって疲れただけです!愚痴は面白く無いので、本論に入ろう。

前回の木下半助商店さんの道路を挟んで反対側に「塗師 小泉家」が有る。木下半助商店さんの礎石に使われていた伊豆の石灰質の砂岩が、この家では正確にはどういえばよいのか判らないが建物の前面の外構とでもいうのか、建物の正面左側に小さな空間を作っている部分に使われている。また建物の右手の石塀は越谷の三か所の石蔵の石材と似ている様で似ていない部分が有って正直困惑しているが、一応「房州石」と仮置きしている。この石材をご紹介したい。

中央の赤丸が勿論、この「塗師 小泉家」の建物。周囲の緑の丸は、石材として興味深い場所。勿論、木下半助商店さんも含まれている。
建物の正面の画像です。図の左手の低い石塀で囲まれた部分と、右手の石塀にご注目頂きたい。
左手の一部木造部を含む部分の画像です。低い石塀の笠石(一番上の石)は、緑色凝灰岩も混じっているが、肌色の石材の部分は、木下半助商店さんの土間で観察される石材と同じものが使われています。本来ならば強い石材なのですが、乗り越えて来た昭和の時代には「酸性雨」も有りましたので、この石材を強く・硬くしていた石灰質が溶かされてしまって風化が進み始めています。
擬宝珠の様な加工をしているこの石材も、同じく石灰質の砂岩です。
周辺に風化剥離した岩片が幾つか散っていましたので、そっと拾い上げて、写真を撮らせて頂きました。勿論、直ぐに元に戻しておきましたよ。白いのは石灰質の海藻(石灰藻)やフジツボなどの破片で、茶や黒いのは火山灰起源砂などです。
右手の石塀の一部です。房州石に似た伊豆の凝灰岩なのか、本物の房州石か?意見は分かれる処ですが、私は房州石で良いと思っています。次の画像も石塀の別の部分の拡大図です。
一軒の屋敷に、房州石と伊豆の軟石を使う事は変だと思われる方も居られるかもしれませんが、時間軸を考慮に入れれば石材産地の異同はあまり大きな問題にはならないと思っています。
石塀には両開きの鉄扉が穿たれています。私がこの石塀を「房州石」としたのは、もし、伊豆の凝灰岩を石塀に使っていたら、この扉の枠は緑色凝灰岩を使う筈だから
白い安山岩系統の石材を使っているので「房州石」の可能性が高いと判断した事も有ります。房州石の構造物では、芦野石やそれ以外の石材が開口部の枠などに使われる例が多いのです。枠の水平部分には波型の飾りが加工されていますが、この部分は表面が比較的平らなので石材を観察し易くなっていますので接写して見ました。安山岩かもしれませんが恐らく凝灰岩でしょう。産地は不詳です。画像の横幅は 45 mm です。