2017年6月22日木曜日

白い凝灰岩を用いた五輪塔 (4) 藪塚石・藪塚温泉北側の石切り場跡

 藪塚石の石切り場は古くなったウッドデッキが抜けそうなので原則立ち入り禁止となって居ます。我々は数十年に亘って人々から忘れられた石切り場跡の探査経験は豊富なので、無様な事故を起さない様に注意しながら場内で石材の調査を行いました。石切り場は一般道からの入口別に少なくとも二ヶ所に分かれている様でしたが、我々は案内看板が設置された溜池前からの遊歩道が整備された側にだけ入域しました。
 房州石の石切り場や、伊豆軟石の石切り場を見慣れた目からすれば石切り場はそれほど大きなものではありません。石切りにより出来た絶壁はレーザー計測では18m程度、入って直ぐの広場の幅も60m前後です。ほぼ水平な採掘跡の縞模様は、一段が20-24cm程度です。

左手の採掘跡

右手の採掘跡は広がっています。

正面の採掘跡から入口を眺めたものです。

右奥には、節理を避けて斜めに切り込んだものの、再度節理にぶつかって採掘を断念した雰囲気の切羽があります。

上の画像の左手を見ると、採掘跡の壁の一部に地山の表面に平行な節理が数段走っています。表層に近い薄い凝灰岩の層は恐らく採掘対象にはならなかった事でしょう。

天神山と異なり、石質はかなり粗い雰囲気なので、表面付近は石材として使用出来るような硬さでは無くなってしまっている様です。石材の地山には、軽石の岩塊が結構な量含まれています。ガラス質の岩片もかなり大きなものが含まれています。

ガラス質の岩片

やや発泡した火山岩塊が含まれている事もあります。

尚、軽石岩塊とかガラス質火山岩塊等に付いて記すのは、この地域の凝灰岩質石材の特徴を出来るだけ詳細に把握する為で、石材の良否を云々するものではありません。
 尚、ネットで調査した情報では、太田市内の藪塚石切り場から南東側の菅塩町にも石切り場跡が有る様です。
 また、「藪塚石之碑」に刻まれた藪塚石の採掘の歴史に関しては、下記のブログが参考になると思います。「藪塚石・藪塚温泉北側の石切り場跡」
http://www5f.biglobe.ne.jp/…/koramu53sugashioishihosoku.html
  続く

白い凝灰岩を用いた五輪塔 (3) 天神山:馬見岡凝灰岩露出地 (2/2)

石切り跡の残る露頭で観察される石の質は、表面が風化に拠り、軟らかい部分が薄く剥がれて、硬い部分が残るので、どうしても粗い雰囲気になりがちなのだが、それにしても粗い。一枚一枚の画像を観てみよう
石切り跡の残る石切り場表面は粗い。風化に拠り仕方の無い事だけど、五輪塔側にとってもその条件は同じはずだ

岩の新鮮な断面には繊維状の軽石が混じる。これは尾根筋の脇の石切り跡で観察したものなので、本来なら繊維状の軽石は含まれないはずだがかなり大量に含まれている。

加工の痕跡が残る岩片が転がっていた。尾根筋もかなり上の方なのだが、やはり粗い。
駐車場になって居る昭和の石切り場跡の転石には貝殻の化石の痕跡が観察される。スケールは無いが画像幅は約3mm位

これも、駐車場の転石に観察される繊維状の軽石



  続く

GVP 火山活動情報の概要:6月14日⇒20日;20火山

Activity for the week of 14 June-20 June 2017 
New Activity/Unrest
Bogoslof  | Fox Islands (USA)  | 311300 | Elevation 150 m
613-14日の間、衛星画像で地表面温度の上昇と少量の水蒸気の放出が確認されています。弱い地表面温度の上昇は616日に観測され、18日には13km先まで伸びた水蒸気の噴煙が観測されました。カラーコードはオレンジを維持しています。
  
Karymsky  | Eastern Kamchatka (Russia)  | 300130 | Elevation 1513 m
610-12日と14-15日に、衛星画像で熱異常が観測されています。カラーコードはオレンジ。
  
