2012年1月7日土曜日

人間の山 写真万葉録 (1-2)

写真万葉録には大変多くの画像が収録されている。
10巻の万葉録のその第一巻の「人間の山」だけでも169枚の画像が収録されている。
勿論、坑内写真など、大きなヤマのものは在るにしても、私が出会ったような中小のヤマについては坑口の画像は在るが、内部に関してはほぼ存在しない。
この画像集を紹介する為に、それらの中から夫々2枚程度の画像を選び出す事は難しいが、私はこのボタ山の画像を選んでみた。天空にそそり立つボタ山は美しい、時には懐かしさや哀愁を感じる事すらあるが、同時に中小炭鉱においては、其処は生きる為のぎりぎりの稼ぎの場所でもある。
しかし、ボタの中から黒い燃料になる石炭を拾い出す事は、食う為に必要な労働では在るが、同時に常に死の危険と隣り合わせの場所でもある。
この画像を選んだのは、此処に見えている溶岩流の表面に出来る「溶岩皺」のような模様にある。
ここでは確実にボタと石炭が安息角の限界を超え、地すべりに似た斜面の崩壊を起こした事が示されている。
斜面でズリトロの腹を割って転がり落ちてくるボタのなかから石炭を拾うとき、その場所の地滑りは時として働く人に確実な、無残な「死」をもたらす。
「人間の山」64-65頁には「拾い子一人、ケガさせとらん。一人の死人もだしとらん。と胸を張る刺青姿の頭領の姿があるが、母をボタヤマで失い露頭に迷った子等も居た事は事実である。

0 件のコメント: