2015年10月24日土曜日

稲田石と真壁石 (1)  旧 [石の百年館」

このブログでは花崗岩は岡山の武田石材さんの「さくらみかげ」だけを御紹介していたのだが、この処、様々な理由が在って稲田石と真壁石の産地を何度か歩いて居る事も在り、この際、国産石材に拘って関東地方で花崗岩を採掘し加工しておられる稲田と真壁の石材業者さんの事を御紹介しようと考えました。
最初は、現在は稲田での採掘から手を引かれた様だけれど、株式会社タカタさんが解説した「石の百年館」の事から始めましょう。現在はJR稲田駅横に新しく設立された(2014年)石の百年館が展示品を引き継いでいます。これはデジカメを使い始めたばかりの2009年の撮影。
 石の百年館の姿。現在のものよりは広かった様に思う。この画像に見える石材の一部は現在の建物にも引き継がれている。
 稲田では直ぐ近くに石灰岩の小岩体や泥岩のホルンフェルスを採掘している現場が有る。上は泥岩のペンダントロックとの接触部で、泥岩の割目に花崗岩が入り込んで黒雲母などが生じている様子が判る。この標本は現在は屋外展示されている。
 晶洞性ペグマタイト標本:稲田花崗岩ではあまり大きな晶洞が観られるケースは無い様ですが、これは岐阜県恵那市産出の標本。この地方では中に人が入れる程の晶洞が稀に産出する事が有るらしい。様々な自形結晶が大きく成長しています。この標本は現在は屋内展示されている。
 石灰岩との接触部に生じたスカルン鉱物の例です。下の画像はペグマタイト。

国産石材だけでは無いが、11月1-3日の間、笠間芸術の森公園で笠間ストーンフェスティバルが
開催される。興味のある方は下記を参照下さい。



2015年10月22日木曜日

仮称 茂木石 (14) 一番悩んだ石材 稲田町の造り酒屋さんの石蔵

稲田の街を歩いていて一番迷ったのがこの石蔵の石材でした。淡い緑色が見えたのでグリンタフ系と思ったのですが、少なくとも大谷石ではないが、となると、伊豆石なのだろうか?
開業が明治元年なのでその時にこの蔵を建てて居れば伊豆石の可能性が高いけれど、主屋同様に大正年間であれば、茂木石の可能性が高い。
石材の表面加工が小さな穴を多数明けた、名前は今出て来ないが、この仕上げは石材の顔を見分けにくいのです。取敢えず、茂木石のラストにこの石材を御紹介しておきましょう。
目地の状況からみてやはり大正でしょうか?但し、部分的に大谷石で置き換えているので最初の建設年代は想像し難いですね。







2015年10月20日火曜日

仮称 茂木石 (13) 国道沿い,那珂川に近い石蔵

茂木を通る国道を東に走り、間もなく那珂川と言うゆっくり左にカーブしながら下る坂道の途中にこの石蔵は存在しています。この石蔵があるお宅では、他の建物の礎石にも同様の石材を使っています。

 上の石材の一部をトリミングして石材の表面状態を見易く拡大しました。画像は圧縮せずに横幅1280ピクセルで切り出しています。

 同様に上の石材とその下の画像の石材の一部の岩片が含まれる辺りを矢張り横幅1280ピクセルで切り出しました。

 同じ石材でも、日照や仕上げの程度で質感は全く変わります。

 下の画像は同じ手法で上の画像からトリミングしたものです。

2015年10月19日月曜日

仮称 茂木石の蔵 (12)  茂木市内 駐車場の隣

これは茂木市内の或る駐車場に隣接した石蔵でかなり規模は大きい。この石蔵は幾つかに別けて建設された様で 接合部分の石材の組合せに苦労した様子が判る。また石材のバラつきが大きく、やや泥質の風化に弱いらしい石材も混じっている。
大谷石製の帝国ホテルが震災に強かったのは、大谷石の強さも在っただろうが、あのような有楽町層の上に重たいビルを築く際の「基礎」の組み方が優秀だったからに外ならない。この倉庫も最初から一体で建築して居れば接合部での不具合は発生しなかったかもしれない。
この石蔵では、茂木石の岩相の多様性を見て頂きたいと考えて画像を選択しました。




サンプルを取って薄片を造ったり、高価な分析機器を用いて構成鉱物の元素構成比率を調べる等の方法を採る事の出来ないこの様な調査では、出来ればその丁場で、丁場が特定できない場合は出来るだけその産地に近い場所で建築物に使われた石材を目視観測し、特徴を把握し、画像集を作製して行くしかありません。それにもし丁場が確認出来てその岩相を見る事が出来ても、実はそこは既に「石材として」採掘に適しないものしか残っていない可能性もあるのです。


2015年10月18日日曜日

第7回 金谷 石のまちシンポジューム のご案内 11月28日開催

11月28日(土)に千葉県富津市の金谷駅前のコミュニティセンター(改札を出て左手)に於いて開催される「第7回 金谷 石のまちシンポジューム」のポスターを甲府城のサイトから勝手に頂いて来ましたのでご案内します。
これって、公式ポスターなのかな?
時間は12時開場、シンポジュームは1300-1600.演題は
房州石の地質学的・岩石学的特徴について : 千葉県立中央博物館 高橋直樹主任研究員
東京の地元産石材・伊奈石と伊奈石の会の活動をめぐって : 伊奈石の会 内山孝夫氏
幕末の台場建設と石材調達 : 横須賀市史編纂室 神谷大介氏
売津石を調べよう : 富津市立天神山小学校の児童のみなさん
(上総湊駅南側の売津地区にも房州石の石切場が多数存在し、児童生徒の観察会や教諭・教師のみなさんの観察会等が売津石丁場保存会の皆さんのサポートで開催されています)
翌日29日(日)の午前中は石切場観察ツアーが開催されます。千葉中央博の高橋先生も同行予定です。

