2017年10月8日日曜日

似ている様でも何処かに違いがある房州石と伊豆軟石

伊豆半島の南で採掘されてきた凝灰岩質の石材の中に房州石と良く似た石材が在る。さてこれが、房州石なのか、伊豆軟石の一つなのか?外観だけで判断に困った時にはまず最初に周囲を見回して同じ構造物の中に異種石材が使われていないか?探してみる。伊豆軟石の場合は殆どの例で同じ伊豆産の他の岩相を示す石材が使われているが、房州石の場合はどうしても、多少の粗粒と細粒とかの差はあるもののほぼ同一岩種で構成されている。



最初の二枚の画像は関宿町の「白山神社」で拝殿礎石に使われていた石材。この神社では伊豆の岩相が全く異なる石材が数種類、大量に使われていたので特に細かく観察する必要を感じていなかった。例えば、二枚目の画像の下の半ば埋設されている石材は伊豆の緑色凝灰岩が使われている。
この神社は千葉県神社名鑑では創建が慶雲二(705)年とされているのだけれど、その後の改修記録などが判らず、異常に新鮮な使用石材との整合が測れないので歴史を調査中。
 最近千葉県最北部の関宿付近で、数か所で房州石に似た石材の使用例を観察する機会を得た。三枚目の画像は、同じ日に元々は同じ地域だったのに、江戸川の改修で埼玉県に編入されてしまった「宝珠花神社」の本殿の礎石。

ここでも、拝殿の礎石等に数種類の伊豆産の凝灰岩質石材が使われている。例えば





これだけ伊豆の石材が揃っていれば、白黒の美しいラミナを示す石材は伊豆の石材だと思うのだが、この地域では殆ど目にしない房州石似の石材に一日に二度も出会うと少し疑ってみる必要も感じる。時代は特定出来ないが、房州石が江戸で使われ始めた頃には、その見た目の類似性に着目して江戸の問屋が「伊豆石」の名で房州石の発注書を出していた例も在るらしい。
 念の為に観察し易い細粒部分と粗粒部分が同一切石に現われている切石を詳細に観察しておくことにした。下の画像は、三枚目の画像の一部にスケールを入れて接写したもの。

更に下の二枚は私の手造りの接写補助装置を用いて、粗粒部と細粒部の境目付近と粗粒部を撮影したもの。三脚を建てられない場所で、手持ちではぶれやすい接写を安定して画像の横幅をほぼ一定のサイズで撮影出来る。このケースでは画像幅を約40mmに設定している。両者共に緑色の凝灰岩粒を含んでいるので房州石では無いと云える。



房州石が普及する前に、既に伊豆の凝灰岩が江戸とその周辺の舟運が発達した地域で使われてきたので、歴史的に古い神社では礎石などに意外とこの伊豆石が残されている。

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