2020年6月21日日曜日

岩石と地層の表情:054;鎌倉石の石丁場(2)

鎌倉市内には数多くの鎌倉石を用いた石造物が現存しているのでその中から、北鎌倉に近い「東慶寺」の石造物と、朝比奈切通に近い「光触寺」の例をご案内したい。
尚、鎌倉石については例えば「横須賀地域の地質」第103頁の“XⅠ”「石材」の項で「鎌倉石は,逗子市・横須賀市境界の鷹取山山頂周辺において,明治から大正末期にかけて大がかりに切り出されていた.その地層は三浦層群上部の池子層鷹取山火砕岩部層にあたる.この部層は鎌倉市地域にも局所的に分布するが,同地域での採石跡は一部の小規模のもの以外は見あたらない.鎌倉石の名称の由来は定かでないが,鎌倉石が鎌倉地域の神社・寺の参道石段,石垣や土台石に多く使われてきたことによると思われる.」と記載されているが、この記載は明らかに誤りであり、鷹取山で採取された石材は「鷹取石」であり、本来の「鎌倉石」とは異なる。大谷石が関東地域の凝灰岩質石材を駆逐したように、鎌倉石は鷹取石に駆逐されたに過ぎない。採石跡は確かに小規模ではあるが、多数存在したのも事実である。失礼だが、神奈川の歴史的石材について記載するのなら、せめて産総研・地質調査総合センターの前身でもある「旧農商務省地質調査所」発行の「神奈川県産建築石材試験報文,清水省吾,1913」に触れて頂きたいものだ。
東慶寺は特に女性に人気の寺で有り、冬の寒い時期でも参詣者が絶えない。参詣者の多い寺院での調査は出来るだけ人気のない時期と時間を狙うがそれでも困難が付きまとうので苦手である。この付近では残念ながら鎌倉石は採掘されていないが、立派な仏塔が現存しその岩肌も観察出来る。 
代表的な大型の仏塔:宝篋印塔として良いのだろうと思うがこの石塔の肌はやや粗粒だが美しい
石塔の一部を拡大して撮影してみた。他の参詣者の居られる場所でスケールは当てにくいのでご容赦下さい。手には持って居たのだが・・・
これはやや色が白いがこれも鎌倉石だと思われるが、庭の中で近づけない
燈籠も勿論鎌倉石が使われている。鐘撞堂の礎石には房州石似の伊豆軟石が使われていたが、人波が消えないので接写は諦めたが、寺院には良い石材が数多く集まっている。
朝比奈切通や衣張山に近い「光触寺」の山門付近の石垣にはやや黴が在るが鎌倉石が使われており、そのやや左手に比較的新しいものなのか、表面が美しい切り石組が在る
切石の石組の例。図の右手に“L”字型の黒い影がこれは曲がり尺で上下方向が 10 cm 。切石は意外と薄い。


この寺を選択したのは、墓地を奥に辿ると二ヵ所の小さな石切跡の観察が出来るからだ。これは最初の(手前の)石切跡。同k津部分だけでは無く崖そのものも石切跡の可能性が高いと思う。

2 件のコメント:

yuki morioka さんのコメント...

はじめまして。とても興味深く読ませていただきました。
研究されている内容は、このブログ以外でも発表や書籍化されていたりするのでしょうか??

makura さんのコメント...

yuki morioka 様
最近このブログの書式が変わって戴いたコメントに返信の作成法が判らなくなったので、本文に追記させて頂きます。
これは地学を学び損ねた後期高齢者が趣味の世界で調べているもので。ブログとFBだけが発表の機会となります。調査行動には、専門家のご指導を頂いておりますが、この調査は全くのマイペースで、年に一回、観察記録をDVDに焼いて関係者にお配りしています。
科学的分析法を採用できないので、これをご覧頂いた方がご自分の目でご確認頂けるように国土地理院の10進座標系をデータに添付し、一つの観察場所に5頁平均の大きな画像を添付し、これに目次や代表的な画像の解説や、参照文献のリストに主要記載事項を忘備録として追加するなどしているので現在1,180ヵ所のデータが7,227頁有り、pdfファイルで 4GB となります。印刷するのは無駄なので全く考えておりません。現在は久し振りの改定作業中なので、来年の三月末まで生きていられたら、再度DVDを造ります。
この連載は、FB投稿(瞬間で消えていくので)をそのまま後で探しやすい様に、ブログに同文で投稿しているものです。 以上です!