伊豆の下田市付近に産出した石材が岩槻の街中に数多く現存すると言っても、探すのは結構大変です。石蔵、石塀、石垣等は通りを歩けば目に入って来ますが、岩槻の場合はその類の用途は残念ながら一例も観察する事が出来ませんでした。
同じ伊豆系と言っても、真鶴付近の「新小松石」はお寺や神社の石垣に、同じ真鶴付近の「根府川石」や、東北の石巻市の北上川に沿った河口の丘陵地に産出する「井内石」も石碑に使われているのでこれも良く観察されます。特に井内石の石碑は統計を取っているので立入禁止の場所以外は全て計測もしています。
最初にご案内するのは藩校,遷喬館から近い場所に位置する岩槻藩御典医の家系の御屋敷の門前です。赤で囲んだ部分に伊豆石の貝殻片を含む石灰質砂岩が使われています。右手には潜り戸があるので、門前の御影石製の敷石との関係で水溜りになり易い場所に石材を敷いたのだと理解出来るのですが、左手がいけません。ぽつねんと置かれた石材は如何にも居心地が悪るそうです。
右手の石材を観た時に少し青味を帯びた部分が有るので(3枚目の画像を観て下さい)大谷石だと諦めかけたのですが、銅板があるので希望は在ると見直して貝殻の細片か骨片かここでは判断出来ませんが見付けたので、ホッと一息です。
門の左手のこの2個の石材は何故此処に置かれているのか?理解に苦しみますが、あるいは塀の柱の支えの束石用に仮に於いたのかもかもしれません。門に近い塀の上の瓦が銅葺きでした。滴が下に在る石材に浸み込み、緑青の色が大谷石に誤認させる事は何度も苦渋を舐めているので、青い色が在ったら周辺を見回して銅製品が無いか? チェックをするのが習慣になっています。
貝殻の細片が実に多いですね。堆積面に並行に石材を採掘すると丁度貝殻層の多い部分が隙間が多いのではがれやすく、仕上げを行わない荒削りの石材に現れる事になります。
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