仮称 茂木石 (11) 長屋門に使われた石材   訂正:芦沼石

20151109追記:久し振りにこの長屋門を訪問。今回は御主人にお許しを頂き内部も撮影させて頂いた。その際に棟札が墨痕鮮やかに保存されていて、この長屋門が11月末で建築後105年を迎える「芦沼石」を用いたものである事が判明した。大工棟梁は大関藤吉氏、石工は七井村七井の鈴木作次郎氏である。
尚、芦沼石は現在の益子町大字小宅付近に産出された茂木石と同類(中川層群茂木層)の石材です。従って、この茂木石の項にそのまま置く事にします。
 真岡から益子に向う道すがら芦沼石をふんだんに用いた長屋門に出会った、建築年代は不明だが状態は大変に良い。悪い癖で、表に人が出て居れば気楽に声を掛けられるのだが、玄関で呼び掛けて案内を乞うのはどうも苦手である。次回この付近を回った時は確認しようと思っている。
窓の部分を良く見ると窓の柱を除き上の屋根の部分と下の桟については、通常の尺三(30cm x 30cm x 90cm)の石材より幅広の素材から削りだしている事が判る。壁の厚みも、通常は一尺よりは五寸幅が多いのだが、これはしっかりと一寸幅で積んでいる。また、下図の様にこぶ出しをした石材(建物の下側に用いている)は素材の厚みは一尺二寸程度から加工している。
上の画像の右上隅をの岩片部分を拡大。含まれる礫の中に黒色で周辺に水和した風化層か、急冷縁を持つガラス質なのか判断出来ない黒色岩片も含まれて居る。この付近は玄武岩もある様なので判断が難しいですね。




最近の私の仕事:2015年10月

70歳になった私は週に2日程度、千葉県と埼玉県内の歴史的な商家や民家の有りそうな町を歩いたり、山野をあるいて主として歴史的凝灰岩質石材の調査を行っています。町並を歩く時の観察の主題は明治大正時代の建築物の礎石に使われている凝灰岩です。
数年前から調べた事を整理して様々な石材に関する資料を写真を豊富に使った報告書にまとめていますが、学会等には所属していないので、もっぱら、博物館に登録している「市民研究員」としての作業実績として提出しています。これまで作製した報告書は以下のタイトルです。こんな調査を行いながら、撮りためた画像をこのブログで紹介しています。

房州石関係
古墳に用いられた富津磯石  旧松戸宿界隈の石積  売津・居作越丁場(上総湊)  上総湊・売津瀧の谷丁場  那古・船形崖観音丁場  両国式守邸・塀の房州石  勝浦市・松部石と鵜原石  館山市内の小さな蔵と伊豆石石蔵  博物館近くの房州石  房州石画像集  天神山売津丁場観察会資料集  葉山町・日陰茶屋石蔵  藤沢市内田商店石蔵  元名川・汐止橋  千葉市寒川の石蔵  保田の元名石建築物  房総の村保存古民家の房州石礎石  行徳の房州石石蔵二棟  白浜市旧銅御殿の石塀  かまど石に使われた関石丁場  旧越谷宿・房州石と伊豆石    飯岡石石灰質凝灰岩   上総湊綾之谷不入斗石丁場  

伊豆石(軟石)・凝灰岩質石材
室岩堂丁場と堂ヶ島凝灰岩  佐倉市旧平井家と麻賀多神社の伊豆石  粕壁の石蔵礎石  旧鳩ヶ谷宿の伊豆石石蔵  伊豆石画像集  千代田区番町の伊豆石  文献に見る伊豆石の産地  足利市旧今井医院の石塀   船橋大神宮の石垣  隅田川牛嶋神社伊豆石石塀  水戸街道土浦宿の伊豆石  観音崎砲台に用いられた伊豆石  

関東地方の凝灰岩質石材
岩舟石と川島健三郎氏  徳次郎の大谷石  横須賀・浦賀地区の凝灰岩質石材を用いた建築  宇都宮市松ヶ峰教会  長谷の鎌倉石石垣  浜諸磯の黒色石材採掘跡  旧岩槻宿の伊豆石礎石  佐島石  神武寺と鷹取山の石丁場  黒崎鼻のピンク軽石凝灰岩  君津の社寺で階段石等二用いられた石材

凝灰岩全般
凝灰岩質石材リスト・文献目録  宮城 秋保石の観察  山形 高畠石:凝灰角礫岩  凝灰岩画像集  旧新橋駅復元駅舎に用いられた札幌軟石  宮城県野蒜石  

歴史的建築石材
銚子石・銚子産砂岩  白浜町長尾川の眺尾橋  

地学全般
戦後高等学校地学教科書の中の死火山  軽石の気孔  さくら御影万成石  黒生瓦(銚子の地質)  枕状溶岩資料集・文献リスト