2019年5月12日日曜日

鴨川市江見海岸の地質観察会:“Stop 1”

千葉県立中央博物館の地質観察会の“Stop 1”で観察した地質をご紹介します。
この付近は、比較的新しい付加体地質を観察する事が出来る場所です。“Stop 1,2”で観察するのは保田層群の中の、「1/5万 鴨川地域の地質」の表記に従えば「高鶴層」であり、別の呼び方をすれば「前島層」になります。
海岸には緑色凝灰岩の岩体が数か所露出しています。この緑色凝灰岩は成層していますが「珪化」している為に、波浪による浸食に負けずに海岸の砂浜から突出しています。面白い事に、二つの大きな岩体の中で大きな岩体を観察していると「珪質」だけでは説明できない風化状態を示していたので念の為に確認すると更に石灰質でもありました。大きな方の岩体には、チャートの黒色岩塊が取り込まれています。緑色凝灰岩は房総半島ではかなり珍しい部類に入ります。この場所以外では同じ保田層群の嶺岡山地の「白滝層」や「平久里層」で観察される様です。凝灰岩質石材を調査している私には大変興味深いのですが、「珪化」しているのでは石材にはなりませんし、露頭が小さすぎます。

参加者に配布される観察資料は、地学科主任研究員の高橋直樹先生の力作で30頁余り

海岸の砂浜に露出している珪質の緑色凝灰岩。右奥の方にもう一つの大きな岩体が見えます。この他にも海側に幾つかありますが、引潮の時でないと近寄れません。層になっているのが判りますね。

別の側面から観た同じ岩体です。凝灰質は細粒です。

大きい方の岩体の中に含まれる黒い岩塊はチャートです。

大きい方の岩体には小さな裂罅が発達し、石灰質の脈が入っています。

石灰質の確認の為、常備の希釈塩酸を滴下すると見事に発泡します。

砂浜に漂着していた「石灰藻」。植物なのに石灰質をまとっています。希塩酸を掛けると実に細かな泡が出来ます。

これも別の種類の「石灰藻」です。同様に見事に細かな泡が発泡します。私が何時も凝灰岩質石材で確認するのをご覧に庵っていると思いますが、凝灰岩の石灰質はこんな石灰藻が素材かも知れません。

江見海岸の西側に、嶺岡山地に水源が在る「洲貝川」が流れ込んでいるので、海流(沿岸流)の効果で、砂浜にはいろんな円礫が転がっています。一生懸命円礫を探しています。

私が持ち帰った珪質緑色凝灰岩です。

私が持ち帰った珪質緑色凝灰岩です。前の画像のものと異なり、凝灰質が粒状になっています。他にも斜方輝石の劈開面がきらりと光る蛇紋岩も良く転がっています。

石灰質頁岩です。卵形の素敵な形状です。右手に丸く薄い色の部分が有るのは、希塩酸で発泡を確認した跡です。・・・続く

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