2020年6月4日木曜日

岩石と地層の表情:037;万田野砂取り場の長浜礫層

今日ご案内するのは残念ながら立入禁止の場所です。写真地図の横幅は約 2 km 強。広大な敷地から砂を取り、東京湾の湾岸地区の埋め立て造成や、建築資材として高層ビル等の原料としている地区です。昨年、博物館の地学の仲間とこの地域に数年振りに立ち入らせて頂く予定だったのですが天候が悪く延期になってしまい、しばらく入域していない状態で久し振りに地形図を見ると随分様相が変化していました。画面上部の赤い線が県道。黄色の線は、砂取り場の場内道路で、その先端で円を描いている今は緑になってしまった付近と途中に見える比高 100 m の崖の下部に見える礫層の画像です。二回に分けてご案内しますが、今日は昨日の「磯根崎」との関連でこの地域に産出する「長浜砂礫層」の紹介です。元々、海に堆積した砂層なので、この付近から発見された鯨の化石等が、千葉県立中央博物館に展示されています。
写真地図は国土地理院地図を使用しています。赤線が県道。黄線が砂取り場事業所の構内道路です。基本立入禁止です。構内の最高標高は約 270 m で、作業所内の低い場所は 160 m 前後ですから標高差は 110 m あります。
標高差 100 m を越える崖の一部です。中ほどの茶褐色の地層から下は礫層です。ここは崖の崩落が怖いので二重に立入禁止です。
茶褐色の地層の少し下を望遠レンズで写したものです。礫のサイズはかなり変化が有りますが、大きなものは大人でも運ぶのに苦労するようなサイズのものが有ります。
房総半島で発見される「石器」の中に、この長浜礫層以外では取れそうもないサイズと岩種のものが有ります。勿論、当時は砂取り場は有りませんから、川底とか、海岸に露頭が在ってそこから採取したのではないかと想定しています。望遠レンズの手持ち撮影なのでシャープな画像では無く申し訳ありませんが、「ハンドアックス」等に良さそうなやや細長い形状のものも多数あります。小さな川幅どころではない広がりを持ってこのサイズの礫が有るという事は余程の流速のやや浅めの潮流でも流れるか、傾斜が無いと無理です。礫径も大きく変化するのも謎です。
小さな礫径の層です。私の岩石ハンマーのこの部分は 18 cm です。
砂の層には大型哺乳類の骨の化石が時折混じります。鯨の仲間が多いのだそうですが、同行者は全員岩石系なのでそのままです。
少しだけ集めた礫の形状と岩種のざっとしたチェックをやって居る処です。表面が砂鉄由来の錆で汚れているので、色は良く見ないと騙されます。
砂の堆積層の中に突然このように軽石や岩礫を含む地層が現れる事があります。ストームなのか、土石流なのか?
この様に、海岸に近い浅い海に堆積していただろう貝殻が大量に表れる事も有ります。基本的に割れている事が多いので現地性ではないのでしょう。現在マンションなどが立地している東京都内の昔の海の底ではこんな貝殻の堆積の仕方はなさそうです。高層マンションの基礎工事の際に、貝の研究者をご案内した事がありますが、貝殻の大きさが半端ないサイズで驚きました。
シルト岩(偽礫)なのか、軽石の潰れた偽礫なのか?固める前に乾燥でバラバラになったので判りませんが、卵型のこんな不思議な礫も偶にあります。
次回は、砂の織り成す美しいラミナの世界をご案内します。

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