2020年5月28日木曜日

岩石と地層の表情:030;津波に耐えた石蔵

石巻市内でも津波は旧北上川をかなりの距離に渡って遡上した事は皆さんもご存知の通りです。地図は石巻市内の一部を示していますが、赤い線は仙石線と東北本線の小牛田と女川を結ぶ石巻線です。運河はこの図の少し上で北上川に開口します。黄色い線の左側は牧山を主峰(?)として井内石(稲井石・仙台石)の地質が広がる領域で、この線に沿って古い石切り場跡が分布しています。右端の真黄色い円が現在の井内石の共同採掘場。その左手の露天掘りの部分は復興需要などに対応した砕石場。北上川の中州の緑の円は手塚治虫ミュージアム。その下の三角形は日和山公園。橙色の点が今日ご紹介する野蒜石の石蔵がある場所です。石巻はいろいろと縁が有って50年以上前から何度も来ている場所です。
これらの画像は震災のほぼ1年後に撮影したものです。近くの明らかに津波にやられたと見える土蔵も写した心算でしたが残念ながら見当たりません。
これらの写真を写した時は、実に数十年振りに歩くので記憶をたどりながら赤い線の中の丸い印の石巻駅から、手塚治虫ミュージアム方向に歩きました。川に近付くともう言葉に使用が無いほどの惨状で、最初に壊れた土蔵を見て、周りを見渡すとこの石蔵をが目に入りました。その後は日和山公園まで歩き、丘の上から海岸方向の惨状を再確認し、その後は何処かで道を曲がり損ねて随分と遠回りで駅まで戻った事だけを記憶しています。
石蔵の下の部分は、新たに追加したらしい構造物の色が馴染めなかったので写していませんが、ほぼ傷みは無い状態でした。
正面の屋根の下の部分ですが、飾り彫刻の線もしっかりしていて何時頃の建物か判りませんがしっかりした造りである事は間違いありません。
やや白い塊は、細粒の凝灰質の固まりですが、「礫」と表現するほど固結はしていないので「偽礫」とでも表現した方が良いのかもしれません。黒いのは砂礫サイズの岩塊の様です。
白い均質な凝灰質が堆積していた場所を吹き飛ばして粉々に破砕しながら、黒い砂礫を含んだ火砕物が火砕流のように包み込んで堆積した様な雰囲気です。石材によってはもっと白い塊の周りを黒い粒子が包み込んだような状況が良く判るものが見掛けられます。
白い塊はほぼ内部に砂礫を持って居ない事がお判りかと思います。白い「偽礫」の大きさは大小さまざまですが、これが同じような大きさで揃うと綺麗です。


日光が当たると凝灰質の細部が見えてきます。薄い赤い色はその汚れ方から何か外来の衝突物の様なものから色移り下のではないかと思われます。
この程度のサイズの固まりが一番良い雰囲気の様な気がします。明日はもう一ヵ所別の建物の石材を見て頂きます。

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