Pavlof  | United States  | 312030 | Elevation 2493 m
67日に僅かな地震活動の活発化の後、徐々に減少し、620日までの間は、地震・空振共に特段の活動は観測されていません。時折、山頂火口から少量の水蒸気の噴気が立ち昇ります。衛星画像では614日に、西に55kmまで伸びた水蒸気の噴気が確認され、15-16日と20日には熱異常が観測されました。カラーコードはイエローを維持しています。
  
Rincon de la Vieja  | Costa Rica  | 345020 | Elevation 1916 m
615日に、主に水蒸気の噴気が火口縁から50mの高さまで上昇しました。18日の昼頃に強酸性の熱水をたたえる火口内で熱水による小爆発が発生しました。翌日に公表された報告では、低周波地震、火山性地震や強い火山性微動等を含む地震活動は、523日や611日に観測されたものと同じだとされており、その後は地震活動は活発ではありません。
  
Sheveluch  | Central Kamchatka (Russia)  | 300270 | Elevation 3283 m
610-13日に発生した爆発sでは火山灰を含む噴煙は高度8kmまで上昇し南東から北西方向に1,500kmまで広がりました。150425時の強力な爆発で生じた火山灰を含む噴煙は高度12km以上に達しました。カラーコードはレッドに引き上げられましたが、その日遅くにはオレンジに引き下げられました。火山灰を含む噴煙は15-16日に北東から南西に1,000kmに達し、以下の地域から降灰が報告されました:Klyuchi (50 km SW), Maiskoe, Kozyrevsk (115 km SW), and Atlasovo (160 km SW).
  
Ongoing Activity
Aira  :桜島| Kyushu (Japan)  | 282080 | Elevation 1117 m
⇒気象庁の「噴火に関する火山観測報」を参照下さい。
  
Bagana  | Bougainville (Papua New Guinea)  | 255020 | Elevation 1855 m
衛星画像等のデータ解析から、614日に火山灰を含む噴煙が、高度2.1kmで西に広がたことが報告されました。その後は画像では火山灰を含む噴煙は確認されていません。
  
Bezymianny  | Central Kamchatka (Russia)  | 300250 | Elevation 2882 m
クベルトの615日の報告では、衛星画像で確認されている熱異常は増加し、ウエブカメラの記録では、火山ガスと水蒸気の噴煙が高度4kmに達し南南東に広がりました。溶岩ドームから高温岩塊の岩屑雪崩が発生しました。16日の1653時に爆発的噴火が始まり、28 x 25 kmの大きさの火山灰を含む噴煙が生じ北東に広がりました。カラーコードはレッドに引き上げられましたが、5時間後にはオレンジに引き下げられました。火山灰を含む噴煙は、2110時には212 x 115 kmの大きさに拡大し東に移動し、その先端は東に245kmの地点に達しました。
  
Cleveland  | Chuginadak Island (USA)  | 311240 | Elevation 1730 m
614-20日の間に、地震活動も空振も全く観測されませんでした。少量の水蒸気の噴気がウエブカメラで17-18日に観測され、19日と20日に得られた衛星画像では僅かな地表面温度の上昇が確認されました。カラーコードはオレンジを維持しています。
  
Dukono  | Halmahera (Indonesia)  | 268010 | Elevation 1229 m
衛星画像等のデータ解析から、614-20日の間、火山灰を含む噴煙が高度1.5-3 kmに達し、様々な方角に拡散した事が報告されました。
  
Ebeko  | Paramushir Island (Russia)  | 290380 | Elevation 1103 m
火山から7km東のSevero-Kurilsk (Paramushir Island)の住民からの報告では、69-16日の間も爆発的噴火が続いています。カラーコードはオレンジを維持しています。
  
Fuego  | Guatemala  | 342090 | Elevation 3763 m
613-14日に発生した爆発では、10km先でも感じる事の出来る衝撃波を生じ、岩屑雪崩がCeniza (SSW), Taniluyá (SW), Santa Teresa (SW), and Trinidad (S) ravines渓谷を流れ下りました。18日には豪雨により生じた幅20m、深さ1.5mのラハールが“El Jute (SE) ravine”渓谷を流れ下り、直径2mの岩塊や樹幹を押し流しました。18-20日に生じた爆発では、火山灰を含む噴煙が火口上空950mに達し、S, SW, and Wの方角に8-12 kmまで広がりました。降灰は以下の地域から報告されました:(9 km SW), Santa Sofía (12 km SW), Finca Palo Verde, El Porvenir (8 km ENE), Sangre de Cristo (8 km WSW), and Panimaché I and II (8 km SW).白熱岩塊は火口縁上空100-200mまで噴出し、発生した岩屑雪崩は以下の渓谷を下りました:Ceniza, Taniluyá, Trinidad, and Santa Teresa drainages.
  
