2020年8月31日月曜日

凝灰岩を顕微鏡で見ると:野田市内で

 普段の凝灰岩質石材調査を公共交通機関と徒歩でやって居ますので、どうしても交通不便な地にある観察対象の石造物を見に行く事はとても行けません。2012年から今日まで、古い凝灰岩質石材が現存している可能性が高い社寺だけで見ても、関東地方で1781ヵ所の社寺を歩いた中で562ヵ所で凝灰岩質石材を確認しています。調査件数と凝灰岩質石材を確認する事が出来る比率はおよそ32%でした。千葉県野田市には、私が調べた範囲では神社が140ヵ所ほどあり、その内の119ヵ所を確認し、51ヵ所で主に伊豆南部の凝灰岩質石材を確認しました。観察はあくまでも観察対象に傷つけずに行うのを基本としていますので、サンプルを採取する事が出来るのは年に一~二度程度ですが、そんな時は博物館で顕微鏡を使ってしっかり観察を行います。野田市での例をご紹介します。

野田市は利根川と江戸川に挟まれた細長い土地なので、中央をバスが走ってくれれば、東西に歩く距離は大したことが無いので、珍しく広い地域を歩く事が出来ました。赤丸はその中で凝灰岩質石材を確認する事が出来た場所を示しています。50ヵ所あります。利根川~江戸川の舟運と醤油や味噌の醸造業に関わった商人が信仰を大切にしたのでしょう。
場所と名前は省かせて頂きますが、この神社を訪ねた時は丁度社殿が新築され田直後で、古い石材がほぼ処分されていて、礎石や石祠・石塔の類は全く有りませんでした。
境内の端に、緑色凝灰岩の切り石の破片が僅か四個残っていました。欲しいなと思ったのですがデカすぎてとても持てません。それに、普段は私もハンマーを持って居ません。
敷地内を歩いていると、同も凝灰岩らしい岩片が、あちこちに顔を出しているのに気付きました。どうやら、廃棄した石材を小割して敷地内に巻いたらしいのです。勿論、これは一生懸命洗ってこの状態になっています。拾った時は泥だらけでした。でも、呼ぶんですよね!

博物館にその岩片を持ち帰り、タガネで10mm程度の厚さで割り採りました。その断面の画像です。左上は希塩酸を滴下して石灰質の有無をチェックした跡です。

平らな面を研磨した後で超音波洗浄し、デジカメを使用して接写したものです。画像の横幅は 30 mm 。左上から右下方向にラミナが走り、右上が細粒で左下がやや粗粒になっています。
実体顕微鏡にデジカメを使ってコリメート撮影した画像をご紹介します。以下の画像は画面の横幅は 4 mm です。緑色凝灰岩の色の元である緑泥石が濃集した凝灰質が中央にあります。
この石材の特長は、凝灰質が粒状になっている事と、ほんの少数ですが小豆色の岩片が含まれている事です。
軽石でしょうか?緑色凝灰岩でも、全てが変質しているとは限らず、変成岩が混じって緑色に見える事も有るのですね。

破断面がガサガサしている鉱物が入っています。こんな割れ方をする火山系の鉱物と言えば角閃石でしょうか?この様に研磨して顕微鏡で観察し、現地でルーペを使って観察する際の参考にします。

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