投稿する前には、一応簡単な原稿を書いておくのだが、どうやら一つ飛ばしてしまった様です。これは前々回(旧中村邸)の続きで石材の模様や含まれている岩石の大まかな観察をします。
房州石だけではありませんが、花崗岩でも岡山のピンクのカリ長石が含まれていて「さくら御影」と呼ばれて万成石が好まれる様に、ピンク:桜色は暖色なので好まれる様です。房州石の場合には、桜色の凝灰質の固まり(岩石では無い、どちらかと云うと「礫」の様に見える「偽礫」と云った方が良さそうですが)が含まれると「桜目」と言って(場所により「おうめ」とか「さくらめ」と呼びます)丈夫で高品質とされるものがあります。恐らく、適度に凝灰質が混じる事で硬過ぎない組成となり丈夫になるのではないかと思います。
房州石や伊豆の凝灰岩の美しさの秘密の一つにこの堆積模様が上げられると思います。必ずしも、堆積時の姿勢がそのまま保たれて、側面でこれを観察する訳ではありませんが、このような堆積模様はどのような堆積場で形成されるのか?或いは堆積方向に対してどのように採掘すればこのような模様が観察されるようになるのかを考えるのも興味深い様に思います。スケールは17cmです。石材の長手方向は大まかに 80 cm 程度と覚えて頂ければそれ程大きくは外れる事がありません。この石材も桜目が美しいですね。スケールの下の石材に在る白い斑点は「黴」です
これは斜めの堆積模様とほぼ水平の堆積模様が見えますね。
上の段は桜目を含む大きな粒子が沢山入っています。下の段は白い凝灰質が細い線を描いています。その組み合わせも面白いと思います。
緑の線で囲んだ白い凝灰質の表面に、横方向の筋目が在るのがお判りでしょうか?同じものはスケールの上の白い部分にも観察されます。これは表面仕上げのヘアライン加工のような模様が今も残っている事を示しています。 伊豆の上賀茂付近の良質の緑色凝灰岩では、1cmを越える様な大きな凝灰質の固まりが在ると、その部分から風化剥離が始まる事が有りますが、房州石では大きいものが弱いと云う関係は成立しません。
桜目の部分を拡大して見た画像ですが、凝灰質が多い割に、小さな黒いスコリアの類も含まれています。これは凝灰質も多いですが、どちらかと云えば砂と礫の混じったものが多く、赤褐色に酸化された岩片も含まれています。房州石は様々な硬さや、粒度の異なる火砕物の不思議なコラボで生まれた石材なのです。
前回の説明で、石蔵の内壁に沿った材木は、石蔵の強度には寄与していない事を説明しましたが、丁度良い画像がありましたのでご紹介します。勿論、この画像はリノベーション後の画像ですので、電気配線の構造物が含まれていますが
壁面の片方には全く木材が繋がっていないし、木材がある部分も天井までは届いていません。 大谷石の使われ方と、房州石や鎌倉石の使われ方との大きな差がここに現れています。鎌倉石等の様々な石材の石蔵も何れご紹介する機会が有ると思います。
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