Ibu  | Halmahera (Indonesia)  | 268030 | Elevation 1325 m
衛星画像等のデータ解析から、614日と17-19日に火山灰を含む噴煙が高度1.5-1.8 kmに達し、 S, SW, W, and Nに広がりました。
  
Kilauea  | Hawaiian Islands (USA)  | 332010 | Elevation 1222 m
⇒この間も変化無く活動は継続しています。発表文の文言は531日のフィールドワークの報告も含めて、前回、前々回とほぼ同文なので省略します。

  
Klyuchevskoy  | Central Kamchatka (Russia)  | 300260 | Elevation 4754 m
6916日の間に生じた爆発では火山灰を含む噴煙は高度6-7kmに達し南東或いは南西に580kmまで広がりました。弱い熱異常が11-16日に衛星画像で観測されています。カラーコードはオレンジ。
  
Langila  | New Britain (Papua New Guinea)  | 252010 | Elevation 1330 m
衛星画像等のデータ解析から、614日に火山灰を含む噴煙が高度1.8kmに達し西北西に広がりました。620日には火山灰を含む噴煙は高度2.1kmで北西に広がりました。
  
Poas  | Costa Rica  | 345040 | Elevation 2708 m
613-15日の間、火山ガスの噴煙は火口縁を越えて少なくとも500m上空に達し北に広がりました。降雨の合間に、616日には火山灰を含む噴煙が火口上空1kmに達し北に広がりました。6181340時、201100時と1350時に火山灰の噴煙は少なくとも1km上昇しました。
 
 
Sabancaya  | Peru  | 354006 | Elevation 5960 m
前の週よりも活動はやや縮小しましたが、612-18日の間の一日当たりの爆発的噴火の回数は平均26回でした。火山ガスと火山灰を含む噴煙は火口縁から3.7km上空に達し南西に40km以上まで広がりました。“The MIROVA system”では、南東、北及び北西側山腹の9か所に熱異常を観測しています。614日の亜硫酸ガスの噴出量は日量で3,557トンでした。
  
Sinabung  | Indonesia  | 261080 | Elevation 2460 m
衛星画像等のデータ解析から、614-17日と19日には火山灰を含む噴煙は高度3-6.4 kmに達し、様々な方角に広がった事が報告されました。
  
Turrialba  | Costa Rica  | 345070 | Elevation 3340 m
614-15日に、時折火山灰を含む噴煙が火口上空300mに達しました。16日の0620時と1405時に発生した噴火では、火山灰を含む噴煙が夫々500m上昇し北西に、200m上昇し南に広がりました。19-20日には火山灰を含む噴煙が1km上昇し様々な方角に広がりました。
“Avachinsky”,
“Kizimen”,
“Plosky”,
“Nevado del Ruiz”
火山画像は各国の火山観測所がネット上で公開しておられるライブカメラ画像からキャプチャーしたものです。 以上

2017年6月21日水曜日

白い凝灰岩を用いた五輪塔 (2) 天神山:馬見岡凝灰岩露出地 (1/2)

この場所は2012年に歩いたのだが、「石切り場」と云うには余りにも小規模に見えたので余り詳細に見ないでしまった。今回は調査当日にこの場所に関する文献が手に入ったのでゆっくりと時間を掛けて回ってみた。最初の図がその「中世東国における造仏・造塔用石材の産地とその供給圏」国井洋子,1996,に掲載された石切り場の分布図。










