2017年5月25日木曜日

下総型板碑の特異例を求めて (1/3)

武蔵型板碑は緑色片岩の輝きが素人眼に見ても美しいものだが、下総型板碑は日光の下では黒雲母も輝くが今一つ武蔵型に比べると魅力に乏しい。しかも、下総型と云いながら、素材の産地はつくば市平沢附近となると、霞ヶ浦の舟運を介しての物流に興味が惹かれるがなんとなく「地元産じゃないし!」等と思ってしまう。
 5月の初めに素性不明の白い石材が使われた板碑が匝瑳市に有ると云う情報がもたらされて、その素材が群馬県の天神山付近の白い凝灰岩ではないかとする説が出て来た。応安二(1369)年と成れば、群馬との舟運を介した物流に心ときめくが、残念ながら群馬の凝灰岩は馬見岡の露頭を少し観察した事がるだけで殆ど手触りも、舌触りも全く未知の領分なので手が出ない。
先ずは匝瑳市の板碑の例。所々にスコリアと見られる斑紋が点在

斑紋の拡大図:これは「荷重痕」と呼ばれる一種の不等沈下の痕跡だと判明しました。

下図の筋状のものは変成鉱物の「紅柱石」では無く生痕化石と想定されますので訂正します(誤記:背面には紅柱石の結晶が観察されます)

そこで類例が他にも無いか、博物館の所蔵品の岩石に似たものが無いかと調べている内に出て来たのが、旭市飯岡の「飯岡石」説。確かに、雰囲気は似ているが、この石は海岸で円摩された状態で採取される事が常で板碑にするほど平らで大きなものは見た事が無い。(大きな石臼は現存する)
と云う事で、飯岡石を使った板碑を求めて走り回った際の画像をご紹介。
まず、香取市の下総型板碑を念の為に点検。これは全てつくばの黒雲母片岩でした。

背面には紅柱石の結晶が観察されます

段丘崖のヘリを登ったり下ったり。飯岡の海岸を見通せる見広城址からの眺め

龍福寺境内には手掘りトンネルも有るほど、この付近の地質はしっかりとしている
銚子市指定文化財の板碑は飯岡石製で、スコリアの斑紋まで一致。
(続く)

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