2018年8月26日日曜日

火山列島日本展:OPTガイダンス:野田市内で見る石材 (5)

当日ご覧頂けないけれど、凝灰岩のチョット詳しい画像のご案内
画像は野田市古内内の八幡神社境内の土中から採取した比較的細粒の緑色凝灰岩。この神社は西院改修済で境内には凝灰岩を用いた石造物は見当たらないのですが、境内には沢山の岩片が土中に半ば埋まって僅かに顔を出していたのでサンプリングさせて頂きました。
全く細粒のものと、やや粗粒のものが含まれているものと二個あります。
三番目は「石灰質の生物遺骸(化石細片)に富む石灰質凝灰岩」で、印西市物木の諏訪神社で採取したもので、狛犬か燈籠か不明ながらその礎石の部分だけが四角い枡状に残っており、その近くの矢張り土中から採集したものです。
四番目は、武蔵五日市付近で採掘されていた「伊奈石」です。博物館の県外岩石観察会の際にサンプルを転石から頂いてきました。この凝灰岩はごく狭い範囲に分布していますが、実は房総半島の嶺岡に実にそっくりの石材が在ります。表面のに白い斜長石の結晶が特徴ですが、両者共に「石臼」に使われていたと云う共通点が有ります。
最後は顕微鏡画像はありませんが、野田市内では実に歴史的に大量に使われて来た「岩舟石」を紹介しておきます。栃木市岩舟のJR駅前に採掘場跡と「日本で一番小さい岩舟石の資料館」があります。この石材は水に強く、醤油工場と河川出の水防用に大量に使われ他石材です。画像の説明は個別に添付しています。

①~④までが同一のサンプルの画像です。一枚目は採取したサンプルの外観です。他のサンプルもタワシでかなりゴシゴシ洗って序に風化した軟らかい部分は取り除いています。

顕微鏡のステージに乗せ易い様に、10 mm 前後の厚みに並行に切り出した資料を造り、出来るだけ研磨材で#1500 程度まで研磨します。研磨状態の画像では上のスケール側は細粒で下方に行くほど粗粒になります。左手に小さな茶褐色の粒子が有り、この付近を観察すると右下がりの線状の構造が見えます。これが堆積時に水流で造られる「ラミナ」です。

画像の横幅は特にお断りしない限り、ほぼ 4 mm です。中央に軽石があります。白濁した部分は方解石・石灰分です。白い半透明の部分は大体斜長石。緑色は主として「緑泥石」と云う鉱物が出来ています。

試料を少し動かすと全く別の顔が現われます。安山岩や玄武岩と異なり凝灰岩は主成分は火成岩ですが、堆積岩なので隙間が有ったり粒子のサイズもバラバラです。房総半島の房州石ではこの緑色の部分は、ほぼ観察されません。

二番目のサンプルは、全体的には細粒ですが、所々に数 mm サイズの凝灰質の塊や岩片が含まれています。この大粒の岩片がラミナを描くと中々美しいものです。右端の小豆色のものは火山岩片です。

研磨後の画像です。粒子の分布が全くバラバラですね。白濁した不定形の粒子は大体石灰質の生物遺骸でこれが全体の糊の役目を果たして結構硬くしかも削り易くしてくれるので彫刻に適した石材です。

この顕微鏡画像では、中央に安山岩が見えます。中に含まれている白い四角い形状は斜長石の斑晶と見て間違いないでしょう。軽石や岩片の間を緑色の薄い膜が取り囲んでいる雰囲気です。

石灰質の生物遺骸(化石細片)に富む石灰質凝灰岩の、ほぼ生物遺骸だけの部分です。画像の横幅は 47 mm。一応、火山岩片や軽石も含まれていますが、薄板状の化石細片がミルフィーユ状に折り重なって堆積しています。これもラミナが観察し易い石材で、伊豆と房総半島に似た様な成分の石材が採掘されましたが、下田プリンスホテル付近の一部の例外を覗き、他にも幾つか分類ポイントがありますがラミナが観察されれば伊豆産出です。

顕微鏡を使わずに、デジカメの接写レンズを使って撮影した画像です。赤茶色は勿論火山岩片です。このスケールは「クラックスケール」の商品名で販売されていて、薄くて目盛の印刷が綺麗でしかも低価格の名刺サイズなので重宝します。小さな目盛は 0.5 mm 単位です。間違ってもステンレス製は買わない様に!

野田では観察出来ない凝灰岩の例です。武蔵五日市付近で採掘されていた「伊奈石」と云うもので細粒砂岩ですが、この白い風化斜長石が表面で妙に目立つのが特徴です。これは未だ詳細の観察が進んでいません。房総との相違点を探し出したいと考えています。

端面をざっと研磨した状態です。岩石の破面や風化面の状態も重要な観察項目ですが、この様に平らな研削面を造るのも、凹凸等の見た目に騙されない為には重要な観察方法だと考えています。

中断していますが、少し粗い研磨状態での顕微鏡画像です。画像の横幅は 3 mm です。研磨材のひっかき傷が残っています。中央は劈開が観察されるので斜長石です。

最初の二つの凝灰岩は最初の頃は別物として分類していましたが、堆積物なのでこの様に細粒分と粗粒分が一つの石材として認識されるようになりましたので、敢て区別する必要は無くなりましたが、やはり見た目がかなり違うので、今でも一応別に区分しています。

チャートの岩塊が含まれた凝灰岩が珍しい訳ではありませんが、野田付近に運ばれた凝灰岩として醤油工場の立地と、利根川と江戸川の存在からこの岩舟石は人々の目には触れない場所でこの石材は活躍してきたものなので、参考用に御案内します。チャートや花崗岩が含まれているので、足尾付近と似ています

以上

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