天神山(馬見岡凝灰岩露出地)南端に在る現代の石切り跡は駐車場として整備されている

石切り場分布図⑥と思われる石切り場跡、此処だけが露頭の観察が可能。

他の石切り跡はこの様に山稜沿いの不自然な凹地として存在し、材木や枝葉の置場と化している。稀に、周辺に石材が散乱している事が有る。



明らかに削り取った跡と思われる場所。スケールとして置いたハンマーとの比較からかなり小さなものを掘り出したと思われ、五輪塔の主要部のサイズとは全く適合しない。

前掲の文献には石切り場における採掘の痕跡については触れられていない。石切りが藪塚石切り場の様に鶴嘴を使ったのか、矢穴を開けて割ったのかによって、石材の硬さが想定されるのだが参考になる記述は探し出せなかった。以下の二つの矢穴様の凹みの列は当時のものなのか疑念が残るが、参考用に掲示した。



続く

白い凝灰岩を用いた五輪塔 (1)

白い石灰質凝灰岩を用いた板碑とほぼ同時期に、今度は群馬県の凝灰岩ではないかと言われる白色の凝灰岩が用いられた「五輪塔」について調べる事になった。五輪塔とは主に鎌倉時代に有力者の墓石として用いられた様式なのだが、房総半島に存在するものの殆どが、鎌倉石に似た南房総産出の砂岩や、銚子砂岩、或いは安山岩等の石材を用いている。
房総では現在、一寺に三基のみが存在を確認されているらしい。これがその中の代表格。

両脇にやや小ぶりの五輪塔が添えられている。



調べてみると、既に様々な方々がこれについて研究して居られて、今更、と云う気もするのだが、この素材が群馬県の天神山産とする文献が有るので、まあ兎に角、5年前に訪ねた事の有る天神山に石材調査に行く事にした。折角なので、関連した地質や、同様に天神山産の凝灰岩を用いたという五輪塔等の仏塔なども目一杯観察して来る予定。
取敢えず、この五輪塔の表面を観察した画像をご紹介。尚、私は基本的に歴史が苦手なので、歴史的な背景等はほぼ触れない事を予めお断りしておきたい。

三基の内の一基は屋根型の「火輪」部分がほぼ半分に割れている。その割れた部分の拡大

風化に拠り剥離した部分の接写

美しい薬研彫りを施された表面は、素材が細粒で緻密な凝灰岩で有る事を示唆しているが、実は細かな細工の部分では表面がやや粗いので、細粒分を塗布する様な仕上げ加工をおこなちるのかもしれない。画像は細密な加工を施したやや粗い表面の部分

風化に拠り部分的な剥離が生じた部分の粗さの違い

風化に拠り表面がやや粗い部分に稀に観察される黒い部分。画面の横幅は 20mm
続く

太田市旧高山神社の火災の影響を受けた花崗岩

天神山の凝灰岩調査で群馬県太田市附近を歩いた時に、ある岩石の露頭を探して金山丘陵の南に残丘状の高まりの高山神社を訪ねてみた。この神社は、後で知った事だが明治に創建された後に、1932年に現在地に遷座された比較的新しい神社だが、2014年に放火により本殿が全焼している。

 放火により焼失している事等知らずに階段を登ると、見えて来たのがこの風景。焼失後も再建に至らず現状を維持しているらしい。実は、花崗岩は岩石の結晶粒子径が大きい事が有り比較的熱に弱い。加熱する事で結晶粒がはがれて吹き飛ばされるので、山から採掘する場合にガスバーナーを用いて切断・採掘を行う事例が有る。

本殿前の花崗岩で築かれた階段の石材の角に近い部分が大きく壊れている。

また、壊れていない部分も最後の画像に観られるように小さなクラックが入り、石材の透明度が低下している。

普段は中々観察する機会が無い事例なのでご紹介。
凝灰岩の中にも火に弱いと言われるものが含まれているが、大正初期に発行された当時の建築用石材に関する調査資料を観ていると、花崗岩の耐熱性は凝灰岩に比べると格段に劣る。小生の石材関係報文に抜粋引用したデータが有るのでご紹介する。最初は房州石。

これに対して花崗岩は初手から試験温度が低いのだが弱い

尚、これらのデータの出所は下記
◎茨城県産花崗岩応用試験報文,旧農商務省地質調査所,地質調査所報告第37号,清水省吾,1913

◎千葉県産建築石材試験報文,旧農商務省地質調査所,地質調査所報告第44号,清水省吾,1913,
以上