2020年7月21日火曜日

岩石と地層の表情:084;大磯の礫混じり白色凝灰岩:中丸石

大磯には地産地消の凝灰岩質石材として「高麗石」・「中丸石」・「かまど石(二宮町)」等が知られているが、この中で白色で火山岩砂礫の含有量に大きなバラつきがある「中丸石」についてご紹介する。
この中丸石は西湘バイパスを挟んで葛川の河口部に石材の採掘跡が現存しているが(海岸側は時に海砂で覆われる)、この付近の露頭ではかなり粗粒で白色の凝灰質の比率が少なく、この岩石を用いた例としては大磯町立図書館のモニュメントに残るだけでしかない。市内で多く観察出来る白色系としては駅近くの切通で観察出来る白色凝灰質が優勢で砂礫サイズのスコリアと岩片が少量含まれる凝灰岩と類似のものが多数を占める。
地理院地図に地理院提供の座標プロットソフトを用いて観察場所を表示したもの。画面左下の赤丸は葛川河口域の石材採掘跡。大磯駅近くの赤丸は大磯町立図書館で、バス停側に旧郡役場の遺構をモニュメントとして保存している中にこの石材が使われている。
大磯駅南の国道が大きく南に曲がった地点の青丸は、私が「中丸石」と考えている「白色凝灰質が優勢で砂礫サイズのスコリアと岩片が少量含まれる凝灰岩」の露頭が観察できる場所。緑丸は一部露出不良の地点を含むが、その岩石と思われる石材が観察可能な地点を示している。この石材の石切場は高麗山の南面と高麗山から西南西側に白岩神社方向に続く山裾を中心に花水川河口部まで広く点在していたと思われる。具体的にはまだ未確認で申し訳ないが石切場横穴墓群が一例として考えられる。白色のやや硬質の岩石は高麗山層群の珪質泥岩・デイサイト質凝灰岩として知られている
石蔵に使われている唯一の例で、石材の中の礫の状態を示したもの。画像の横幅は 30 cm 程度。剥離部分で基質はかなり白い事が判る。
同じ石蔵でやや大きな火山岩礫が含まれている部分の拡大図
白岩神社の石垣に用いられた石材の拡大画像。この神社は往古は現在より東に鎮座されていたらしいが『後ろの山が、海の方から眺めると白く光って見え「白岩山」と呼んでいたので「白岩神社」と称えたと云われている』。これは岩片がやや多い部類。
高麗山下の「高来神社」石垣の一部から風化剥離した岩片がありましたので撮影しました。類似岩石が使われています。
またこの神社の古い階段石は汚れていますが表面形状等から白色系の硬い凝灰岩が使われている様に見えます。残念ながら破面などは無く確認出来ません。これが高麗山層群の珪質泥岩・デイサイト質凝灰岩なのでしょう。
高来神社の東、国道1号線に面して「善福寺」があります。この境内の「龍頭山」は、昔日。花水川の河口域で「三ツ石」と言われる岩礁があり、採掘されて石垣等に使われたという伝承(ボランティアガイド)があると云う。やや東には神奈川では珍しい「切石」を組んだ古墳や「石切場横穴古墳群」等もあります。未確認ですが画像等では比較的白い岩石に見えます。善福寺境内の墓石類の礎石に中丸石と思われる石材と共に、この様な白色の硬そうな凝灰岩が使われています。これも高来神社の階段石と同類だと思われます
これも善福寺内墓地の礎石の一例です。風化の状態から前の画像の石材よりは柔らかそうです。
大磯駅の東側に在る古い石垣の石材です。これも中丸石の仲間と見て良さそうです。
前の画像が使われている石垣のやや広い面積を写しています。左手の石垣は海岸で採取して来たような岩塊を積んだ部分で、穿孔貝の巣穴化石が残る岩塊も多く含まれています。白い石材は大谷石と誤認される事も多いのですがここまで黒色の砂礫が含まれている大谷石はほぼ流通していないと考えています。少量の砂礫が含まれたものは露頭等で確認しています。
切石の表面を近づいて撮影してみました。風化して表に出て来たスコリアなどが目立ちますが、表面を仕上げた状態では美しい石材の部類かと思われます。
大磯町立図書館表のモニュメントの一部です。図書館で二度目に伺った時に、郡役所に使われていたものだとご教示を頂きました。葛川河口域の石切遺構で観察される石材との類似性は非常に高いと考えています。尚、河口域の石材に関して神奈川県博では三浦層群大磯層の凝灰岩としています。
大磯駅南の青丸位置の切通の露頭の部分拡大図です。切通に繋がる「エリザベスサンダーズホーム」の南端の門付近にはこの石材に類似性が高い石材が積まれています。ホームのほかの部分や駅前の学園の塀は自然石風に割り付けた「高麗石」が使われています。
白岩神社石垣の石材とよく似ています。

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