2020年6月23日火曜日

岩石と地層の表情:056;北鎌倉 浄智寺の鎌倉石

北鎌倉から比較的近く、しかも1280年代の創建と言う由緒のある割には知られていない(50年前に友人に連れていかれるまで私は知らなかっただけの話だが)寺院に「浄智寺」が在ります。勘違いが有って、この付近は石材が採掘出来るような地質では無いと思い込んでいたのだが、地質図を見ると「浦郷層」と「野島層」になっているのでこれは石切場が在るかもしれないと数十年振りに出掛けてみた。残念ながら石切場の存在は確認出来なかったが崖の地質や、五輪塔、石橋、参道階段等に鎌倉石が使われているのを確認。更に明月院方面では小さな石橋が使われているのを確認する事が出来たので次回に合わせてご案内します。
上半は「横浜地域の地質図幅」で「上総層群野島層と同じく浦郷層」、下半は「横須賀地域の地質図幅」で、同様に「上総層群浦郷層」こちらは「野島層」の解釈が「横浜」とは少々異なるらしい。石材をやる時は、地表の地質ばかりを見ていると失敗する。同じ地質・地層でも場所に寄って「機械的性質」と言うか「岩石の性状」は大きく異なるので注意が必要なのです。
この橋を渡る事は出来ませんが、門前には小さな池が設えられて「寺域」と世間を隔てており鎌倉石が使われています。
橋の歩行面(歩いちゃいけませんが)にはこの通り鎌倉石が使われています。
境内の五輪塔には鉄錆色の艶を感じる程の渋い色合いを示すものが有ります。
境内にはこの様に「やぐら」状に掘り込んだ場所もあります。この石塔も勿論「鎌倉石」です。岩壁の方も、鎌倉石とよく似ています。
石塔の一つを近寄って観察してみました。房総半島の「七里川石」によく似ていると思います。背面の壁の掘削痕はこの空洞が石材の採掘では無く「やぐら」として掘られたものである事を示しています。
境内には、自然に形作られたとは思えない様な急峻な崖が在り、この様に深く掘り込まれています。正面は残念ながら立入禁止なので近づけません。壁面の掘削痕を見たいのですが適いません。
寺域の各所に、かって堂宇があった場所なのか?、将来の墓地用の土地の確保の為か、この様に掘り込んで階段まで地山を切って造成している場所がいくつもあります。階段も地山そのままなのは、この土地がかなり固い状態である事を示しています。
正面の石橋に続く参道の階段石と石垣の状態です。何れも「鎌倉石」が使われています。今はこの階段を使わない様に脇道が出来ています。大切に残して頂きたいものです。
階段石の比較的地肌を観察し易いものを例示します。スケールは 17 cm です。

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