2009年11月15日日曜日

栃木県足利市房州石の塀(1)

お詫びと訂正:永い間この石材は房州石だと思い込んでいましたが、様々な土木建築物を見て歩く中で、この石材は房州石に似ている部分も有るけれど、静岡県下田付近で採掘された「伊豆石」の可能性の方が高いと判断するに至りました。
判断の根拠は岩石学的あるいは成分観察等の結果では無く、この石材の姿に非常に良く似た石材を下田市内で観察した結果です。南豆製氷所の石材を見た時は房州石一般と非常によく似ていると思いましたが、この目の細かさがぴったりと同じ石材に下田で会いましたので、産地に近い場所での目撃がより正確な判断につながると考えた次第です。
未だに多少の迷いが在るのですが、実はこの画像は他の岩石画像よりもはるかに多くの方に見て頂いて居ますので、誤りの訂正は素早く行うべきだと判断いたしました。
正しい「房州石」画像は、画面右側のラベルで「房州石」入ったラベルをクリックする事でご覧いただけます。近日中に下田で観察した石材の画像のUPを始めます。
間違った情報を公表した事をお詫びし、今後間違いのない情報の発信に努めたいと考えますのでご了承ください。現在、伊豆と房総半島の産地に近い場所の石材の画像集を作成して、石材産地のより正しい把握が出来る様努力しています。
この画像のラベルは今まで「房州石?、足利の街で」でしたが、「伊豆石、足利の街で」に変更します。

2012年9月12日追記:下田市内で明治・大正期の伊豆石を使用した建築物を沢山見て来ました。石材の表面仕上げが異なると印象がずいぶん変わって来るものですが、この石材は房州石よりも「伊豆石」に近いのかと思い始めています。静岡県内には100か所を越える伊豆石の採石場が有った様ですが、その丁場と産出した石材の照合が出来て居ません。結論を得るにはかなりの時間が掛かりそうですが、そのような可能性が在る事をご報告します。

「岩石と土の表情」第一弾の画像は栃木県足利市で見掛けた「房州石」(と思われる)石塀。足利学校に行く機会があればその周辺を巡ってみては如何?
「房州石」とは千葉県金谷に位置する「鋸山」に産する海成の凝灰岩質堆積岩。上総層群竹岡層に相当する。170万年前辺りまでの深海堆積層らしい。現在では殆ど弱溶結凝灰岩の大谷石等に追われて採掘はされていない。軽石の含まれている割合が高く斜交葉理が非常に美しい。陸上に堆積した溶結凝灰岩ではとても見る事が出来ない美しさだと思う。
千葉には火山どころか高い山も無い。それなのに溶岩があり、礫岩があり、火山灰層も勿論沢山在って広域テフラの同定研究も盛んな場所。こんな火山灰や溶岩は一体何処に在った火山から供給されたものか?

注記:古墳の石室に使われている「房州石」について
2011年1月9日 訂正追記
1月27日追記「房州石と古墳と富津磯石」の特集を始めます。
以前から記載していた通り、古墳に使用されている「房州石」は、鋸山で採掘され建材として使用されてきた一般的な用語としての房州石とは全くの別物です。
考古学で6世紀頃の古墳に使われている「穿孔貝の生痕化石」がある泥岩~スコリア質砂岩を「房州石」と呼ぶのは、産地が似ているからと言う理由だけで捻じ曲げて使うのは適正ではない、地質学上堆積時期も堆積環境も異なる地層に対して同じ名称を使うのは正しいやり方では無いと考えます。
私は考古学分野で「房州石」の用語を他の単語に、例えば富津市での使用例の様に「富津磯石」の様な言葉に書き換えるべきだと考えています。
この埼玉県(栃木県と書いたのは小生の誤記です。申し訳ありません)での使用例だけでは無く、富津市、鋸南町を歩いて頂ければ本来の房州石がどのようなものかお判り頂けると思います。特に金谷美術館の外壁に使われている房州石はこの画像同様に素晴らしいものです。
2010年11月から、さきたま古墳群の将軍山古墳を初めとして、この博物館の展示に記載してある「房州石」を石室に使っていると言う古墳や類似施設を見学しました。赤羽台古墳・スサノオ神社の瑞光石・立石様・市川市法皇塚古墳・木更津市金鈴塚古墳・木更津市稲荷森古墳(これはリスト外)・富津市弁天山古墳等です。
また、改めて金谷の民家の塀や蔵に使われている房州石を観察し、富津岬以南鋸山付近までの海岸の砂岩泥岩互層の露頭をや鋸山の露頭を改めて観察しました。
これを足懸りにこれから1年程度の計画でもう少し、古墳と露頭を廻りその一部をこのブログで紹介する事に致しました。ブログへの画像の掲載は1月30日から暫く続ける予定です。

2011年5月5日追記:2012年5月26日一部訂正追記
先日この実際の塀をご覧になった方から、他に何処の産地なのか?指摘出来ないが、ヒョットしたらこれは房州石では無いかも知れない!と言うご指摘を頂きました。地質の目で房州石を良くご覧になる機会が多く、岩石に関して実に博識な方のご指摘で「石材の表面に現れる様々な堆積模様やスコリアの大きさ等が微妙に違うような気がする」との事でした。
2012年秋に、鋸山で房州石を採掘しておられた方に間接的に御目に掛かり、この画像を見て頂きました。ご自身の採石場でのものでは無いが「見た事が有る様に思う」との事でした。
2012年1月27日、石廊崎等を歩いた際に、下田市内の「南豆製氷所」に使われている「伊豆石」の建物を拝見しました。実にそっくりでした。伊豆韮山の反射炉の前室に、房州石とよく似た伊豆石が使われている事は既に現物で確認しています。
別の機会に、伊豆半島よりも鋸山が消費地に近いので、鋸山から出荷した「房州石」が納入先では「伊豆石」とされていた事が有ると言う話も伺いました。
伊豆半島と火山の無い房総半島に殆ど同じ特徴を持つ岩石が存在する不思議に感動します。
この伊豆石関係の画像をご案内するのをすっかり忘れて居たようです。2012年6月中旬には「房州石・伊豆石:似た者同士」等と言うラベルが増えているかもしれません。
右側に「房州石」関係の幾つかのラベルを置いています。ご覧頂ければ幸いです。

0 件のコメント: