2020年7月12日日曜日

岩石と地層の表情:075;千葉・白浜の眼鏡橋補修材に使われた多胡石

房総半島の南端「野島崎」の近くに地元産の凝灰岩を用いて築かれた三連の眼鏡橋「眺尾橋」があります。明治二十一(1888)年に住民の寄付によって架橋されたており、その頑丈さは「戦車が通っても壊れない」程だと云われます。文化財としての修復工事の前にも一度修復工事が行われ、この時に鋸山の房州石を補修用として用いています。
地元の石材は「みずるめ石」と呼ばれ、橋の南南東に直線で 900 m 程の道路脇に露頭が僅かに残る「白間津層」あるいは「布良層」に由来するものと思われ、風化部剥離部に平行葉理とスコリアの分布が認められる。石材の採掘跡は道路脇の公園として整備された為に露頭は殆ど現存しない。道路の海岸側には同じ千倉層群の「白浜層」が広がるが利用された雰囲気は無い。
地質図は5万分の1「館山」。赤丸は眼鏡橋の所在地。黄色で囲んだ部分に僅かに露頭が存在する C1(白浜層)とは明らかに異なり C3(白間津層)が比較的岩相が似ている。
多胡石の使用例。石橋両側の上面に用いられている
多胡石の使用例。石橋両側の上面。1~2段に用いられている。欄干の支柱用の「腕石」には本小松石(赤)が用いられた。上二段を除くとほぼ「みずるめ石」
三連眼鏡橋の下流側。灰色の部分は房州石で補修された部分
「みずるめ石」の拡大例。平行葉理であること。スコリアを含む事。
「みずるめ石」の露頭。茶褐色部分は酸化色で表面を剥がすと砂岩部分と似た色でスコリアを含む
凝灰質の偽礫を含む地層。海岸の道路の海側に狭く分布。平行葉理が見られないので「みずるめ石」とは別らしい。
みずるめ石採掘跡付近の海岸側露頭では斑晶が目立つ角礫を含む地層になる。“C1”:白浜層。
「眺目尾橋」の上流側。鹿児島の石橋に似た「水切り:水制工」が在る。次回「常盤橋」の参考用画像
「眺目尾橋」の上流側。鹿児島の石橋に似た水切を真上から見た図。次回「常盤橋」の参考用画像

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