2020年6月24日水曜日

岩石と地層の表情:057;石橋に用いられた鎌倉石

京浜東北線の西南端に近く、大船の北東側に在る「本郷台」の南を流れる「いたち川」があります。昭和30年(1955)代から、住んでいる人々には申し訳ない表現ですが、凄まじい自然破壊による宅地開発で鎌倉市内とその周辺部は地図を見るのが嫌になる程の住宅地化が進んでいます。この「鼬川」の南側には「鎌倉石」に使われる石材が含まれる地層が分布していた為に、今は既に地名としてしか残っていないものもありますが、沢山の石橋が架けられていたようです。今回は、この流域と、浄智寺の近くの「明月院」前の小さな流れに架かる石橋をご案内します。
この付近の地質図(横浜:5万)の抜粋です。水色の細い線は大まかな「鼬川」とその支流の流路を示しています。白で囲んだNjは上總層群野島層。tgとtsもその中の顔色が異なる部層です。Ofは大船層で凝灰岩よりも泥岩系。Koは小柴層で砂質凝灰岩の部類でしょうか?石材にはなり難い地層です。
長瀬橋です。目立たないのでこの辺だと思いながら何度か往復してこの小さな橋だとやっと気付きました。左手の三角形の石材が鎌倉石の岩相を見せています。個人宅の石橋です。
長瀬橋の、その三角形の石材を大きくしてみました。その上の石材も黒黴が生えていますが、同じく鎌倉石の顔です。
経堂橋は、肉眼では良い観察ポイントがありません。道路下のかなり河床までの距離があり、かなり傷んでいるので内側に補強材を組まれているので、望遠レンズを使ってやっと補強材の外側に石橋らしいものが見える状態です。環号4号に架かっている橋なのですが、道路上には欄干も無いほぼ目立たない橋なので直ぐ傍の信号機のある交差点は「千載橋」です。
この水系で現存する凝灰岩の石橋で最も美しいのがこの「昇龍橋」です。但し、欄干の部分は花崗岩製で後付けです。奥に階段が見えますが、この橋は本来この奥に在った神社への参道として架けられたものです。地質図の左下に真っ赤な太枠で囲んだ「今泉」と言う地名が見えますが、(結構広いのですが)、今泉に住む石工が地元石材を切り出して架橋したと伝わっています。場所は地質図の右手の薄く「八軒谷」と見える場所の若緑の丸付近です。文化財として保護されています。
神社の在った場所の崖です。この付近も一応堅そうです。
昇龍橋の少し下流の河畔の景色です。崖は結構な落差を持って切り立っています。下半分は羊歯の類が茂っていますが、この羊歯が茂るのは結構透水性が良い砂質の凝灰岩である事が多いと経験的に判っています。崖には単管パイプを用いた個人用の橋が架けられて対岸に穴を掘って何かの用途に使っていると思われる場所もありました。
経堂橋の近くに中島と言うバス停がありますがこの近くの露頭に生痕化石がありました。この様な小さな露頭は歩いているから稼げる観察ポイントであり、車で移動する時には拾えるものではありませんね。草臥れますけど・・・GPSが在ればポイントを確認出来るので万全です。
同じ場所の生痕が邪魔にならない部分で粒度組成を確認します。この曲がり尺は野帳に挟める大きさなので便利なのですが、落としやすいのが難点です。今度工場の近くの工具店で買った時に穴を開けて貰って首から吊るすかな?
明月院前の道路(明月院通りと言うそうですが)の片側に小さな水路が在り、大部分は新しい橋ですが、明月院に近い付近に数か所小さな石造アーチ橋があります。その一つです。
これも同じく明月院通りの石橋です。明月院に行かれてもし時間に余裕がありましたら、線路の反対側の浄智寺の山門や階段・石橋なども御覧になっては如何でしょうか?お勧めします。

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